うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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酷い目にあっても一縷の希望があれば

 ROUTEさんと俺との試合は激戦を極めた。

 何故かと言えば、彼女相手にだけ追加ルールが加えられたからである。

 

 その内容は二つ、TASさんによるコントローラーの入れ換え回数が十回になること、およびお年玉の内容が変更になること。

 後者に関しては一瞬だけ他の面々(主にダミ子さん)からブーイングが上がったが……内容が『お金じゃなく外出許可証』に変化、というものであったためすぐに収まった。

 代わりに『なにそれ』とばかりに周囲が首を捻ったが……ROUTEさん本人だけは、それの意味に気が付いていた。

 

 その外出許可証には、期限が書かれていない。

 つまりこれは、この試合に勝てたのなら好きにして(どっか行っても)いい……という、TASさんからの挑戦状に等しいものだったのである。

 これが先程の禁煙云々より余程効いたようで、彼女はその身をかたかたと震わせながら「いいぜぇ……買ってやるよその喧嘩ァ……!!」と、凄惨な笑みを浮かべていたのだった。やだ怖い。

 

 実際に相対させられるのは俺なのだから、こういう状況を招くのは勘弁して欲しいところなのだが……生憎そんなROUTEさんの顔を見たTASさんも顔を輝かせていた(※当社比)ため、こちらとしては文句が言い辛いのであった。

 

 そんなこんなで始まったパズル対決、これは予想以上に至難を極めた。

 

 どうやらTASさん式の他者行動誘導システム?的なものを模倣した動きをROUTEさんも会得していたみたいで、個人的には適当にやってるのにパズルが揃うこと揃うこと。

 ……それもあくまで前半だけ、盤面の入れ換えが入ってからは極力こっちへの干渉は飛んでこなくなり、結果としてまったく揃わなくなる。

 そうすると再度入れ換えの判定が飛んで来た時に勝利条件が元に戻り、再び俺の方が揃うようになってまた入れ換えが発生して……とまぁ、正直まともにゲームができてる感じは全くなかった。

 感覚的にはシェイカーに入れられて上下にシェイクされてる、みたいなものと言うか。

 

 そんなこんなで試合は十分近いものとなり、入れ換えも十回目──予定された全てを使い果たし、勝利条件も最初の『俺がパズルで勝てば向こう(ROUTEさん)の勝ち』というものに戻ってくる。

 すなわち再び俺側のパズルがバカのように揃い始めるわけだが、だからといって相手側が揃わないわけでもない。

 自身の盤面も全力で揃える……という縛りが消えてない以上、互いに連鎖対決が始まるということであり、(盤面上は)凄まじく派手な応酬が繰り返され──、

 

 

「これで、どうだぁ!!」

「っ!」

 

 

 ボタンを殴り付けるかの如く強く押すROUTEさんと、それに一瞬息を呑むTASさん。

 ……なんか珍しいものが見えたな、と俺が他人事のように感想を抱く中、画面の中の互いの盤面はと言うと──、

 

 

「……僅差でROUTEさんの勝ち、というところでしょうか?」

「……いいや、引き分けだ」

「なんと?」

 

 

 俺の方に勝者の表示があることからわかる通り、勝利条件からすればROUTEさんの勝ち、ということになる。

 ……のだが、当のROUTEさんからは引き分けだ、との発言が。よくわからないが、何か彼女の中でキチンと勝った、と言えない何かがあったのかもしれない。

 

 だがそんなROUTEさんの様子など知らないとばかりにTASさんは彼女に近付き、商品である外出許可証を手渡したのだった。

 

 

「……いや、俺は勝ててない……」

「知ってる。だから期限付き」

「……………………ちっ」

 

 

 最初は受け取ろうとしなかった彼女は、TASさんの言葉を聞いて渋々、といった風にそれを受け取り、舌打ちを残しながら部屋の外へと出ていってしまう。

 

 いや、どういうこと?

 ……という視線をTASさんに向けるも、彼女は知らんぷりとばかりにそっぽを向き、そのまま先のROUTEさんと同じように部屋から出ていってしまう。

 残された俺達はというと、よくわからないとばかりに顔を見合わせることになるのだった……。

 

 

 

・A・

 

 

 

 そして、そんなことがあった三が日から早数日後の朝。

 

 いつものように起きた俺は、朝食の準備の為にキッチンに向かい──、

 

 

「……あれ?お早うございますROUTEさん。珍しく早いんですね」

「…………」

 

 

 そこで、椅子に座って腕を組み、目を伏せるROUTEさんと出会ったのだった。

 

 彼女は無言でそこに座っていたが、こちらの姿を確認すると目を開き、こちらに視線を向けてくる。

 その視線は、なんというかジトッとした、やりたくないけどやらなきゃいけない……みたいな空気を纏わせたもので。

 

 どういうこっちゃ、と首を捻る俺を他所に彼女は口を開き、唐突にこちらへと一つの提案を投げ掛けてくるのだった。

 

 

「おい。……面貸せ」

「え、かつあげ?俺一文無しなので……」

「いやちげ……なんで文無しになんぞなってやがる???

「あのあとみんなに集られたので」

「なにやってんだよお前ら……」

 

 

 いやほら、お金持ってることはバレてたので……。

 

 

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