「すみませぇん!お手数お掛けしましたぁ!!」
「あ、ああお帰りなさいサンタさん……ええと、店長さんは?」
「上手く行きましたですぅ!行きすぎて色々吹っ飛んでしまいましたが!!」
「ああうん、でしょうね……」
多分、お互いに思っていることは違うけど。
……というわけで、唐突にサンタらしいことを終わらせて戻ってきたサンタさんを迎えた俺達。
彼女はオーソドックスなサンタ姿のまま店内に突入すると、俺の手にあった鍋をそっと奪い取るように受け取って、
「メリー!クリスマース!ですぅ!!」
「鍋から光が!?」
「あからさまに異常現象なのですがよいのでしょうか……?」
「大丈夫。聖夜には大抵のことは許される」<キリッ
「それ大分サンタに思考を侵食されてないかい?」
そのままトン、と鍋を振れば中から飛び出していく色とりどりの光。
……よくよく見れば、それらが色んな食材であることが見てとれるだろうが……いや、皿に着地した途端まったく違う料理になるのは看過できないんだが?
いや、なんで一つの鍋からチャーハンと餃子とラーメンが一度に出来上がるんだよ。
なんならかに玉とかエビチリとか回鍋肉とかもまとめて出てきたぞ今???
……そんなツッコミはサンタ中華ですぅとかいう意味不明な返答に掻き消されたわけだが。
もはやサンタのゲシュタルト崩壊である。
「今さら過ぎる」
「確かに。……ところで、今唐突にTASさんが食べ始めたのは?」
「……?ブッシュ・ド・ノエル。クリスマスらしいケーキ」
「いやタルトじゃないんかーい」
タルト繋がりじゃないんかーい。
……いやまぁ見た目はタルトに見えなくもないけども。
などと意味不明なやり取りをしつつ、店内に溢れる意味不明な現象を必死にスルーする俺達なのであった……。
「……はい、長い間本当にありがとうございましたぁ」
「いや、まぁ無事に終わったんなら良かったですよ」
はてさて、聖夜の営業も終わり、店の外。
ある程度の片付けはしたものの、このまま店を畳むという店長さんが残りは片付ける……ということで、店内はひっそりと静まり返っている。
なお、当の店長さんはあれからしばらく経って普通にひょっこりと顔を見せていた。
まぁ、店内に見知らぬ店員がいっぱいいることにびっくりしたりしていたが……最終的には「アンタのすることなら」みたいな感じで納得していた。
……いや、それで話が済むってどんだけ信頼されてたんだこの人?
「まぁ……店長さんが怪我をされた時、放置しておくとそのまま首を吊りそうな勢いでしたのでちょっと多めにお節介を……」
「やっぱこの人下手に放置しない方がいいやつだな???」
あれだ、本気でヤバイ人を引き寄せやすい体質なんだろう、というか。
……人間的にヤバイんじゃなくて状況がヤバイ人だからまだマシだが、これが下手な創作なら酷い目に遭ってたんじゃなかろうかこの人。
「その辺りは大丈夫。サンタは普通の人間の数倍から数千倍のサンタパワーを持つ。サンタパワーを持たぬ存在に負ける道理はない」
「人の思考を読むなっつーか、サンタってやっぱり名状しがたき存在だろうというか……ツッコミの渋滞を起こすんでどっちか一つにしてくれ」
「ん、じゃあお兄さんの思考を読むことだけを重視する」
「なんでヤバイ方を優先するのキミ???」
いや、俺の思考を読んでも仕方ないだろマジで。
……などというツッコミはともかく。
ようやく、サンタさんを送り返す準備ができた、ということは間違いないだろう。
いやまぁ、彼女に関しては自分で帰宅できるので、正確に言うのであれば『彼女の帰宅を邪魔するようなものを排除できる状態が整った』というべきだろうが。
「短いようで長いお付き合いでしたわね。単純に参考にすることはできませんが……貴方の心構えは大いに参考にさせて頂きたいと思います」
「あ、でしたらこちらを。サンタの心構えなどなど載っていますので」
「まぁ」
「いや待った、それは渡していいものなのか?」
その後も、ちょくちょくと問題は転がっていた。
サンタという在り方が琴線に触れたらしいAUTOさんが殊勝なことを述べて、それに感銘を受けたサンタさんが指南書のようなものを手渡そうとして慌てて検閲する羽目になったり。
「もう二度と会うことはないと思う。やり残したことはない?」
「……でしたら、全自動プレゼント配達装置を置いていこうかと……」
「止めよう?そういうトラブルを減らすために送り返そうとしているのに積極的に跡を濁そうとするの止めよう???」
TASさんの言葉に少し思案し、自分の後釜となる装置を置いていこうとするサンタさんを全力で妨害し。
なんというかこう、彼女がトラブルを引き寄せるうえにトラブルをばら蒔く存在である、ということを改めて実感しつつ、
「それでは皆さん──メリークリスマス!いいお年を!」
虹色のゲートに足を踏み入れ、この世界から去っていく彼女を何時までも見送っていたのだった──。