「結局、流れから読書部の顧問を任されちゃったなぁ」
「まぁ、良かったんじゃない?私は見てないからよくわかんないけど、あんまり他の人に見せるような部室じゃなかったんでしょ?」
「いやまぁ、それはそうなんだけどね……」
はてさて、唐突だが夕食調理中の俺である。
今日のサポートメンバーは日替わりの結果CHEATちゃん。
料理の腕前は可もなく不可もなく、ゆえに基本は下拵えの面で手伝って貰っている次第。
とはいえ、明らかに料理ができない面々と比べれば月とすっぽん、飛び級とはいえ年下の女の子に負けてるとか今どんな気持ち?
……とか煽っても許されそうな戦力差である。
「止めろよやんなよ?そんなことしたら私も含めて袋叩きだぞ?」
「はっはっはっ。やらんけどその台詞はさらに相手をヒートアップさせそうだねぇ」
「いや違っ、別に煽ってなんか……」
からから笑いながら、CHEATちゃんが切った具材を引き取り炒める俺である。
今日のメニューは肉じゃがと味噌汁、五穀米。
我が家は和食が基本だったため
「私トシテは、もっとコッテリしたものデモ構わないのデスけどねー」
「つってもなぁ、日本被れさんが好みそうなこってり系って言うと店系のラーメンとか?」
「何をドウ考えた結果その答えにたどり着いたノカは知りマセンが……何となく馬鹿にしてマセン?それ」
「いやいやそんなことは。アメリカ系っぽいから肉厚のステーキ級だと解釈して、そこから同じ程度の油感を選出しただけですよ?」
「遠回しにジャンキーとでも言ってるンデスかコンチキショウメー!」
「鮭が顔に!!?」
うへぇ、地味に塩鮭じゃんどっから持ってきたの……え?景品で貰った?塩鮭一匹景品になるってどこ行ってたの君?
ともあれ、お土産っぽいので明日以降の料理に使うことにして鮭を片付けつつ、憤慨しながら去っていく日本被れさんの背を見送る俺である。
え?隣のCHEATちゃんが呆れたような顔してる?呆れられる理由なんて幾らでも思い付くから気にしたこっちゃないね!
「いやそこは気にしろぉ、ったく……はい全部切れたよ」
「おっとありがとう。なんなら味付けとかもやってみる?」
「遠慮しとくー私がやると辛くなりそう」
「あれ、君辛党だっけ?」
「そういうわけじゃないけど……こう、前日までのあれが……」
「ああ……」
遠い目をするCHEATちゃんに、思わず同調する俺。
……今日は彼女が手伝いだが、最初に言ったように手伝いは日替わり・当番制である。
ということは、昨日やその前は彼女以外の人間が調理場に立ってた、というわけで……え、俺?俺はやりたくてやってるから……。
ともかく、昨日より前の日に他の人が手伝いをしていた、というのは事実。
そしてその手伝いの人に、俺が料理を教えていたことも事実である。
「流石に何も作れないのは……みたいな感じで教えたんだけど……」
「ある程度マシになったとはいえ、お菓子よりあやふやな部分のある料理作りには不安が残る……だっけ?」
「そうそう。適量だの火の加減だのお好みでだの、菓子作りより遥かに料理人の感性に頼る部分があるからねぇ」
料理は科学という言葉があるが、より科学としての性質が強いのが菓子作りなのは間違いあるまい。
多過ぎる砂糖とかにも意味があり、それを迂闊に減らすと菓子としての体裁を為さなくなることもある……というのは、なるほど覚えた公式をそのまま使う計算のよう、だとも言えるだろう。
それに対して料理と言うのは、同じ科学でも覚えた公式を組み合わせるなどして行うもの。
必要な技量が跳ね上がっているため、菓子は作れても料理は無理……みたいな人間を生み出す土壌にもなっている。
まぁ、一般的にそうなりやすいというだけで、世の中にはそれとは反対の人もいるわけだが……今回は関係ないので割愛。
ともあれ、料理下手の人間に料理をさせる、という難題に挑むとなれば、選ぶべき料理というのも自ずと狭まってくる。
「……具体的には、失敗しつらい料理とか」
「具体的には、大抵の味を全部ごまかせる……なんて言われてる料理とか」
いやまぁ、実際にはなんでもかんでもごまかせるわけじゃないし、失敗しつらくても失敗する人間はいるんだけどね?
一応、その時の
「……最終的にあのカレー、味がわからなくなるくらい辛くなってたもんね……」
「一回『辛くなりすぎた!?じゃあチョコとか入れて中和中和~☆(汗)』とかやられたからなぁ……」
「味は打ち消せるものじゃないっての……!!」
味とは混ざるものなので、最悪甘すぎて辛すぎるだけになるというか?
……最終的に辛さを極限まで上げて、味を痛みでごまかす方向に舵を切る羽目になったカレーと、ほぼ同じ具材を使う肉じゃがを見て、思わずため息を吐いた俺達なのであった。
なお、件の辛すぎるカレーはTASさんが『何かに使えるかも』と保存したことをここに記しておきます。
……その劇物を何に使うつもりなので、とは聞かなかった俺である。