「ええ、一瞬のことでした」
当時を振り返り、男は語る。
今回、取材班に応じてくれた唯一の人物である青年は、顔と名前、声を出さないことを条件として求めていた。
「まぁ、彼女ならやりかねないなー、とは思っていたんです」
最近、真面目にイベントに付き合いすぎているよなー、みたいな?
……そんな風に語る男は、語っている相手──仮称Tの様子でも思い出したのか、微妙な苦笑いを浮かべている。
確かに、伝え聞く彼女の人物像を思えば、最近の行動が些か不可解であった、というのは間違いあるまい。
だが、だからこそそれら全てが盛大な
「ああ、まぁそこに関してはそうですね。それ以外に関しては怒るべきかもしれませんが」
結果良ければ全てよし、は人の感性ではないのだ……と、彼は小さく苦笑をしていたのだった──。
はてさて、突然周囲が真っ暗になるという超常現象の上、その中に浮かぶのは真っ赤な双眸。
どう考えても今回の一件の黒幕が登場した、ということになるわけなのだが……そこからの展開がなんともあれだった。
「タカガヒトノコゴトキガ,コノテンジョウシジョウノメイキニシテヒルイスルモノナキユイイツノソンザイタルコノボクチャンニ,クチゴタエスルドコロカアマツサエサンシタノゴミデダレモヒルイスルキモナイアワレナボッチ,ダトォッ!!?」
「ねぇねぇお兄さん、被害妄想が激しすぎる相手にはなんて返せばいいのかな?」
「そこで俺に振られても困るんだけどナー?」
……うん。
なんというかこう、TASさんにからかわれてぶちギレたCHEATちゃんを彷彿とさせるようなその言葉。
事件の黒幕にも関わらず、どうにも幼稚さを感じざるを得ない行動。
そしてそれに対し、明らかに煽っているとしか言いようのない言動を繰り返すTASさん。
何時もとは全く違う彼女のそのノリは、まるで人が変わったかの如く……端的に言うと彼女なりにメスガキムーブしてるようにすら見えて。
これは……あれじゃな?
久方ぶりのTASさんの早解きとかそういうやつじゃな?(白目)
「イウニコトカイテヒガイモウソウ?!モウボクチャンオコッタモンネ,ココライッタイアツメタパワーヲツカッテショウメツサセテヤル!イマサラアヤマッタッテユルサナイカラネ!!」
「できもしないことを抜かしよる」<ドッ
「キェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」
(死ぬほどぶちギレておるの……)
交わされる言葉こそ気の抜ける感じだが、その実その内容は全く笑えるものではない。
金切り声過ぎて聞き取りにくいが、どうにも向こう側はこちらを生かして帰すつもりはない様子。
……周囲一帯ごと吹っ飛ばすとのことだが、流石のTASさんもそんなことされたら無事では済まないはず。
となれば、相手の行動を止めようとするのが筋なのだが……。
(……ん?ハンドサイン?)
言葉の応酬を続けながら、双眸からは見えない位置でこちらにハンドサインを送ってくるTASさん。
それは読み取ると、次のようになるのであった。
(……『このまま』『進める』『から』『頑張って』『耐えて』『ね』……)
「は?」
「イマサラコウカイシテモオソインダカラナ!ボクチャンヲオコラセタオマエタチガワルインダカラナ!!モロトモニナニモカモフキトベェー!!!」
「えっちょっまっ、……た、TASぅー!!?」
「これでゲームオーバー、ってね」<ドッ
えっちょっまっ、暗闇が徐々に明るくなって……ウオアーッ!!?
その日、とある未開の地に一つのキノコ雲が発生した。
わかりやす過ぎる程の爆発の象徴であるそれは、各国のレーダー網に即座に関知され、すわ戦争の始まりかと警戒されたのだが……しかし、そこから何かが始まるということはなかった。
いや、もっと言えばレーダーに引っ掛かったのは雲だけであり、ミサイル着弾の振動やら何かの飛翔体やら、
その為、各国は結局それを『レーダーの故障』と位置付け、以後の調査を打ち切った。
何せ、そもそもキノコ雲の下には森が広がるばかり。
……
熱もなければ爆風もなく、周辺への被害もない……。
ならばそれらは誰かの悪戯、ということに他ならず。