「そういうわけで、みんなにお年玉を渡したいと思う」
「なるほど?」
さて、新年に入って早十数時間。
お昼ご飯にレンチンしたお雑煮を食べ、腹ごしらえをしたところで早速の今年初めのイベントである。
都合同年代であるダミ子さん、および実は年上だったROUTEさんの二人は除くとして、他の面々にはお年玉を渡す義務があると言っても過言ではないかもしれないし過言かもしれない。
「いやどっちだよ」
「どっちでもある。それを見極めるために君達にはゲームをして貰おうと思う」
「……?新年早々デスゲーム?」
「なんでTASさんは一々発想が物騒なの?普通のゲームだよ普通の」
というか俺がデスゲーム主催しても、普通に主催者撃破されて終わると思うの。
……とまぁ、そんな依田話はどうでもよくて、今回彼女達にやって貰うゲームはこちら。落ちもの系ゲームである。
「……なんの変哲もない、普通のゲームですわね」
「なるほど、これを使って決めると。……具体的にはどうやって?」
「そりゃ勿論、勝った子にあげるよ?」
「え、自殺志願者?」
「酷い言われようだ……」
出されたゲームを見て、困惑する一同。
勝ったらあげる、という文脈からそちらが勝てないようなゲームを持ち出してくると思ったのだろうが、出てきたのは逆にこっちが普通に負けそうなゲームだった、と。
そりゃまぁ、思わず何言ってるのこの人、みたいな気分になるのはわからないでもない。
そんな面々をまぁまぁ、と説得してテレビの前に座らせる俺である。
「ルールは至って単純、勝ったら勝ち。それだけ」
「ええー、あまりにも簡単すぎる……貰える金額が少ないとかそういうあれ?」
「いんや?スコア分あげよう」
「無茶苦茶言い出したんだけどこの人!?」
「それ、場合によっては破産するやつなのでは……?」
「いやいや、負けなきゃ問題ないし。あ、一つだけ追加ルールね。
「ますます自殺志願者に聞こえてきたんだけど……」
で、その場でルールを伝えたらマジかこいつ、みたいな顔をされた。マジですが何か?
よもや君達がここまできて尻込みしているわけでもないだろう、とも付け加えれば流石に空気も変わってくる。
新年早々虚仮にされている、と言われても仕方のない状況に少々カチンと来た、という感じだろうか?
いい調子なので、ついでにお金の心配をする必要はない、とも付け加えておく。
「何せCHEATちゃんの配信料の幾つかが懐に入ってるからね!」
「ア゛ーッ!!?ソウイエバソウジャンヤロウブッコロシテヤルゥー!!」
「はっはっはっ、やれるものならやってみたまえ」
見事に挑発に乗ったCHEATちゃんを対戦相手に、早速ゲームスタート。
自慢じゃないが俺はこういうゲームが
「付くほど?」
「苦手だ!」
「何言ってるんですのこの人!?」
「ハッハッハッ!!シッタコッチャネェヤロウブッコロシテヤラァー!!」
「CHEATさんも何言ってますの!?」
まぁ、別に得意だからといって彼女達に挑むのが無謀、というのは変わらないのだが。
だって生身の人間がライオンに勝てるかっていう感じだし。
──ここまで言えば、何か細工でもしてあるのだろう、と思う人もいるはずであるが、誓って言うけどゲームには何もない。
普通に普通の──正規品のただの落ちものゲームである。
というか、こういうのをどうにかしようとするならそもそもCHEATちゃんに頼まなきゃいけないわけで、その時点で話が成立してないというか。
「そうこう言ってるうちに俺の画面がお邪魔アイテムで埋まってきたでござる」
「言ってる場合ですの!?いえまぁ別に貴方様が負けようが勝とうがどうでもいいですけれど!」
「(ツンデレか何か?)まぁうん、この状況なら俺の敗けだよねー」
「ナンダァモウアキラメルノカヨ?ダッタラワタシノカチハキマッタヨウナモンダゼェー!!」
「──だから、こうなる」
「ヒョ?」
なので、この場で気付くべきだったのは、『デスゲーム』云々の発言以降黙りこくったTASさんの様子。
こういう話に真っ先に飛び乗ってきそうな彼女が何故か大人しく座ってる、というところに今回の種があるわけで。
さっきまでの勢いが嘘のように、TASさんの方を見つめるCHEATちゃん。
嘘だよな、とでも言いたげなその瞳は今や涙目手前であるが、その程度でTASさんが止まるのなら
「──ちぇんじー」
「ヌワーッ!!?」
続いて呟かれた彼女の言葉に、CHEATちゃんは今回のからくりを理解したのだった。
……そう、いつの間にか 持ってたコントローラーが 入れ替わってる!
彼女の画面となったそちら側は、さっきまでの彼女自身の猛攻により風前の灯火。
なんなら限られた画面にあるお邪魔アイテムではない部分も、色が疎らで「わぁキレイ」、とかとぼけたくなってくる始末。
……これが俺の全力だ、笑えよCHEAT。
そんな言葉が聞こえたのかどうかは定かではないが、CHEATちゃんは全てを諦めるように目蓋を閉じ──、
「フッザケンナコノクソガァー!!」
「いでぇ」
持っていたコントローラーをこっちに投げてきたのだった。
……暴力反対ー。