はてさて、特に何かが起きることもなく普通に祠にたどり着いた俺達である。
……いやまぁ、長老さんに行けって言われたんだから、妨害とかが飛んでくる可能性は最初からなかったんだけどね?
「でもこう、何か出てくるかなーとか警戒するじゃん?」
「無駄な警戒」
「無駄だな」
『無駄だのう』
「なんなのその連携力???」
俺を弄る時だけ発揮される言外の強制力か何かだったりする???
……などと軽口を叩きつつ、そのまま祠の内部に足を踏み入れる俺達。
そこは明かりなどはなく、薄暗い場所。
足元はろくに整備されてないのかでこぼこで、油断すると普通に足を取られて転倒しそうな危うさがある。
更に、周囲に並び立つのはごつごつとした岩々。……下手に転けると酷い目に合いそうであった。
「なんでこんなに危ないんだここ?整備した方がいいと思うんだけど……」
「修行場でもあるからな、ここは。ある程度齧ってるやつなら、こんなので怪我をする方が馬鹿ってもんだよ」
「……なるほど?」
神様だかなんだかを奉る場所なのに、こんな状態じゃやり辛くない?……とROUTEさんに尋ねてみたところ、どうやらこの危なさはある程度意図したものであるとのこと。
……ある程度未来視技能が使えるのなら、どう動けばどうなるか、くらいは見えてくるのが普通。
ゆえに、このくらい危ない道の方がその能力を磨くのには都合がいいのだと。
「……確かに、水を得たようなTASさんの姿を見ていると、その判断に間違いはないと頷けるなぁ」
「いや……ありゃ普通に例外だからな?他の奴らあんなところ通らねぇからな???」
「えー?(でもTASさんはやってるよ、の眼差し)」
「…………(ありゃアイツがおかしいんだよ、と返ってくる眼差し)」
……なるほど?
この場所の意図を誰より早く見抜いたのだと思われるTASさんは、早々に靴を脱いで裸足となり、尖った岩の上をひょいひょいと進み始めていたのだが……他の人はやらないらしい、これ。
未来視を鍛えるため、というのならあれくらいやって当然かと思っていたのだが……なんだか違うらしいと聞いて、やっぱりここの人達鍛練が足りてないんじゃないかなぁ、と心配してしまった俺なのであった。
「トゲに当たると即死とか許されない。私は奴を越える」<キリッ
「それ現実じゃなくてゲームの話だよね?」
スタイリッシュに進み続けるどこぞのロボットの話だろう、というか。
あのトゲってなんなんだろうね?……なんて話をROUTEさんに振ったら首を傾げられた。どうやら知らなかったらしい。
スタンドさんは何故か知ってて『エネルギーでも吸われておるのではないか?尖端でなくとも一撃死するわけだし』と言葉が返ってきたが……。
「まぁどっちにしろTASさんには関係ない、ってのは確かだよね」
「トゲの被弾前に他に当たって無敵を発生させて無理矢理昇る……みたいなこともするけど緊急手段。できるなら完全無効化しておきたい所存」
「さっきから何の話してるんだお前ら……?」
強いていうなら暇潰し?
……いやまぁ、そんなことしてる暇があるのか、と言われるとちょっと疑問がなくもないが。
「と、言うと?」
「気のせいじゃなければ、なんとなく俺は何度か死んでいる気がする」
「はぁ?」
「お兄さんの貧弱っぷりは世界が失望するレベル。こんなところで転んだらまず間違いなく
『あるいは
いや、実際のところは傷一つない綺麗な体なのだが。
……なんとなく、結果として現れてないだけで何度かリスタートしてそうな気配を感じる、というか。
こう、一歩進んでは転けて突き刺さり、二歩進んではぶつかってお陀仏してそうだったり……みたいな?
現実には、そんなスプラッタなシーンは放送されてないわけだが……こう、撮り直す前のデータとしてどっかに転がってそうな気がするというか。
まぁ、そんな感じである。
「いやまぁ、俺がこんなところを無傷で歩ききれるわけがない、みたいな意味合いも含んでるんだけどね?絶対どっかで転けて顔面からスパッと行ってるだろうというか」
「それはそんな自信満々に言い切ることなのか……?」
「お兄さんの虚弱体質は芸術の域。ほっとくと虫の吐息になるんだから思わず私もにっこり」
「にっこり?!」
「調整箇所をいっぱいくれるのは私的には御褒美みたいなもの」
なので、そうなっていないのはTASさんからの干渉が大半を締めているのだろうなー、というか。
自分の動きだけに手一杯にならず、寧ろその行動によって他者の行動の成否すら左右する辺りは流石のTASさんである。
……その結果としてまた追記を貯めまくっているのはどうかと思うが、そうでなければ傷まみれで地面に転がる俺の姿が容易に想像できてしまうので仕方ない。
「……仕方ないので、帰ったらなんか美味しいものでも作ってあげようと思うわけなのです」
「お兄さんのプリンが楽しみ」
「……ああうん、お前らがそれでいいんならなんでもいいよ……」
頭痛を堪えるように額を抑えるROUTEさんに苦笑を返しつつ、俺達は道なき道を再び進み始めたのであっ……あっ。