うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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青春を楽しむのならあれこれやるしかない

 その場では回答できないので見学させてくれ、とどうにか絞り出した俺である。

 逃げられないことがわかったのだから、せめて選ばせてくれ……みたいな感じというか。

 いや、断ったら全部任せられる予感がひしひしとしたんだもんよ、それならせめて選ばせてってなるでしょ普通。

 

 そういうわけで、これから何日か使って部活の見学体験を行うことになったわけなのだけれど。

 

 

「一日目から早速大変すぎて最早ウケる(白目)」

「ウケてる場合じゃありませんよ貴方、見学者はまだまだたくさん来るのですから」

「やだ、この人最早寮母さん……」

 

 

 体験が必要なら早急にという主任さんの鶴の一声により、帰る際ぞろぞろ付いてくることになった調理部メンバー達。

 生憎見知った顔は一つもなかったが、だからといって対応が楽かと言われればそういうわけでもなく。

 

 

「寮母……やややややっぱり、この寮があの先生の……って噂は本当だったのかな?!」

「それが本当だとすると……きゃー!」

「やべーななんか普通に人を殺しそうな噂が流れてる気がする」

 

 

 わりとミーハー(死語)な生徒が多いのか、彼女達(少数男子も見える)はこちらとDMさんの会話を聞いて、何やらきゃいきゃいとはしゃいでいる。

 ……パッと耳に入る内容ですら不穏極まりないのだが、これもしかして俺って社会的死の間際なんじゃ?

 

 よもやあの主任、そういう生徒達の噂を確認するための刺客として彼女達を動員して来たんじゃあるまいな……。

 などという被害妄想……被害妄想かなこれ?……まぁともかく、そういう懸念を飲み込みつつ、少女達に指導する俺であった。

 

 ……うん、これ部活動だからね。体験版とはいえ。

 そんなわけで、この寮内の人間としては調理が上手いと断言できる二人、俺とDMさんが講師役として立ち回っているわけである。

 まぁ、雰囲気的に部活動ってより奥様方の通う料理教室感が凄いのだけれども。

 

 

「おおおお奥様?!もしかして爛れた午後を過ごすために……!?」

「おーい、誰かその暴走機関車外に出しといてくれんかー」

「あっ、止めて下さい冗談ですこのタイミングで外に放り出すのは止めて下さい!?」

 

 

 なお、その内の一人──ゴシップが好きそうな少女に関しては、そのまま放置すると真面目に俺が死ぬので退場するように指導したが、結果泣いて赦しを請い始めたためドン引きしながら撤回した。

 いやマジ泣きやんけ怖いわ色んな意味で。

 

 

「……マジでうめぇなぁ」

「前回分けて貰ったけど、一口食べた瞬間争奪戦になったからね、特に先生のやつ」

「わかりますぅ。お兄さんの料理は思わず箸が進んでしまうんですよねぇ」

「へー……お菓子しか食べたことないけど、料理も美味しいのかー」

「おいこらちょっと待て。なんで馴染んでるのダミ子さん、貴方調理部どころかそもそも台所に立つ前に終わるタイプでしょ」

 

 

 で、最終的に出来上がった料理──今回はマフィンだが、それをみんなで食べることになったのだけれど……何故か部外者()であるはずのダミ子さんが生徒達に混じっていた。

 いやまぁ、寮の真ん中で料理をしているのだから、そのサイドに自室を構えるうちの寮のメンバーはいつでも混ざれるといえば混ざれるわけだけど。

 でもダミ子さんって料理できない組に区分けされる存在だから、単純に完成品摘まみに来た以外の可能性がなくてだね?

 

 

「端的に言うと働かざる者(ギルティ)だから出禁じゃ出禁。完成品だけ摘まんでるんじゃないよ」

「きゃー!お兄さんに酷いことされちゃいますぅー!」

「あ゛?」

「そ、そんなにマジギレすることないじゃないですかぁ……」

 

 

 そういうわけで放り出そうとしたのだけれど、なんかまた誤解を生むような発言をし始めたため本気で睨む俺である。

 そんなことでとは言うがな、そこのゴシップ好きちゃんがまた騒ぎたそうな顔してるから普通に死活問題なんだわ。

 これ以上余計なことを言うのならその口縫い合わせて今後一切ご飯抜きにするからな???

 

 ……などと脅したところ、ダミ子さんは渋々といった様子で自室へと戻っていったのだった。

 

 

「さて、下手人が一人片付いたところで……TASさんは何やってるの?」

「最近お兄さんの交遊範囲?的なものが広がった結果、私の出番が減っている気がする。無論出てないなら出てないで後ろ(はいけい)で色々できるからそれはそれで問題ないんだけど、でもやっぱりそれだと寂しいからこうしてインパクトだけは残そうという次第」

「うわぁ!?人が天井からぶら下がってきた!?」

「あ、お菓子の入ったボウルが一つ取られてる!?」

「なにぃ!?」

「戦争じゃー!」

「それは儂らのもんじゃー!!返せー!!」

「……あと、ここでこういう行動を取ることで、最近満たし辛くなってた挑戦者成分を補給できる」<ホクホク

「あ、はい」

 

 

 で、そんな彼女の背を見送ったのち、視線を上に向けると。

 そこにぶら下がっていたのは、わざわざ忍者っぽい服装に着替え、マフィンの入ったボウルを一つ小脇に抱えたTASさん。

 ……さっきのダミ子さんとは違い、マフィンそのものが目的ではない彼女は、眼下にて自身を捕まえようともがく生徒達を見て満足げに頷いていたのだった。

 

 いや、そんな出番でいいのキミ?

 え、大丈夫、問題はない?さいですか……。

 

 

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