「いいですねぇ足湯。体が芯からポカポカしてきますぅ」
「冬場といえばやっぱりお風呂だよねー」
はてさて、降って湧いた突然の休み期間により、唐突な小旅行のお時間となったわけなのだが。
流石に泊まりになるほどの時間があるわけでもないので、ちょっと遠出をしよう……みたいなノリになった結果、近場(※あくまでTASさん基準)の温泉街に出かけることになったのであった。
「いきなり
「サンタワープチガウサンタワープチガウ」
「はい?」
「そこははっきりさせて置かないと、後々面倒なことになりかねませんからね……」
いやまぁ、今さらサンタがワープの一つも使えない、なんてことは思わないけどね?
家に煙突がないのなら家の中に直接ワープすればいいじゃない、みたいな発想の転換があったんだろうなぁ、みたいな予測は付けられるけどね?
でもそれをTASさんに当てはめられると色々面倒なので勘弁して欲しいというか。
……とまぁ、微妙にどうでもよさげなことをぼやきつつ、足湯に浸かる俺達である。
温泉街ということもあり、周囲には観光客がほどほどに溢れており、クリスマスに露天風呂で楽しもう……みたいな思考の人が結構多いんだなぁ、とちょっとずれたことを考えつつ、備え付けのタオルで温泉に浸していた足を拭って立ち上がる。
いつまでも浸かっていたいのは山々だが、時間は有限でありこの足湯だけを目的として遠路はるばるやってきたわけでもない。
「もうちょっと待って、もう少し浸かってればきっと鏡面世界へのゲートが……」
「あ、サンタドロップアウトですねぇ。ワープするにしても遠いところとかに侵入する際に便利なんですよぅ」
「…………」
「そんな泣きそうな目で見られても、フォローは出来かねますねぇ」
一人だけ──TASさんが新しい技術の獲得のために、ちょっとわがままを言っていたりもしたが……類似技術がサンタ界隈にもある、などと言われてしまえば少なくともこの場での習得は諦める他なく。
涙目(※当社比)のTASさんは、渋々といった様子で足湯から上がってきたのだった。
「……サンタは迷惑」
「子供が聞いたらギョッとしそうな台詞だなぁ」
実際、すれ違った子供がこっちを振り返って「マジか」みたいな顔してたし。
まぁ、新しくやろうとすることほぼ全てに「あっ、うちにも同じようなものありましたよぉ」と返されればさもありなん。
そんなわけで、図らずもTASさんの新技術習得タイムが阻害されまくる中、俺達は観光地を行脚している最中なのであった。
温泉まんじゅうを山ほど買って、ぽいぽい放りながら食べているサンタさんなどが見所だと思われる()
「なんかこう……普段と違いますね?」
「そうですかぁ?私としてはいつも通りなのですけれど。……もしかしたら、久方ぶりに仕事とかを気にせず動けているので、ちょっと童心に帰っている部分はあるかも、ですけどぉ」
「なるほど……?」
サンタの仕事に『プレゼントを配る』ことだけでなく、彼女のように『他者のトラブルを解決するため駆けずり回る』ことが含まれているのなら、確かに彼女以上に仕事熱心な者もそうはいまい。
……まぁ、解決件数は多くないので、バリバリのキャリアウーマン扱いとかではないだろうが。
ただまぁ、トラブルの解決と同時に他のトラブルに巻き込まれる……という生活を続けていたのなら、確かに心が休まるようなタイミングはなかっただろう。
そういう意味では、彼女が素の自分に立ち返る貴重なきっかけになったのは間違いあるまい。
「つまり、この休暇はこの時点でおおむね成功ってことだな」
「成功しすぎて私のチャートに侵食してきてる。それはとても良くない」
「……まさかとは思いますが、もしかしてそれこそ彼女が引き起こしているトラブル、というやつなのではないでしょうか……?」
「!?」
「あー、あり得そう。TASさん相手なら多少のトラブルもなんのその、みたいな感じで自動選択されてるとか?」
ただまぁ素の彼女に戻った結果、普段はしないような言動を彼女がすることにより、色々と捩れている可能性は否定できないが。
……具体的には、いつもならスルーすることも関連性を見出だして口にしてしまう、みたいな?
それによる被害をほぼ全てTASさんが被っている辺り、無意識に彼女を『迷惑を掛けてもいい相手』と認識している可能性もある。
TASさん本人的にはいい迷惑……なのかはなんとも言えないが、とまかく彼女の当初の望みの通りトラブルが襲ってきているようなもの、というのは間違いあるまい。
こっちへの被害が少ない、という点では心労が少ないのでたまにはこういうのもいいかなー、と呟いたところTASさんが(文字通り)噛みついてきたりもしたが……まぁ、許容範囲である。
「……………………」
「帰ったら娘と久しぶりにこうして歩きたいなぁ、とか思ってらっしゃいます?」
「ち、ちょっとは……」
一応年上のはずなのに、そんな気がしない……みたいなところもあるけれど、こういうところはやっぱり母親なんだなぁ、なんてことを確認しつつ、俺はTASさんに噛まれるがまま店を廻っていたのだった。
……いい話風にしてごまかそうとしてもその絵面は無理がある?
TASさんの気分転換にはこうするしかないから仕方ないね!