うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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死なないから死なないと慢心するのは良くない

Noooooooo!!!?追い掛けて来ないで下サーイぃぃぃっ!!?」

「ええっと、なんで逃げてるのカブっち?」

なんデスその二輪車か野菜ミタイな名前!?

 

 

 今までそんな呼び方デシタっけ?!

 ……と叫ぶ日本被れに、ギャル子は「生徒会長だからせーちん、よりいいと思うけどなー」と返しながら、目の前にやってきたゾンビの頭をカチ割った()のであった。

 

 こちら、四方から山を攻略する組のうちの一つ、日本被れをリーダーとするチーム。

 彼女達は山に侵入してしばらくしたのち、こうやってゾンビの大軍と死闘を繰り広げている最中なのであった。

 

 本来、こういう場面なら死ぬことのない日本被れが盾になって他が攻撃する、というのが黄金パターンなのだが当の本人は回避盾もかくや、とばかりに逃げ回っている。

 その理由が、彼女達二人以外のメンバーに隠されていた。それは、

 

 

「おーそうそう逃げ回れー。噛まれるとやベーぞーすげーことになるぞー」

ひぃいいいぃぃぃぃっ!?忠告ばっかりシテなくて良いデスから、貴女も手伝って下サーイっ!!?

「とはいうがなぁ、俺が見てねぇと判別できねぇだろ、やベーヤツ」

それはそうデスがぁーっ!!?

 

 

 ギャル子の方ではなく、もう一方。

 煙草を咥えやる気無さげに日本被れに指示を出す女性、ROUTEの存在。

 

 彼女もまた、TASと同じく未来視系の技能者であるが……彼女のそれはTASのそれより遥かにわかりやすい。

 選択肢という形で未来を知らせる彼女のそれは、ゆえにこそ他者への解説が比較的容易である。

 ──例えば、そこらのゾンビに噛まれた場合、()()()()()()()()()()()()()……という事実が、うっすらと透けて見えたりだとか。

 

 

「たまーにあるやつだな。不死者なんだから動く死体(ゾンビ)になんぞならん……と高を括っていたら、実のところ互いの原理が別物だったせいで制御権を奪われる……みてぇな話は」

「んー……ょくわかんなぃんだけど?」

「何、難しく考える必要はねぇさ。単にそこらに地雷がばら蒔かれてて、それを踏むのは良くねぇぞ……って言ってるだけなんだから」

「なるほど!じゃあ遠くから起爆すればよくね、ってことだね!」

「……いやよくねぇけど、おめぇさんはそれで良さそうだからもうそれでいいわ」

 

 

 なんだこいつ、という内心の呆れを隠そうともせず、ROUTEはそう溢す。

 

 しかしてそれも仕方のない話。

 噛まれるのはヤバイとはいえ、そもそも噛み付かれる前に沈黙させられるギャル子からしてみれば、ゾンビなど雑兵の群れどころか雑草を刈るのに等しいくらいの脅威度だが。

 それでも、万が一があるのなら慎重にことを運ぶくらいの理性はある。

 

 結果、拳を振り抜いた際の拳圧でゾンビを吹っ飛ばす……などという一人だけ世界観がおかしい行為をし始めたのだから、思わずROUTEが咥えた煙草を取り落とすのも無理はない話なのだ。

 

 ……それはそれとして、話を戻すと。

 ここにいるゾンビ達は迎撃用である、ということは既に述べたところ。

 それが意味するのは、このゾンビ達は意外と()()()()()ということ。

 雑に言い換えると、全部が全部同じシステムで動いていない、ということになる。

 

 そもゾンビだけではなくキョンシーが混じってたりする時点で気付くべきではあるが、彼らは一つの技術体系のみで構成された集団ではないわけで。

 AUTO辺りは「メンテナンスの複雑化」を嘆き、TASならば「多様性の確保」を喜ぶであろうそれは、この場においては日本被れの耐性を貫く可能性として処理される。

 

 

「聞いたところによれば、アイツの不死性は超回復の類いだそうだが……それならつまり、宿主を保持するタイプのウイルスとは相性が悪い、ってことになるよな?」

「やどぬしをほじ???」

「共生しようとするタイプってことだ。宿主に害を与えるんじゃなく、宿主に益を与えようとするような系統、ってこったな」

 

 

 一口に不死、といっても色んなパターンが存在する。

 日本被れのように『驚異的な回復速度によりダメージが実質無意味になる』タイプ。

 ゾンビのような『死体が動いているためにそれ以上死なない』というタイプ。

 そして、『体内の菌やウイルスが宿主を死なないように保持する』タイプ。……他にも色々パターンはあるが、今ここで気にすべきなのはこの三つくらいだろう。

 

 日本被れにとって危険なのは、三つ目のもの。

 ゾンビの体内にあるウイルスがゾンビを動かしている、というこのパターンは、単純なゾンビとはまた違うパターンの存在だと言えるだろう。

 

 

「肉体の不死性が外から与えられているってパターンになるわけだが、こいつは自身の回復力を高めるタイプとは食い合わせが悪い。目的とやってることが類似しているせいで、互いの効果が打ち消しあったり必要以上に高めあったり、とにかくろくなことにならねぇわけだ。……で、今回の場合だと噛まれたアイツは暫く自身の肉体の主導権を失う」

 

 

 超回復が体内の毒素を消すような効果も含むのなら、そのうち意識も戻ってくるだろうが……その前にウイルスを一旦すり抜けさせちまうのは間違いないだろう、とはROUTEの言。

 未来視持ちの断言は効果覿面であり、その結果日本被れは情けなくゾンビから逃げ回る羽目になった、というわけなのである。

 

 

「ぅーん、せめて全部そのタイプかそぅじゃなぃか、って感じだったら楽だったのにねぇ?」

「メンテの楽さより突破されにくさを選んだんだろうから、その辺りは向こうの思い通りってやつだな」

「めんどくさーぃ☆」

「それは違ぇねぇ」

 

 

 なお、こうして忠言だけ投げているROUTEはちゃっかり狙われないように未来を操作している……ということに日本被れが気付くまで、この無意味な追いかけっこは続くのであった……。

 

 

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