「職場見学がしたいと聞いて」
「誰もそんなこと言ってないんだが?」
「力仕事だと聞いて。今日の私はマッソォーだ」
「いやそんなバカな……なにそのスキンヘッドのムキムキマッチョ!?」
「いいだろう?馬力が違うゾ☆」
「キャラおかしくねぇですMODさん!?」
突然襖をスパーンッと開いたTASさんの、久方ぶりの謎行動。
それを俺はやれやれ、とスルーする気満々だったのだが……彼女の横にいたMODさんが、何故か洋画とかで船やら敵やら色々纏めて静寂の内に沈めてしまいそうな感じの、ダンディーな姿になってしまっていたため、思わずツッコミを入れてしまったのだった。
……くそっ、今日という今日こそは、なにがあってもスルーするつもりだったのに!!
「お兄さんはわがまま。なにがそんなに嫌なの?」
「なにもかもだよぉ!!正直鉛玉が飛び交ってないってだけで、TASさんの紹介するところって
「だからこその私だ。大船に乗ったつもりで任せたまえ」
「ヒーローのつもりで言ってるのかもしれないけれど、その姿だとこっちの船ごとなにもかも沈めちゃいそうなんだよなぁ……」
無論、MODさん一人だけは脱出して、である。
いやまぁ、この場合はこちらにTASさんが居るのだから、その辺りの問題はないと思うのだけれど。
「なるほど。お兄さんは船をハンティングしたいとみた」
「いやそんなこと言ってな……いや待ったなにそれ???」
「あーるぴーじー。TASにはお馴染みのジャンル」
「それは『
「……君、時々変な知識を発揮するよね」
なおそのあと、民間で所持しているとどう考えても危ない物体()をTASさんが持ち出したため、こちらとしては心臓バクバクで仕方なかったのだが……
「まさか違法漁船拿捕、なんて仕事をやる機会があるとは……」
「目標が真ん中に来たらスイッチ。とても簡単なお仕事」
「幾ら相手が死なないからって、わりとやりすぎの部類じゃねこれ……」
件の武……もとい筒、どうやらCHEATさんの手の入ったモノだったそうで。
なんでも飛び出したなにか()が当たると必ず船が止まるけど、人死には絶対に出ない……なんていう風な調整がなされているのだとか。
それらを使って日頃の鬱憤、とばかりに船を止め捲る他のバイター()達を横目に、俺は死んだような目で
いやー、周囲が世紀末と化してると、反比例してすごく冷静になるね、マジで。
……え?MODさん?
今の見た目に期待される通りに、相手の船に乗り込んでは一つ一つ丁寧に沈めて捲っていらっしゃいますがなにか?
「見た目だけを真似るのかと思ってたけど、それに見合う動きができるように鍛えているというのは好印象」
「筋肉って形で表面に現れないから、幼女姿の時の方が
内部的な当たり判定とかがどうなっているのかはわからないが、一応筋力とか瞬発力とかは元となっている数値があるらしく、小さい時ほど怖くなるのがMODさん、ということになっているらしい。
なので、見た目で怖さがわかる今の方が実は脅威度が低い、なんて変なことになっているようだ。
さっき船を沈めるMODさんの姿をチラッと見たけど、相手が拳じゅ……なにか黒い筒()を構えた途端、MODさんの背丈がみるみる縮み、けれどさっきまでの速度は維持したままだったため、相手の脇腹に高速ロケット頭突きがぶちかまされることになってしまったわけで。
……メキメキ音が鳴ってたけど、あの人大丈夫かなぁ……?
「大丈夫。密漁するような相手に人権はない」
「物騒すぎやしないですかね……」
なお、俺の横でクールにスナイ……長ーい筒()を構えたTASさんは、サイトすら覗き込まないままにワンショットワンキルを決めて周囲を八点場にし続けていたため、正直相手方が可哀想になりましたが歩合制とのことなので情け容赦はございません。
その血の一滴まで、全部TASさんに有効活用され……いやいや。なにも血生臭いことはありませんでした。ないったらなかったんです、いいね?
「それで、背中がちょっと煤けていらっしゃるのですね……」
「ちょっとスパルタ過ぎた。今は反省している」
「お前の反省ほどあてにならないものもない気がするけどな……」
「おお、よく理解してる。ご褒美に雨をあげよー」
「いやいらな……ニュアンスが違ぇ!?……ってうわっ、冷たっ!?」
「部屋の中で雨が降ってるだと……?!」
なお、全部の仕事が終わった結果、俺は暫く顔の厳つさが戻らなくなってしまい、みんなからヒソヒソと噂される羽目になってしまったのだった。
……いや、俺凄腕スナイパーとかじゃねーから!背後に立たれても殴り掛かったりしねーから!