「……うん、まぁ及第点かな」
「やったーっす!これで帰れるっすー!!」
結局授業は放課後までもつれ込んだ。
授業内容を好き勝手変えられるクラスだからこその暴挙だが、それにしたって自由すぎるだろ色々と……。
そんな感想を抱きつつ、口元をハンドタオルで拭う俺である。
都合十二品目となる同人ちゃんのクッキー(不恰好だが食べられなくはない)の完成により、どうにか終了した調理実習。
彼女達の出来上がりを待つ間に作り上げた他の面々の料理は更にそれらより多い量となっており、なんというか彼女達と他の面々との技量の差……というものを感じざるをえない。
「え?単純に今日の夕食を先にお作りしていただけですよ?」
「そうそう、これ全部タッパーに入れて持って帰る」
「おい待てぇ、タッパーにしまうのはギリギリ見逃すが窓から寮に向かって投げてんじゃねぇ」
いや、極論言うとタッパーに詰めるのもあんまりよくないんだけども。
家で勝手に作ってるもんならあれだが、流石に学校の調理器具を使ったものを持ち帰って食べて胃を壊した、なんてことになると面倒とか言う話で済まなくなるからできればここで片付けて???
……という前提を設置した上で、現在のTASさんの行動は大問題である。
見ろよママン、夕焼けの空に中身の詰まったタッパーが滑空して行く姿を。
すっかり慣れきっちまったやつしかいねぇから問題になってねぇけど、これどう考えても見たやつが『俺頭がおかしくなったのかな?』ってなるやつ!
なんなら『なるほど、これが幻覚症状ってやつか……俺いつの間にはっぱ()吸ったかな?』ってなるやつぅ!!
「お兄さんは大げさ。タッパーに羽が生えてからそういう文句は言って欲し……あっ」
「言ってる傍から翼を授けてるんじゃねぇよ!?」
いやまぁ、ゲーマーと翼と言えば密接な関係があるモノだけどね?!(かなり胡乱な発言)
ともかく、集団でまるで鳩のように飛び立つ中身入りタッパーとか悪夢以外の何物でもないので即刻止めるように注意し、改めて問題児は問題児でも別の問題児達の方に向き直る俺である。
「苦節数十年……!ようやく私モ満足行くモノができマシた……!!」
「おう、良かったな。正直十年掛けてそれなら俺だったら首吊るけども」
「モーっ!!折角の喜びを邪魔シナイでくれマセンか!?」
「へいへい」
すっかり扱いが底辺化した日本被れ(呼び捨て)だが、それも仕方のない話。
失敗に失敗を重ねた彼女のクッキーは実に三十品目、それでもなお型崩れし噛めばぼろぼろで食感微妙だし、味の方も食えなくはないけど二口目の時点でもういいかな……ってお腹いっぱいになる始末。
……典型的なレシピ守らないタイプである彼女は、正直AUTOさんに任せて投げ出したい俺である。
いやまぁ、実際に彼女に任せるとわりと真面目に死にそうなので止めたのだが。不死者が料理で死ぬとはこれ如何に。()
まぁ一応、最初のに比べれば遥かにマシなのである。
レシピを守ることを徹底させた結果、何故か炭しか作れなくなった過去を思えば遥かにマシなのだ。食べられるし。
……代わりにレシピを守る、という美徳がどっかに行ってしまったのが大問題なだけで。
「でも仕方ねぇじゃん!レシピ守らせるとなんかおかしくなるんだもんこの子!」
「おかしいトカ教え子に対して失礼すぎマース!!」
なんで自分が料理されてる妄想に行き着くんだこの子(困惑)
あれか、脳内まっピンクなのか?そんな素振りほとんどなかった気がする……気がする?
まぁともかく、そこまで酷くなかった気がするんだけど、どうにも調理器具を持つと変な方向に思考が及ぶようで。
個人的には彼女は料理は諦めた方がいいと思うけど、それでもレシピを気にしないように示したら、調理の方に気が取られてまだマシになったのでもうそれでいいんじゃないかなーって。
……レシピを気にしなくても真っ当に作れるようになった時が、更なる地獄のような気がするけどそこまで面倒は見きれん。
ともかく、一番酷かったのが日本被れさんなわけで、他の二人は比較的(※当社比)マシだった。
特にギャル子さんは
(……まぁ、時々『プロテイン……』とか呟いていたのが不安要素ではあるんだが)
──彼女もまた、まともに作れるようになってからが地獄な気がする、とも言う。
で、ついさっき十二品目で及第点を貰った同人ちゃん。
彼女に関しては手先が不器用なのが問題の大半、って感じだった。
同人ちゃんなのに手先が不器用なのはどうして?(真顔)
「しししし仕方ないじゃないっすか!?私は箱入り娘だったんすっすよ!!」
「あっ(察し)」
「余計なことまで察しなくていいっすよー!!?」
なるほど、箱入り娘だからこそ
まさしく好きこそモノの上手なれ、ということらしいと気付いた俺である。……つまり料理も好きになれば上達する……?
まぁ、今は普通に食えるものが出来上がったことを喜ぼう。
それ以外にも片付けるべき問題が残ってるし。
「え?何かあったっけ?」
「外」
「……あー」
調理室の外には、貰えると聞いて待ってたけど滅茶苦茶時間が掛かってて飢え始めている亡者どもの群れ。
……そういえばそんなのも居たね、とばかりに声をあげるCHEATちゃんをBGMに、出来たクッキーを分ける作業が始まったのであった。
なお、人気だったのはDMさん制作のやつと俺のやつだったことをここに記しておきます。
「あらあら」
「DM先輩のクッキー最高っす!」
「いあ!いあ!」
「うめぇうめぇ」
「ふんぐるい!むぐるうなふ!」
「なんかやべぇやつ混じってない???」
「あらあらうふふ」
「DMさん、笑ってなくていいからこいつ止めるの手伝ってくださいませんか?!」
「うふふ」
「笑うなー!!?」