「うーん、昼間なのに鬱蒼とし過ぎている……」<ブヒッ
「そういえば、この猪に名前を付けたりはしないのか?」
「当初の予定だと、山の中だけの繋がりのはずだったからなぁ。そうしてなぁなぁに過ごしているうちに、なんかもう猪っていうのが名前みたいな感じに……」<ブヒー?
「ええ……?」
いやまぁ、彼の動きが猪らしからぬもんだから、敢えてそう呼ばないと猪であることを忘れそう……みたいな意味もあるんだけども。
見てみなよ猪君の顔。きらきらとした野生動物らしからぬ、まんるいおめめをこちらに向けているだろう?
この姿を見せられたら、例え見た目がワイルドだろうと猪感はまるで感じられんよ。
いやまぁ、そもそもなんか頭良すぎ、って部分もあるんだが。あからさまにこっちの言葉に反応してるし。
今もほら、こっちの言葉に反応してか、微妙に顔を逸らしてるし。『いやいや、僕ただの猪ですよー?』みたいな顔してるし。
……猪は遥か昔に『山の神』とされたこともある。
ゆえに、もしかしたらこの猪もそういう類いなのかもしれない。……神様が突然ポップしてることについてはスルーしてもろて(仲間内のそういう奴らを思い出しながら)。
とはいえ、仮に彼が本当に山の神だとして、こうして単なる猪のふりを続けている以上、そういう扱いを求めているわけではない……というのも確かだろう。
なので、その辺りを忘れないようにあえて猪と呼び続けている……みたいな話もあるかもしれない。<ブヒー!?
「今明らかに『良い話だったじゃん!そのまま終わってれば良かったじゃん!!?』みたいな鳴き声を上げなかったか、その猪」
「さぁ?仮にそうだとしても、気にせずスルーしてあげるのが大人の対応ってヤツだよ」<ブヒィ……
(これやっぱり言葉がわかってるやつですね)
ガクッ、と項垂れる猪の知性について殊更に言及することなく、改めて山の捜索に意識を戻す俺達なのであった……。
「む、これは向こうで何か楽しそうなことをしている予感」
「そう思うのでしたら、今からでも向こうに行かれても構いませんが?」
「そうしたいのは山々だけど、こっちはこっちで楽しいからあとで確認する」
「左様ですの……」
はてさて、場所は変わって彼らとは別・山の反対側の方。
こちらはTASとAUTOの二人がペアとなって、魑魅魍魎蔓延る魔境へと足を踏み入れる正にその瞬間、という様相であった。
今回のピクニック()において、彼らは四方から山を攻略する手筈となっている。
男性組は一番攻略に対しての期待が低く、仮にこれが賭け事ならば大穴に位置すると言っても過言ではないだろう。
対して評判にした時に恐らく一位になるのがこの二人のペア。
攻略戦に参加せず、山頂で他の面々の到着を料理と一緒に待つDM&スタンド+同人&ダミー、の四人を除いた他の面々において、彼女達以上に攻略速度の速いであろうチームはいまい。
なお、先んじて山頂に向かった面々に関しては、基本的に本人が魑魅魍魎であるため免除された人員である。
DM&スタンドは言わずもがな、ダミーに関しても妖怪変化は健在ゆえ致し方なし。
ただ一人、同人のみが自身の扱いに異議を申し立てたが──、
「じゃあ、私達のグループに入る?」
「すみませんおとなしくさんちょうでまってます」
──というように、TAS直々の誘いを丁寧に断り、待ちに甘んじることとなったのであった。
「まぁ、それで良かったのかもしれませんわね。……入り口の時点でこうしてゾンビだのキョンシーだのに襲われる羽目になっているのを見ると、彼女が無事に山頂に迎えるかは怪しいところがありますから」
「そう?私としては彼女の隠されたパワーが発揮されるところが見たかった」
「仮に発揮したとして、恐らくTASさんの今の姿には負けると思いますが」
「そうかなー?」
「そうですわー」
そっかーなどと宣いながら、TASは空を駆ける。
正確には、ゾンビ共の頭を地面代わりに踏み潰しながら飛び回っている、というのが正解である。
この山、どうにもどこぞの組織が秘密裏に改造していた曰く付きのもので、侵入者への迎撃対策としてゾンビなどが湧き出す仕掛けとなっているらしい。
なお、当の組織は既にTASが片手間に壊滅させている、
なので、これらのゾンビ達はあくまでもオート迎撃によるもの。
ゆえに被害はこの山から飛び出さず、こういう時の
「とりあえずダミ子とかDMとかには攻撃したりしないし、仮に噛まれても治そうと思えば治せるから心配も薄い。さらには危機感を煽ることで吊り橋効果?も期待可能。誰かと仲良くなるには持ってこい」<フンス
「なるほど、貴女なりに考えた結果の選出先、ということですのね。……ところで、私達がこれ以上仲良くなる必要性は?」
「ないけどたまには遊びたい」
「そっちが本音でしょう、それ」
アーケード対戦の延長線上じゃないのか、とAUTOが言葉を返せば、TASの方は不思議そうに「そうだけど?」と首を捻ったのだった。
その後、ゾンビのキル数を競う二人が見られるようになるが、生憎他の面々はそれどころではなかったため、誰も知る由もないのであったとかなんとか。