奥まで来い、という神様のお告げを奥で水浴びしろ、と解釈したという長老さんに言いたいことが二・三できたが、今はグッとこらえる。
目的の人物から依頼は手に入れられたため、後はそれをこなしてとっとと帰ろう、という話になったからだ。
そもそもROUTEさんに帰ってこい、という便りが届いたのは不幸なお告げの取り違い、という面が強いのもそれを後押しした、というか。
「取り違え、で片付けていいの?」
「んー?そりゃもちろんだよTASさん。ROUTEさんは確かに美人だから付き合えたら嬉しいだろうけど、そんなこと万に一つもありえないだろうしね!」
今回のこれも、たまたま近くに知り合いの男性が居なかったから選ばれた、みたいなところが大きいだろうし。
……などと言葉を返したところ、TASさんから深々としたため息が返ってきたのだった。
「……俺なんか間違ったこと言いましたかね?」
「いいいいやなんも間違ったことなんて言ってないとおもうぜぜぜぜ」
「何故わざわざ走破性の悪い道を……?」
「おおおおお前がいったんんんだろろろろこういうところをあえて通るのが未来視磨くのにいいってててててて」
「……それもそうだな!」
うん、確かに行きでそんなこと言ってたね俺!
それを律儀に実行するROUTEさんの向上心に感服しつつ、行きと同じく転ばないように慎重に歩を進める俺……あっ。
「お兄さんはどうしてそうも迂闊なのか」
「いやはや面目ない」
油断した結果がこれだよ!
……うん、行きより酷いことになったんだがこれ如何に?
いやまぁ、ほっときゃ治る程度だからまだマシだけども。
ってなわけで、酷いことになった俺が回復するのを待って外に出たところ、天気はいつの間にか曇り空に。
まるで、俺達が行動することを歓迎していないかのような空模様だが……。
『ふむ。天気を操れるとなると、それなりの格の者……ということになるが』
「なるが?」
『先のアヤツから力を奪った結果、という可能性もある以上はなんとも、というやつだな』
「はぁ」
それを起こしたのは恐らく今回の一件の犯人だ、とスタンドさんは断言?する。
それと、そこまでできるのは能力として高いものを持つ相手のはずだが……同時に、さっきの小さな神様の本来の力を思えば、犯人側の格は意外と高くないのかも、とも合わせて告げてくる。
「要するに、卑怯な手を使ってる、ってこと?」
『だの。……近くで見てわかったが、先のアヤツは本来
「スタンドさんと比べられてもよくわからんけど……つまり、普通なら力を取られっぱなし、なんてこともないってことだよね?」
『なんで今わざわざ
いやだって、今のスタンドさんって文字通り側に居る霊、みたいなモノだし……。
モノ言うなモノって、と憤慨するスタンドさんを宥めつつ……確かに、彼女と先程の神様の状況が似ている、という話には一定の理解を示す俺である。
今の彼女からは全く感じられないし、仮に感じられたとしてもTASさんのせいで霞むけど……スタンドさんってばDMさんの同位体だから、本来あっちと同じくらいの存在のはずなわけだし。
それと同格、となれば先の神様が天候を操れるだけの力を持っていてもおかしくはない。
ゆえに、大したことができないほどに弱っている神様の姿はおかしい、という話になるのであった。
となれば、神様が力を取り戻せないような小細工が施されている、という可能性にも思い至るわけで……。
「唐突なんだけど」
「いや本当唐突に口開いたねTASさん?」
「神様とか邪神とか真面目に語ってるの笑える」<ドッ
「今それ言うの!?っていうか君がそれ言うの!?」
方向性は違うけど、不思議生物の一例みたいなもんやんけ君!?
……突然のTASさんの暴言に思わず目を剥いたが、よくよく見ると笑い方が
それも単なる笑顔じゃなくて、どこか嘲笑うような空気も滲んだものになっていて。
思わず「ん?」と首を傾げそうになる俺だったのだが、
「天気を操れる程度で牽制してる気分になってるとか大ウケ」<ドッ
「ハァー?!タカガヒトノコゴトキガ、コノイダイニシテユウシュウデアリダレヨリモスグレテイルボクチャンヲ、イウニコトカイテサンリュウノギジュツデイキッテルサンシタダトォー!?」
「流石にそこまでは言ってない」<ボソッ
「うわなんか出てきた!?」
続けざまに彼女から飛び出した迫真の煽りに、返ってきたのは空気の軋む音と周囲が突然暗くなる、という現象。
そして、その暗闇の向こうから響いてくるのは、声質的には始めて聞くのになんだかどこかで聞いた覚えがあるような話し方のそれ。
……闇の中に浮かぶ真っ赤な
普通に見たら恐れるなりなんなりされそうなそれが、先の声の主であることを悟った俺達は、思わず顔を見合わせていたのだった。