うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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日常変われど日陰は

 一日に二度死にかけるやつがあるか、というツッコミを送りたくなるような日から早数日。

 

 唐突に知り合いになった保険医は煙のように消えることもなく、変わらず保健室で煙草の煙を燻らせている。

 いや、仮にも保険医が煙草吸ってんじゃねぇよ……と思わなくもないが、そこをツッコむためだけにまたあそこに行くのもなぁ、というか。

 

 ……結果としてROUTEさんの溜まり場が一つ増えたが、それに関しては特に問題はない。

 俺の代わりに保険医の毒牙に掛かってくれるなら、こちらとしてはこれ以上喜ばしいこともない……みたいな気分になる程度の話だ。

 

 

「毒牙とは酷いなぁ。同じあの子の保護者枠同士、仲良くしようぜー」

「いやですよ、そんなこと言って俺をおもちゃにしたいだけでしょ!?」

「そうでもあるけど?」

そこは否定してくれよぉ!!

(……煙草吸ってる時は一切喋ってなくてよかった)

 

 

 ……え?実際のやり取りを見てると、まったく身代わりに出来てないって?うるせーほっとけ。

 

 まぁともかく、新しい面子も加えつつ穏やかに過ぎていく日々。

 そんな日々の延長でしかないはずの、週末日曜日。

 

 

「今日は秘密結社壊滅RTAに挑みたいと思う」<フンス

「なんで???(真顔)」

 

 

 ──御覧の通り、TASさんの暴れたいメーターが振りきれてしまったのであった。どうしてこうなった?

 

 いやまぁ、理由はわかっているのだ。

 前回の非TAS化から早何ヵ月、その間派手に暴れる機会が一切無かったからだ、というのは。

 ……最後の最後に大暴れしてただろうって?

 あんなんでTASさんが満足するわけないじゃないですか……。(白目)

 

 そういうわけで、思いっきりTASとして大暴れしたい欲、略して『OTO』の限度を迎えたTASさんは、こうして休みの俺を引っ張りだして先程の言葉を告げてきた、というわけなのである。

 

 

「あれぇ~?もしかしてこれ私、直接死刑宣告されてるぅ~???」

「一緒に連れ出された同人ちゃんが酷いことになってる!?」

「ふ、ふふふ。そっかー今日が私の命日かー。いい人生……とはちょっと断言できないけど、それでもまぁ悪くはない人生だったんじゃないかなぁ~……???」

 

 

 なお、一緒に引きずられてきた同人ちゃんは、御覧の有り様である。

 ……そういやなんか秘密の組織的なもののボスっぽいって話だったな、この子。

 で、さっきのTASさんの宣言を一種の死刑宣告として受け取った、と。

 

 まぁうん、そう聞こえてもおかしくはない、というか?

 実際これからTASさんがやるのは、俺達を引き連れての組織壊滅作戦であろう。

 

 基本的には囮として重用されてる感じだが、場合によっては次代のRTAさんとしてやっていくことを期待されて、組織壊滅一人でできるもん!()みたいなことやらされる可能性もないではない。

 その場合、自分の組織を自分で滅亡させられるという酷い尊厳破壊が待っているわけで……そりゃまぁ、絶望して膝を付くのもわからないでもない。

 

 

「だがね同人ちゃん。流石にそれはTASさんを甘く見すぎだよ」

「……先生?」

「何度も言うように、別にTASさんは無駄に被害を増やしたいわけじゃない。最適最善を選んだ結果として、根こそぎ滅ぼした方がいいやつには容赦しないってだけなんだ」

「すみませんそれ慰めのつもりで言ってるなら別効果っす」

 

 

 だがしかし、だがしかしである。

 その考えは甘いというのは、先刻も同じように告げたはず。

 となれば、彼女の考えはチョコのように甘いと言わざるをえまい。

 いやなんなら世界で一番甘いとされるラグドゥームという人工甘味料並に甘いというか。

 

 

「……ちなみにそれ、どれくらい甘いんっすか?」

「まだ実用化されてないみたいだけど、単純計測で砂糖の三十万倍甘いらしいよ?」

「桁間違ってません???」

 

 

 それと比べられるくらいに今の同人ちゃんの考えは甘いと……え?ツッコんでるのはそこじゃない?

 

 まぁともかく、考えが甘い・ないし足りてないと俺が考えていることは事実。

 それが何故なのかを証明するため、俺はある事実を彼女に伝えることにしたのだった。

 

 

「な、なんすかいきなり……一体何を伝え」

「ないよ」

「……はい?」

「ないよ、もう。同人ちゃんの組織」

「ゑ」

「具体的には前回のTASさん大爆発の時、流れで、プチっと」

「     」

 

 

 ぎぎぎぎぎ、と軋む音がしそうな動きでTASさんの方を見る同人ちゃん。

 嘘だと言ってよ、とでも言いたげな彼女の様子を見たTASさんは、同人ちゃんを安心させるかのように柔らかな笑みを浮かべて……。

 

 

「──うん、お兄さんの言う通り。貴方の組織は(私のところの会社が吸収合併したから)もうない」

あーっ!あーっ!!あ゛ーっ!!!

 

 

 重要なところを隠したまま、彼女の泣き叫ぶ姿を見たいがためだけに、わっるい顔で彼女はそう告げたのだった。

 ……うん、なんかこう……TASさんって同人ちゃんに対しては、なんかドSだよね……。

 

 

「面白いから」<フンス

「ひでぇ」

 

 

 

 

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