はてさて、新たなメンバーが加わった我が家。
かといって特になにが起こるということもなく、俺達はいつも通りゲームをして過ごしていたのだった。
「……つかぬことを聞くんだけど」
「んー?なにー?」
「……ここに集まっている時は、いつもこんな感じなのかい?」
「そうだなー……大体みんなしてTASさんにボコられて、こなくそーって感じで再戦してまたボコられてる」
「その不撓不屈の精神は買うけど……なんというかこう、もっとなにかないのかい?!」
「なにかって……なにが?」
「あれだよあれ!敵がどかーんと壁を突き破ってくるとか!特異な力を持つ少女達を狙って、悪役達が押し寄せてくるとか!なんかこう、あるだろ!?」
「はっはっはっ。そういうのが欲しいのなら余所にどうぞ」
「なんだとー!?」
まぁ、最近ここに加わったばかりのMODさんは、現状に不満を抱えていらっしゃるみたいですが。
でもねMODさん、これは仕方のない話なんですよ?
「仕方ないって、どういう?」
「よーく考えて欲しい。……高速で振り向きながら武器を振るうと相手が爆散するような人相手に、まともな悪の組織が敵うわけないだろ?」
「失礼させて貰った。ぴーすぴーす」
憐れな敵対者さんは、マグロが叩きにされるかの如く呆気なく散るのがここでの定め。
言ってしまえば一行二行で雑に片付けられるのが関の山でしかないので、そもそもこの部屋までたどり着くことがないのである。
そしてもし、わかりやすーい悪役がここにたどり着くことがあるとすれば、それは恐らく憐れな生け贄でしかないのだ。
「生け贄って……」
「とりあえずTRPGさせて、ダイスの目を全部ファンブルにさせる。その時の反応が面白ければ採用」
「な、なんでそこでこっちを見るのかな……?」
「この中だと一番面白そう。次点でお兄さん」
「やったー!」
「そこ喜ぶところなのですか?」
なにを言うんだAUTOさん!
やられてみればわかるけど、ステータス決める時に何度振り直しても、数値が二桁どころか五より上にならない……みたいな状態にされるんだぞ!
TASさんのお気に召したら乱数調整もやめて貰えるけど、そうじゃなかったら……下手をするとその弱小プレイヤーのままシナリオとかやらされるんだぞ!
そんな状況から解放されるってんだから、これが喜ばずにいられるかってんですよ!
「お兄さんは大袈裟。私は精々最初の二回くらいしかやってない。それもダイス一つだけ、というのを二回」
「またまたー。あの時の俺、確か十回くらいやり直したよ?そのあとも判定する時毎度の如く失敗してたし。それも含めたら俺、数十回くらいダイス振ってたよ?」
「……ね?」
「あー、なるほど。段差から降りただけで瀕死になるかも、なんて言われるわけだ……」
「……あれ?なんで俺、突然哀れみの視線を向けられてるの?あれー?」
なお、その話をしたあと、暫くみんなから生暖かい目で見られることとなった。……なんかイラついたので、CHEATちゃんの髪の毛をわしゃわしゃにしておきました、まる。
「そういえば、MODさんって性別どっちなのですか?」
「ん?私かい?」
TASさんに挑んでみんな爆発!……みたいないつもの流れを終えたあと、昼食の時間になったため、コントローラーを置いてテーブルを囲んでいた俺達。
そんな最中、鮭の切り身を口に運ぼうとしていたAUTOさんが、ふと思い出したかのように、MODさんへと一つの問いを投げ掛けたのだった。
……ふむ、確かにこの人、見た目からでは性別が判別できない。
スラッとした長身のショートヘアの人物、と言えばなんとなーく『男装の麗人』っぽいのがわかる、というか。
喉仏はないけど、大人になっても声変わりしない男性なんて、今時そう珍しいモノでもないので判断材料にはならないだろうし……。
「あー、真面目に考えて貰ってるところ悪いけど、正直私の性別に関しては論じるだけ無駄なんだ」
「なぬ?」
などと考察していたところ、申し訳なさそうな顔をした彼……彼女?に謝られ、俺達の思考は止まってしまう。……後ろでTASさんが気にせずご飯食べてるのは、気にしないように。
「MODって付け加えるモノだろう?それは設定だったり武器だったり、色んなものを追加するということだ。……要するに、性別変更MOD導入済みでね、私の場合」
「新人類だった!?」
「大袈裟だなぁ」
聞けば、先日の話にも繋がることだが……キャラの容姿を追加するようなMODもある以上、見た目の性別・中身の性別、共に自在に変えられてしまうのが彼、もとい彼女?な、MODさんの特徴なのだとか。
なので、今は男装の麗人みたいな見た目だが、やろうと思えばTASさんよりも幼いロリになることも、筋骨隆々なマッチョになることも、まさに自由自在なのだとか。
「なるほど。じゃあ私もアドレス弄って凄いことに……」
「ならなくていいから。お願いだからTASさんはそのままでいて」
「ちぇー」
……対抗心を燃やし始めたTASさんが真似をしようとしたため、それ以上話は続かなかったのだが。
TASさんがやると、性別云々じゃなく生命としての枷を飛び越えそうなのでダメです。
あとMODさんも「できるよ?」みたいに煽らないでマジで。酷いことになるから。下手するとTASさんが液状になり始めるから。マジ止めて。
「リアルチートじゃん」
最終的に、それを君が言うのか、という台詞をCHEATちゃんが述べたことで、なんともいえない笑いが周囲に巻き起こり、話は有耶無耶になって流れたのだった。