うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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まさかのサービスタイム?

「……何がどうなれば私とこの人が一緒に風呂に入る流れになるんだろう……」

 

 

 思わずそう呟いたCHEATは、湯船の中から浴場内を見回している。

 

 結果的に寮みたいなことになったこのマンション。

 どうやらその辺りの反映?みたいな感じで、内装にも変化が見受けられていた。

 

 その内の一つが、この浴場。

 以前までは普通の浴室──どれだけ頑張っても、風呂に浸かる人と外で体を洗う人の二人しか入れないような大きさだったそれは、今やこの一室に住まう面々が一度に風呂に入っても余裕で収まるほどの大きさにまで拡張されている。

 そんな大きさの浴場内に、CHEATは日本被れと呼ばれる金髪の少女と一緒に放り込まれたのだった。

 

 

「イヤー、よもやお風呂までお借りするコトになるトハ!でも詫び錆びの効いた良い風呂場デスねー!」

「ちょっとした銭湯みたいなものだからねー」

 

 

 早々に体を洗い終えたCHEATは、現在湯船の中。

 髪に付いた泡を洗い流す日本被れはその行動からわかる通り、現在壁際のシャワーの下で周囲の様子を眺めている最中である。

 

 そんな彼女の様子につられるように、周囲を見渡すCHEAT。

 その目に写るのは、一般的な銭湯と同じように壁に描かれた富士山の姿。

 ……自身の記憶はこれを「みんなで描いたもの」と認識している。

 それと同時、「何時そんなことをしたのか?」というのはどうにも朧気。

 この辺り、(兄ちゃん)の言うように都合三回目となるこの周回が今までと様相が違う、ということの証左になっているのだろうと彼女は小さく唸ったのだった。

 

 そして、違うといえば……と言うように、現在室内にいるもう一人に視線を向ける。

 その当人である日本被れは、彼女の視線を受け不思議そうに首を捻っていたが……ともあれ、彼女の存在が三周目の奇異さを示している、というのは間違いないだろう。

 

 何せ、彼女はその性質上自分達のようなタイプとは微妙に外れる存在。

 ……無限残機、という風に不死を解釈するのであれば『RePOP』とか『RESPAWN』などと呼び変えることもできそうだが、仮にそう呼称するにはデジタルゲーム染みた空気感が感じられないのが問題になるというか。

 

 ──そう、デジタルゲーム感がない。

 CHEAT達はその能力に、どこかゲームのような空気感が滲んでいるが、目の前の少女のそれは普通の(というと語弊があるが)不死者のそれ、とでも言うべきもの。

 壊れた体を高速で回復する、というそれは確かに現象そのものは非現実的であるものの、デジタルゲームとして処理するのならいっそ全部消し炭にした上で全くまっさらな本人を新しく用意する、という形の方が相応しいような気もする。

 

 そういう意味で、やはり彼女には『RePOP(再生産)』というこちらに近しい呼称は似合わないのだろう。

 あくまで『RESPAWN(蘇生)』にしかならない、というか。

 

 

「……CHEATガールは難しい顔で何を考えているのデス?」

「……別に?他所の家の風呂なのに物怖じしないね、とは思ったけど」

「物怖じ?ノー!そんなコトしてたら勿体ないデース!」

 

 

 銭湯なんて中々入る機会がないノデ、こういう体験は新鮮デース!

 ……などと宣いながら、CHEATの横に浸かる日本被れ。

 はふぅ、と息を吐きながら肩まで浸かるその姿は、全く緊張感を感じさせないもの。

 リラックスし過ぎでしょ、と内心で呆れつつ、一先ず先ほどまでの思考を破棄するCHEATである。

 何故か?それは、目の前の彼女のスタイルにこそ理由があった。

 

 

「…………」

「?」

 

 

 ……いやまぁ、自分は年下だし?まだまだ成長期だし?

 そもそもダミ子と比べれば誰だって格下だし?

 なんてことが脳裏を過るが、同時にやはりその湯船に浮かぶそれはなんというか彼女の劣等感を刺激するというか。

 

 

「……ムム、視線が何だかエッチデスね?ここの人はみんなエッチなのデスか?」

「なななななななななにを根拠にそんなことを言ってるんですかかかかかかかかか????」

「動揺しすぎテ風呂が波立ってマース?!」

 

 

 そんな彼女の視線に気付いたのか、すっと自身の体を隠す日本被れ。

 思わず動揺するCHEATに苦笑した彼女は、しかし次の瞬間にはその視線をキラリ、と鋭いものに変えて。

 

 

「そんな風に見られると言うノデあれば、こちらにモ考えがありマース」

「…………?!」

「フフフ、実は貴方に興味津々だったんデスよね、私」

「なっ」

 

 

 妖艶とも呼べそうな笑みを浮かべた彼女は、ゆっくりとCHEATに近付いて行く。

 その豹変っぷりに対応が遅れたCHEATは、思わずきゅっと目蓋を閉じて──。

 

 

 

>_<

 

 

 

「……何やってるの?」

「あ、先生!この横に浮いてるゲーム機、普通に遊べるんデスね!」

「助けて!」

「……ああうん、あんまり夜更かししないようにね?」

「ハーイデース!」

「こらーっ!?スルーするなー!!?」

 

 

 風呂から戻ってきたら日本被れさんがCHEATさんの横に浮かぶゲーム機に興味津々だった件について。

 ……うん、レトロゲームも好きだったのね、君。

 

 

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