「皆さん遅いですねぇ」
「TASさんが思わず興が乗ってしまって遊んでいる、というのはわかりますが他の方はどうなのでしょうねぇ」
「あ、お茶どうもですぅ」
(なんでこの空気感の中、平気な顔でサンドイッチ食べてるんだろうこの人……っす)
再び視点は変わって山頂。
見張らしは良いもののなんとなくおどろおどろしい空気感の漂うそこには、現在シートを敷いた上に料理を並べたDM達の姿がある。
そこでは更に、ダミ子がぱくぱくとサンドイッチを食べ続ける姿も展開されていたのだが……その隣、紙コップに入ったオレンジシュースとサンドイッチを持たされた同人に関しては、渋い顔をして固まるばかりなのであった。
無論、そんな姿を晒していれば皆のお母さん()であるDMが気を回さないわけもなく。
「どうされました同人様?何か苦手な具材でも?」
「強いて言えばこの空気感が苦手っすね」
「はい?」
「いえなんでも」
思わず、とばかりに彼女が心配そうな声を掛ければ、同人は小さな声で何事かを呟いたのち、別に何もと言葉を濁したのであった。
……それもそのはず、彼女はとある組織の影の支配者。そして、その組織が秘密裏に進めていたのが。
(我らが邪神様の再臨……だったはずなんすけどねぇ)
思わずはぁ、とため息を吐いてしまうのも無理もない。
どうにも目の前の彼女達(DM&スタンド)は、自身が追い求めていた邪神と同一の存在であるとのこと。
……厳密には周回で増えたバグみたいなもの(※TAS談)らしいが、それがこの世界に封印されているはずの邪神に影響を及ぼさない、なんて楽観はできやしない。
ほぼほぼ確実に、何かしらの変質を起こしていることだろう。
いや、変質ならまだマシで、もしかしたら目覚めさせた途端新たなパーティメンバー(※TAS談)が増えるだけ、みたいな話になる可能性も……。
「流石にそれは私のキャパを越えてるっす」
「はい?ええと、お気に召しませんでしたか……?」
「よくよく考えたらなんすかそれ???」
思わず声が漏れ、それに反応したDMが眉根を下げながら申し訳無さそうにこちらに視線を向けてくる。
一瞬この人にこんな顔をさせるのはよくない、と同人の心に動揺が走ったが、それと同時彼女の右手を視界に入れたことでそんな感情は吹き飛んだ。
何故か?それは勿論、右手にDMが持ったもの──山盛りの食事が積まれたどんぶりを目にしたからに他ならない。
栄養バランスに一家言のある彼女が選んで盛り付けたそれは、なるほどその威容に一瞬圧倒されるも、同時に空腹中枢を刺激し自身に食への探求心を誘発するものでもある。
だがそれゆえに、なんでこんなものを作ってるので?……みたいな疑問を誘発するモノでもあるわけで。
「ええとですね、TASさんから聞きまして」
「……何を、っすか?」
「同人様は意外と健啖家である、と。流石にダミ子様ほどの暴飲暴食ではないようですが、見ていて気持ちのいい食べっぷりであるとか」
(あんにゃろー!!?)
無論、TASの適当な助言である。
同人は特別食が太いわけでもなければ細いわけでもない、平均的女学生程度の食欲しか持ち合わせぬ乙女である。
というか、DMの後ろで気にせず食事を続けるダミ子の姿を見れば、誰しも食が細いと断言されるレベルだろう。
「なんだかよくわかりませんがぁ、大食いならお任せあれですぅ♪」
「見りゃわかるっつーか、今アンタに構ってる暇はないんで黙ってて貰えるっすか?」
「辛辣ぅ!?」
いいですよいいですよぅ、どうせ私は豚ですよぅ……などと涙目になりながら、それでも食べることを止めない彼女の姿に、思わず舌打ちをしたくなった同人であった。(主に彼女の一部に視線を向けつつ)
……彼女と同人は何度か風呂で鉢合わせることもあったのだが、下着を付けている状態と付けてない状態の余りの差に思わず詰め寄り、ダミ子をびびらせたことがあったりする。
なんというかこう、アニメとかでないと見ないような非現実的プロポーションを目の前にすれば、誰だってそうなるでしょ……みたいなナレーションが脳内を過るレベル、というか。
そんなある種の汚点はともかく、今は目の前の
食べて頂けないんですか、とほんのり涙目でこちらを見てくるDMの姿に、同人の良心が呵責を起こす。
この顔を見せられて、自分は料理を断れるのか?
そもそもこの人私が追い求める邪神様(の、同位体)だぞ、その頼みを断るとか斬首案件では?
いやでもこの人同じってだけで邪神様そのものではないし……。
みたいな思考が脳内を駆け巡る中、ふと視線を彼女の背後に移し。
(素直に食べておいた方が後腐れがないぞ。というか下手に断ると後が怖いぞ)
「……アッ,ジャアイタダキマスネェー」
「そうですか?お口に合うと良いのですが」
「アハハハダイジョウブデススキキライハナイノデー」
背後にいた、スタンドの口パク──そこから読み取れる言葉に背筋の震えを覚えた彼女は、片言になりながら進められた料理を口に運び続けたのであった。
──なお、後日体重計に乗った時に彼女は憤死した。