はてさて、唐突な大掃除と題しつつの家の中紹介回である。
「お兄さん、メタい」
「おおっと。……でもまぁ、家主もいまいち全貌を把握しているとは言い辛いんだよな、ここ」
何せ、構造からしてよくわからないし。
……一応、玄関から居間、それから台所までの経路については把握している。
通路で繋がったそれらの部屋はよく行き来する場所だし、基本的にはそのうちの何処かにいるのでわからない方がおかしいし。
それから、流石に自分の部屋までの経路・構造もわからないなんてことはない。
この家に二つある個室の和室のうちの片方、という意味でも特徴的ではあるわけだし。
逆に言うと、それ以外は微妙に把握しきれない部分があるわけだが。
「それはまたどうして?」
「明らかに外観より内部が広いから」
「……言われてみれば確かに」
そうぼやいた俺に、AUTOさんが不思議そうに尋ねてくるが……なんてことはない、単純にこの家が
それも、明らかに空間がねじ曲がってるレベルで広すぎるから、というところが大きい。
一応、普段この家に寝泊まりしている人達の部屋やそこに行くまでの経路、さらには他の面々がここにいる間だけ使っている部屋のような、頻繁・ないしほどほどに足を向ける機会のある場所については問題ないのだ。
……が、それ以外。
通称『未開の
「……初めて聞いたのですが?」
「そりゃまぁ、そっちの道に行こうと思うんなら俺の部屋通んなきゃいけないからね」
「寧ろ何故そんな場所に自室を構えているのです???」
ともかく、この家一番の意味不明要素である未開の園は、意識して向かおうとしなければ基本踏み入ることのない場所。
ゆえにまぁ、内部を理解していなくても普段の生活には全く問題ないわけなのだけれど……。
「いやその前に、そもそもそこ以外も外から見た時の広さに合ってない、って話じゃないのか?」
「お?……おお、そうだったそうだった。外から見たら精々
と、唸る俺達に活を入れるように声をあげるCHEATちゃん。
……確かに、現状でも八部屋近く個室があって、その上で居間やキッチンがあるのだから広すぎる、というのは間違いない。
何処にそんなスペースを確保する余裕があるんじゃい、と言われれば神妙な顔で頷くしかないのだからなんとも。
……だがまぁ、その辺りはある種わかりやすい答えがあるというか、その一言でここまでの疑問も大抵晴れるというか。
「……なんですのそれは?」
「
「ああ……」
「イメージ元は不思議な感じの迷宮。自分で組み換え可能なやつ」
その答えというのが、TASさんがやったというその一言。
……元々は外観通りの間取りだったらしいのだが、色々と先を考えた彼女が色々と弄った結果こうなった、ということになるらしい。
まぁ、それでもある程度無茶だった部分はあるようで、俺の部屋の横が未開の地になっているのも、そこから部屋を取り出すため・および今のこの家を安定させるための一種の安全装置みたいな扱いであるから、らしいのだが。
「はぁ……よくはわかりませんが、仮にそこを元に戻すとどうなるのです?」
「現在追加状態になってる部屋が消滅する。もっと簡単に言うと元の間取りに戻るってことだけど……実のところ今のこの家に元の間取りはほとんど残ってない。だから仮に元に戻ったら中のものが全部強制的に押し出されて──」
「押し出されて?」
「このマンションごと吹っ飛ぶ」
「はた迷惑にもほどがある……」
なんだっけか、可能性として未明である部分が残されているからこそ、他の部分の拡張性にも繋がっている……みたいな話だったか。
未開の園がランダム生成ダンジョンだからこそ、そのランダム性を悪用して普通の部屋を引っ張り出すのに使っている……とかなんとか。
言い換えると、今俺達が居住している部屋のほとんどはそのランダム生成を悪用したものであり、仮にそれらを止めて元の間取りに戻そうとするとそこに置いてあったものや、ランダム性という属性そのものが外に押し出されることになり、結果としてこのマンション自体が倒壊するのだそうだ。
……マンションの持ち主も、勝手に改造された挙げ句それを咎めると家屋が解体される、とか踏んだり蹴ったりにもほどがあるだろう……なんて風に思ったりもしたものだが。
「いつの間にかこのマンションの持ち主もTASさんになってたからなぁ……」
「グラフを見てたら風が吹いた。土地ごと買うには困らなかった」
「うーん、TASパワーの有効活用……」
確率が確率であるからこそ儲け続けるのが難しい、みたいな話ならTASさんにとっては無いようなもの。
……そういうTASさんのズルさを、改めて感じた春の日だった……とだけ伝えておきたいと思う俺である。(死んだ眼で土地の権利書とか諸々TASさんに渡してる以前のオーナーの姿を思い起こしながら)