かわいそうな部活達に思いを馳せること数分。
正当な権利を持ってぶんどってきたのなら返すのもあれ、という日本被れさんの主張に渋々頷きつつ、持ち帰られた戦利品が後ろの棚に並べられて行くのを眺める俺である。
……よく見たら、結構色々置いてあるなこの部屋?
「全部戦利品っすね。正直読書部にこんなものは必要ないんっすけど、あって困るモノじゃないので飾ってるんっすよね」
「ん。勝利のトロフィー」
「邪悪すぎる……」
マジかよこれ全部戦利品かよ……。
置いてあるものは多種多様、よくよく見れば石像……いや石膏像?とかトロフィーっぽいものとか、あからさまに備品と言うにはあれなものも混ざっている。
要するに、取れるものをひたすら奪っている状態というわけだ。
その上で、別に何か有効活用するわけでもなく、単に飾られていると……。
……うん、これあれだな?他所の部活から滅茶苦茶恨まれてるやつだな?
同人ちゃんはなんか楽しげに笑ってるが、ことの次第を把握してるかは半々と言ったところ。
つまりそのうち闇討ちされる可能性について知ってるか知らないか、その結末はわからないということである。
……え?TASさん?彼女がわかってないわけないでしょうが()
「それはつまり……?」
「挑戦者が群れをなしてやって来るのを今か今かと待ち構えてやがる……TASさんってこんなに戦闘狂みたいなキャラだっけ……?」
「失礼な。学業を楽しんでいると言ってほしい」
「学業かなぁ!?これ学業かなぁ!!?」
うーんじゃちぼうぎゃくのたぐい……()
下手な魔王より魔王ムーヴしてるが、そもそもTASと言えば『住民は滅びましたがクリアはできたので問題ありません』とかなんとか言いながらストーリーをクリアする存在、そりゃまぁそこらの悪より悪なのは当たり前といえば当たり前か。
まぁ、目下裏社会の
「……なんか生暖かい視線を向けられてる気がするんっすけど、私何かやりましたかね?」
「お気になさらず。同人さんが愉快な方なのは皆様もうご存じですから」
「あれ?おかしいななんかいつの間にか私の立ち位置変なことになってるっす???」
「それはいけない。すぐにそこの像を左に三回回してバックステップ、然るのち机の上のコーヒーを溢さないと」
「騙されないっすよ!?前回言う通りにしたら何故か床下から冷気が這い上がってきて危うく凍死しかけたんっすからね!?」
「大丈夫大丈夫。あれ一般人なら『なんか寒いなー』で終わるやつだから」
「だだだ大丈夫だとしてもいきなり寒くなるのはよくないと思うんっすよ!!?」
(遊ばれてんなー……)
このおもちゃを手放すことはないんだろうなー……(遠い目)
そうこうしているうちに、戦利品達が棚に並べられる。
特に統一性のないそれらは、TASさんもとい読書部が数多の部活とぶつかり合い、それに勝った証。
それゆえ、備品としての価値がなくとも部費の試算には有利に働くとかなんとか。
「その潤沢な部費を使ってすることが、こうして読書を嗜むことだと言うのだから贅沢っすよねー」
「ソダネー」
うん、本当に贅沢だな!
……という心からの感想を半ば叫ぶ俺である。
なんでかって?その答えは読書家ちゃんの手元にある……!!
「……?どうしたの先生」
「いや何、なんというかヤベーもん読んでんなーと」
「ふふ、いいでしょ。『
「恐れ多いんで止めてください……」
それあれだよね、確か現存するのは世界に十一冊、記念すべきシャーロック・ホームズの第一作である『
稀覯本扱いされてるのはそもそもホームズが有名になる前のモノであること、及び古すぎるために実際に読書に耐えうる状態で保管されている可能性が少なすぎること……みたいなところからなんだったっけ?
「コピーによる補修版ですら、オークションで十六万ドル近い値が付いたという逸話付きの逸品……その幻の十二冊目と言ったら、流石に先生も驚くっすか?」
「いや驚かん。代わりにTASさんをジトッと見つめる」
「…………」
(露骨に目を逸らした!?)
逆に言うと、
世界に一冊しかない──そもそも一冊しか作ってないとかならともかく、過去発刊されただけの本であるならばTASさんが取り寄せることは可能だろう。
無論その際に時空を歪めた可能性大なので、俺としてはTASさんをじっ、と見つめるしかないのだが……当の本人は『読書部なんだからこのくらいの箔は必要』とばかりに視線を逸らしていたのだった。
……仮に胸を張れるのなら目を逸らすんじゃないよ!
逸らしてる時点で後ろめたい気分があること確定じゃんかよ!!
迂闊な過去改変に繋がりかねない行動に怒る俺と、両耳を塞いで聞こえなーいとばかりに視線を逸らすTASさんなのであった……。