「なんやかんや掃除も終わってよかったねぇ」
「普段からこちらに寝泊まりされている方達は、原則部屋の片付けをいつも行っていたみたいですからね」
あのあと、大まかに片付け終わったという中の面々の声を聞いて内部に舞い戻り、さくっと掃除を終わらせた俺(と、MODさん)。
そのあと他の面々の部屋にも顔を出してみたが……ダミ子さんが例外だっただけで、基本的にみんなきちんと部屋を整理整頓していたため特に問題は発生しなかったのだった。
まぁ、問題がなかった代わりに、TASさんの部屋でちょっとした問答が発生したわけなのだが。
と言っても変な話ではなく……。
「……TASの部屋が、」
「思いの外ファンシー!?ですわ!?」
「お兄さん、失礼なこの二人を叩き出してもいいかな?」
「いやまぁほら、二人はというか他の面々もここには入ったことないし、そもそも趣味についても知らないだろうから……」
「TASの趣味……?」
「TASではありませんの……?」
「それは生きざま。趣味とはちょっと違う」
「はぁ……?」
いやまぁ、そっちも趣味でいいと思うけどねお兄さんは。
命賭けてるっていう気迫部分の差はあれど、どっちも嫌々やってるわけではないのだし。
……というわけで、二人がTASさんの部屋で何を見たのかと言えば。
この面々の中では唯一にして至極真っ当な『普通の思春期の少女』の部屋とおぼしき物が眼前に広がっていた、というわけである。
その真っ当さたるや、いつぞやかのフリマで隠しフラグまで立てて購入した『クマ五郎』がやぁ、とでも挨拶して来そうなほど。
……え?例えがわかり辛い?大きなくまのぬいぐるみを飾ってても違和感ないくらいに、女の子女の子してる部屋ってことだよ。
まさかTASさんに負けるとは思ってなかったのか、半開きの口をパクパクさせながら部屋を見渡すCHEATちゃん&AUTOさんである。
……ついでに、唐突な大声になんだなんだと寄ってきたMODさんとダミ子さんの二人が、あまりに真っ当な女の子の部屋が放つ輝きに焼き尽くされていたりもしたが余談である。
で、なんでこんなことになっているのかと言うと、そこに彼女の趣味が関わってくるわけで。
「ぬいぐるみ集め、ですの?」
「ここにあるのはほんの一部。とある場所に一部屋借りて作ってるやつだと、こんな感じ」<スマホスイスイ
「……なんか、すごいことになってる……」
「一面に鎮座するぬいぐるみ達の楽園……とでも呼べばいいのでしょうか?」
その趣味と言うのが、大小珍しさを問わない様々なぬいぐるみの収集、である。
この部屋に置いてあるのはお気に入りの一部で、とある場所に彼女が個人的に借りている部屋には、今ここにあるぬいぐるみの数倍以上が保管されている。
TASさんは時々ワープを使ってそちらに向かい、追記数の削減のためフル稼働している脳を休めたりしているのだそうだ。
まぁ、とは言ってもそれも月に一度くらいの話なのだが。
頻繁に接種しすぎると精神力の回復度合いが下がる、とかだっけ?
よくわからんがありがたみが減る、みたいな話だろう。
なお、意外なところで女子力を見せ付けたTASさんの次に女子力増し増しだったのは、みんなのオカン()DMさんだったことをここに記しておく。
『
「~♪」(解れたエプロンを補修しながら鼻唄を歌っている)
「……お、そろそろか。年越し蕎麦できたからみんな食べなー」
「はーい」
はてさて、日付は進んで大晦日。
今年のうちにやっておかないといけないことは全て終了し、あとはもうカウントダウンを待つだけ……みたいな状況。
俺達は居間に集まって、年末の番組を見ながら年越しを待っていたのだった。
いやまぁ、俺とDMさんは年越し蕎麦の準備をしていたんだけどね?
朝の内から準備していたおせちの方も完成し、しばらくコンロの火を使うこともないだろう。
流石に洗い物はするけど、用事としてはそれくらいになるはずだ……などと思いながら、DMさんと手分けして人数分のそばをお盆に乗せて運んでいく。
「ん、シンプルイズザベストなお蕎麦」
「海老とそばだけってのも乙なもんだろ?」
「海老うまうま」
「ああCHEATさん、急いで食べすぎですわよ……」
「んんん、拭わなくてもいいってば……」
『……年末番組とやらは、なんというかつまらんのー』
「基本的には無難な内容に終始するもんだからな。その辺り、海外とこの国との年越しへの意識の差、みたいなもんなのかもしれねぇが」
「あー確かに。海外だと派手に祝う感じだけど、日本のそれって厳かに迎えるものってイメージがあるよね」
「私は好きですけどね、こういう静かな年末も」
「なんでもいいですぅ……今年も色々ありすぎたですぅ……」
結構な大所帯となった我が家を見回していると、自然と目があったのはTASさん。
思えば、彼女と出会ってから色々あったが──こうして騒がしいのが楽しい、と思える程度にはなったというか。
そんなことを思いながら、俺は彼女に今年最後の挨拶を投げ掛ける。
「今年もお疲れさまでした」
「お疲れさまでした。来年はもっと追記を減らす」<フンス
「来年の抱負ってことなのかもだけど、それいつものことでは?」
「そうだけど、それでも……だよ」
「そっか。ならまぁ、頑張って」
「ん」
今年も残り四時間ほど。
来年も良い歳でありますように、と願いながら俺は蕎麦を啜るのであった──。