「……そういえばさっき、なにか聞き捨てならない台詞が聞こえたような気がするんっすけど……残機is何?」
「おおっと、聞き逃してなかったか……」
そうして息を整え休憩する中、同人ちゃんが近付いてきてジトッとした眼差しを向けてきたのである。……うーん地獄耳。
とはいえ別に隠すような話でもないので、軽く説明することに。
ここでいう残機とは
「……残りの機体、という意味ではなく?」
「ある意味似たようなもんでしょ、虚実肉心問わず致死の運命を回避させてくれるってんだから」
「……あ、そういうやつっすか?」
──それ先生いつも使ってるやつでは?
──いや、内容的に微妙に違うが?
……的なやり取りを挟みつつ、改めて説明すると。
ここでいう残機とは、いわゆる致命的な状況に陥った際にTASさんが助けてくれる権利、みたいなものを指す言葉である。
間違っても
「……一応尋ねておくっすけど、その二つは何が違うんっすか?」
「雑に言うと、相手に対する扱いの丁寧さが上がる」
「あつかいのていねいさ」
「……なんで棒読みで聞き返したのかは知らんけど、そうだよ」
例えば今にも崖から落ちそうになっているとして、通常の『助ける』ならば普通に崖から引き戻してくれるわけだが。
これが『TASける』の場合、逆に突き落とされる可能性がとても高いのだ。
「なんでっすか!?」
「『TASける』の本質は、
「徹頭徹尾自分のためにしか利用してねぇ!っす!」
最初からそう言ってるじゃん……。
あとはまぁ、「TASけてやった」って感じに普通に見殺しにするパターンもなくはない。……辛く苦しいこの世から、的なやつである。
とはいえ、これについては余程アレな相手にしか発生しないようにしているらしいので、実際にこの目で見たことはないのだが。
なので、あくまで彼女の持つ選択肢の内に含まれているということを知ってるだけ、という話になる。
「……そうなんっすか?」
「昔からTASさんを知ってるならわかりやすいんだけど、速度最優先と言いつつわりと人命を軽視しないんだよね、うちのTASさんって。……まぁ、その辺りを詳しく聞いたら『人生はクソゲーなので仕方ない』って返ってきたんだけど」
「はい?」
あれだ、未来視特有の観点というか。
ゲームならスタートと終わりまでの間隔はとても短いが、人生の場合だとその終始点はそれより遥かに長くなる。
さらに当人の視点が数十年後・数百年後にまで及ぶのであれば、些細な選択が大きく道筋を歪めることも身に沁みていることだろう。
その結果、無駄死に扱いになってしまうものが増えに増える、というか……。
それらの問題とか感覚とか全部纏めて『人生はクソゲー』に収まるというのだから、なんというか世の無情を感じる次第である。
それはさておき、残機云々の話に戻ると。
これは、TASさんの用事のついでにTASけてくれるのではなく、しっかりと相手の事情を慮った上で助けてくれる権利、ということになる。
普段の俺に関しては、基本TASさんの用事のついでに助けられている感じであるため、ここで得られる残機とはまた別である……というわけだ。
「……そうなんっすか?」
「そうなんです。因みに普通の『助ける』だと扱いがお姫様に対するものみたいになるぞ」
「それはそれでなんか違和感が酷そうっすね……」
その発言は、内容如何によっては後からTASさんの『おはなし』があるやつだぞ、と一応ツッコミつつ。
ともあれ、残機についての解説が終わったと同時、ほんのり香ってくるのは次の襲撃のフラグである。
襲撃の匂いってなんっすか、とツッコんでくる同人ちゃんをスルーしつつ、壁に立て掛けていたアサルトライフルを握り直す俺。
「よぉし、第二ラウンドも過激に派手に決めるぜ!!」
「わーぱちぱち」
(……あっ、また先生が変なテンションになったっす)
そして気持ちを切り替え、これからやって来る下手人を全て撃退する、という決意に心を燃やす。燃やさないとやってられない()
……そうしている内に同人ちゃんがまた微妙な顔をしていたため、今回は彼女をこき使ってやろうと密かに決心する俺なのであった。
なんか不思議そうな顔で震えてたけど、御愁傷様です。