話が大幅にずれたまま、昼休みは終了を迎えた。
そういうわけで午後の授業なのだが、これがまた。
……ご存じの通り、本来俺はこうして教鞭の前に立つことができるような人物ではない。
なので、授業とかを受け持つことはしないというかできないはずなのだが……。
「それが何故このようなことに」
「暫く学校生活が続く関係上、お兄さんには頑張って貰わないといけないから」
「これ俺が頑張ってるとは言わないんじゃないかなぁ!?」
はい、TASさんの協力?のお陰で、俺は授業を一つ二つと言わずにこなしていたのでしたとさ。
……いやおかしくね?高校の授業って原則教科ごとに先生変わるもんだよね?なんでこのクラスだと朝から晩まで俺なのさ。あれかな?小学校かな?
「それは昼前からそうだったのでは……?」
「いやそうだけども。結局最後まで俺が全部やるとは思わないじゃん」
どっかで交代くらいするだろうと思ってたら、そもそも他の教師が様子を見に来ることすらなかったというか?
それでええんかと思わないでもないが、そういえば朝職員室に向かった時もなんか変な空気だったなぁ、と思わず唸ってしまう俺である。
「変な空気とは?」
「生暖かい視線を向けられた。具体的には『ああ、この人が例の……』みたいな」
「色々おかしくなってませんかそれ?」
三周目が色々おかしいのは今さら過ぎると思うんだよ俺。
……とまぁ、放課後の教室でAUTOさんと話していた俺は、手荷物を纏め終えたため一旦会話を中断。
これから帰って飯だの風呂だのの用意をしなければならないため、さっさと学校を出ることにした……のだけど。
「待てぃ!!」
「何奴!」
下駄箱の並ぶ玄関から出た途端、頭上から降ってくる声が一つ。
思わず振り返って見上げれば、夕日を背にした何者かが腕を組み屋上のフェンスの上に立っているのが見えた。……いや危ねぇな???
見る限り欠片も体がぶれていないため、そこから落ちる心配は無さそうだが……代わりにこの学校屋上解放してるんかい、みたいな感想が浮かんでくるというか。
「あ、これに関してはちゃんと許可を貰ってカラ、先生の確認のもと開けて頂いていマスのでご心配ナーク」
「なるほど……いや屋上でそんなことするのを許可してるのは、それはそれで問題ないとは言えないと思うんだが?」
「そーいう細かいことは気にされマセンよう、デース」
「あっはい」
強行しやがったこの人。
……やっぱ在野にも変な人が多いんだな、この世界。
そう思いながら横を向けば、「その登場の仕方、ありだね!」とばかりに目を輝かせるMODさんや、「ほう、ほうほう……」などと意味深に首を縦にゆっくり振っているTASさんなど、こっち側の変な人達筆頭組の反応が見える。
……他のメンバー?付き合ってられないとばかりにさっさと帰ったROUTEさんを筆頭に、全員は揃ってませんが何か?
「むむむ、他の方々がいらっしゃらないのは問題デースが……まぁいいデショウ。所詮は顔見せ、相対する機会など幾らでも設けられようというモノ……トゥ!」
「飛んだ!?」
「ノー!カッコ付けて落ちてるだけデース!」
そんな俺達の様子に不満げに唸った影は、そのまま屋上からフライ・ハイ!
驚愕する俺達の前で影は手足を大きく広げ、ダイビングするかのように地面に着地……着地?
まさか、と叫ぶ間もなく影は地面に衝突。
その時の勢いが凄まじかったからか、辺りには砂埃が巻き起こり、影がどうなったのかを確認させない。
……よもや、死んだのでは?え、新手のグロテスク展開?
困惑と共にTASさんに視線を向ければ、彼女は珍しく必死に首を横に振っていた。「私、何もやってない」の顔である。
そうこうしているうちに、砂煙が晴れていく。
そこには無惨にもぐちゃぐちゃになった影の姿が……残ってはおらず。
代わりに、そこにあったのは。
「……穴?」
「さっきの影と同じ形をしていますわね」
「まさかのギャグ展開!?」
昭和の漫画とかで見るような、人の形に空いた大穴だったのであった。……いや流石に意味がわからねぇよ??
困惑が続く中、事態に動きが見えた。
地面に空いた大穴から腕がガバッ、と飛び出したのである。
思わず後ずさる俺達の前で、その腕は穴の縁を掴み、それに続くように反対の腕が飛び出し……。
「……ふーっ。ちょっと失敗しちゃったみたいデスね。危うくスプラッタデース」
「代わりにギャグになってるけど???」
「おおっと、それは当たり前なのデス。何せ私はそういう存在ですカラね」
「はい?」
穴から出てきたのは、快活そうな笑みを浮かべた金髪の少女。
同じ金髪でも、横のAUTOさんとはまた別タイプ……元気が有り余ってそうな感じの人物。
そんな彼女は、自身の服に付いた汚れや埃を呑気に払い落としていた。
……怪我をしている、みたいな気配はない。見た限り、彼女は健康体そのものである。
まるでギャグ世界の住人かのようなその姿に、思わず首を捻る俺達に、彼女はドヤ顔を浮かべながらこう答えてきたのだった。
「自己紹介が遅れマーシタ。私はこの学園の生徒会長にシテ、四天王が一人──不死身の日本被れ、デース!」
「自分で言うのそれ!?」
……思わずツッコんでしまったが俺は悪くないと思う。