「あんなのがあるなら、端っから私たち別にいらなくないっすか?!」
「あれはあくまでも夢なのと、今TASさんがいるところだけを範囲にしてるものだからね。直接触れないならなんとでもなっちゃうんだよ」
というか、その辺りのあれこれが既に周囲に知られてるからこそ、みんなああして突撃して来てるわけで。
……と返せば、同人ちゃんはなんとも納得のいってないような顔で、ぶーぶーと文句を繰り返していたのであった。
そんな彼女はともかくとして(『後回しにするなっすー!』と怒っていた)、改めて読書家ちゃんの様子を確認。
襲撃者の波が引いたため、現在休憩中の彼女だが……一応、先ほどよりかは体調も元に戻っている様子。
とはいえ余談を許さない()のは変わらず、第三波に耐えられるかはなんとも言えないところ、といった感じだろうか。
「え、第三波あるの?」
「あるよ、なんなら多分第五波くらいまであるよ」
「……労働状況の改善を要求する」
「えー?」
なんだなんだだらしないなぁ、これくらいならCHEATちゃんだって片手間にこなして見せるぜー?
……的な意味を込めて視線を向けてみたが、返ってきたのは寧ろ何言ってるんだこいつ、みたいな眼差しだった。
これあれだな、暗にふざけんなとか思われてるやつだな?
おかしいな、別にふざけてるわけじゃなく純然たる事実なんだが……。
そんな俺の思考を読んだのか、読書家ちゃんの視線がジトッとしたものに変化していく。
流石に睨まれるのは勘弁願いたいのだが、とはいえ襲撃者達が加減してくれるかは別だしなぁ……。
「……仕方ない、無い袖は振れないし、呼ぶか」
「呼ぶかって、誰をっすか?」
「そりゃ勿論、この状況を打開できる人だよ」
仕方がないので、呼ぶつもりのなかった助っ人に連絡を取ることに。
表面上のスペックだけで判断すると痛い目を見るぞ、という教訓として今回のことを胸に刻みつつ、携帯を操作して該当の人物に連絡。
電話向こうの当人は暫く難色を示していたが、こちらからの交換条件を聞いたのちにそれを翻しすぐにこちらに来る、と告げてきたのだった。
で、数分後。
「呼ばれたから手伝いに来たぞー」
「……なんだ、CHEATちゃんじゃないっすか。頼りになるんっすか?」
「露骨に甘く見られてるぅー」
読書部の門を叩き、中に入ってきたのはみんなご存じCHEATちゃん。
その姿を確認した同人ちゃんは、露骨に微妙な顔をしていたが……その後ろで読書家ちゃんだけ安堵したように胸を撫で下ろしていたのだった。
……こんなところでも認識の差を感じさせられるというか?
なお、軽んじられた当のCHEATちゃんだが、気にした様子もなくへらへらと笑っていた。
……いたのだが、よくよく見ると目が笑ってねぇ。
うっすら開いた瞳が、同人ちゃんをじっと見つめているモノだからひっ、って声を漏らしそうになったでござる。
……と、ともかく。
やる気十分なのはいいことだ、と震えながら頷く俺である。
そうこうしているうちに第三波がやって来て、なし崩し的に防衛戦が始まったのだけれど……。
「ヒャッハー!!キブンソウカイゲンキハツラツワタシサイキョー!!シニタイヤツカラカカッテキナヘイヘイヘーイ!!」
「ぬおおおおおっ!?なんだこれは!?」
「オールレンジ攻撃だとぉっ!?」
「ホラホラオドレオドレブザマニオドレェ!!ワタシノシキニテシヌマデオドレェ!!」
「ぐわああああああっ!!?」
「……え、誰あれ」
「CHEATちゃんですがなにか?」
「いやそうじゃなくてっすよ!?あの大人しいロリっ子でしかなかったCHEATちゃんは!?」
「大人しいやつがキレたらヤバイとかよくある話やんけ」
「いやそれはそうっすけどぉ!?」
まぁうん、気持ちはわからないでもない。
最近のCHEATちゃん、あんまりあの状態になんないからねぇ。見たことなければ困惑するのも仕方ない、というか。
そんなわけで、久方ぶりの
イキッてるけどそんじょそこらのやつに落とせるような相手じゃない、ってのが中々厄介なところ。
「ホラホラドクショカァモットガンバレガンバレ♡ソンナンジャサイショハヨクテモアトカラシンドイゾー♡」
「ぬぐぅ、何も言い返せない……」
「ヒャーハハハチョーサイコー!!」
「うーん、未だかつて無いほどに有頂天になっている……」
引きずり落される気配がないからってちょっと調子に乗りすぎではないだろうか?
いやまぁ、目の上のたん瘤であるTASさんは現在絶不調だし。
それを助けるような立場になっている現状が、彼女にとっての楽園のようなもの……と言われればあの反応も無理もない、って話になるのはわかるんだけども。
(なんというかこう、後から酷いことになりそうな予感がするんだよなぁ……)
「ヒャーハハハワガヨノハルガキタァー!!」
狂ったような笑い声をあげるCHEATちゃんの様子に、一抹の不安を抱かざるを得ない俺なのであった……。