はてさて、コンプラ的に危ない話をし続けるのはごめんだ、とばかりにTASさんの制止を振り切って突撃していった同人ちゃん。
慌ててその背を追い掛けた俺達が、たどり着いた先で見たのは!
「シネッ!シネッ!!シンデシマエ!!モシクハシナナクテモイイカラサッサトホロビロ!!デナイトイロイロトヤベーンダヨマジデッ!!!!」
「ぎゃああああああああっ!!!?」
「oh……」
そこらの構成員を取っ捕まえ、腹部に執拗な打撃を加え続ける同人ちゃんの姿なのであった。やだ、意外と肉体言語……。
というか、意外と強いな同人ちゃん。この間は肉体労働は専門外、みたいなこと言ってたと思うのだが。
あれかな、火事場の馬鹿力ってやつかな?()
「なるほど、同人も私の同族だった」
「……ん?今聞き捨てならない台詞が飛んできたような?」
「そう?そこまで変なことは言ってないと思うけど。私も基本的に火事場の馬鹿力みたいなものだし」
「常時火事場の馬鹿力は最早火事場でもなんでもないんよ」
そんなことを言っていたら、隣のTASさんから聞き流してはいけない台詞が。
なんでも、彼女の無茶苦茶な動きを支える原動力は、そのほとんどが意識的に脳のリミッターを外すことによるモノであるのだとか。
それ反動ヤバくないっていうか、原則危機的状況において命だけは守るために発動するものみたいね扱いだから、普段使いすることなんて想定されてなくね?
……みたいなツッコミが脳裏を過ったが、そこは天下のTASさん、その辺りの問題は折り込み済みだそうで。
「そういう反動は全部攻撃とかに乗せて発散してるから問題ない」
「想像以上に意味のわからん答えが返ってきた()」
例えば骨が折れるにしても、何も勝手に折れるわけではない。
それは骨の一部に異常な負荷が掛かった結果発生するモノであり、極論その負荷をなんとかして発散させられればどれだけ無茶をしても骨は折れないわけだ。
とはいえ、仮にそれが本当だとしても実際に回避することは難しい。
人は自分の体の中を事細かに知ることは(外部の力を借りない限り)不可能であり、それゆえ内部で起きていることを知っている、という前提を必要とするような回避法を実践することは不可能に等しい。
「それを未来視でカバーする。ここまですれば折れる、それをこうすれば折れない……そういう道筋は全部わかる」
「うーん、なんかものすごく胡乱なことを言われている予感」
まさに「それができれば苦労しない」系のあれというか?
……ともあれそれくらいできなければTASは名乗れない、というのも間違いなく。
ゆえに彼女は、自分を壊すような反動すら全て外に発散することで火事場の馬鹿力を常時運用する、という無理無謀な難題を解決するに当たったのであった。
「なおそんなものない同人ちゃんの残り活動時間」
「そろそろ拳が痛いって踞る時間」
「腕が痛い……」
「言わんこっちゃねぇ」
いやまぁ、あの時はああして話を逸らすしかなかったのも確かなんだけどね?
そういう意味では名誉の負傷ってことになるのかなぁ……なんて思いつつ、構成員達を殴り飛ばして拳を痛めた同人ちゃんに駆け寄る俺なのであった。
「なんだ貴様達、我らが正当なる彼のお方の後継者であると知っての狼藉か?」
「ヌォワー!!?ソノママネテロバカー!!」
「へぶぅ!?」
うーん、最後まで危ない組織であった……。
恐らくそのまま見てたら確実によくない名前を出していたであろう、この組織のボスらしき相手に突撃・直撃・一撃必殺をぶちかました同人ちゃん。
拳に散った赤い点々は勝利の証、とでも言えばよいのか。
まぁ、また無茶したので殴り抜いたあと思いっきり踞ってたんですけどね。
「痛めた方の腕を使わなかったことは褒める。仮に使ってたら全治三ヶ月だった」
「そ、それは良かった……っす」
褒める言葉を吐くTASさんと、それを涙目で受け取る同人ちゃん。
絵面だけ見ると感動のシーンっぽいが、その実態はなんともあれである。
まぁともかく、首領らしき相手を殴り飛ばした以上、この組織ももう終わりだろう。
まだ一つ目、というところに今日の長さを実感せざるを得ないが、ともあれ幸先のよいスタートを切れたと喜んで……。
「……なんだ?」
「ゆ、ゆゆゆ揺れてるっす?!」
「ふ、ふふふふ……我を打倒して安堵するとは片腹痛いわ……!」
「な、何をしたんすかおまえー!!?」
「知れたこと……我らがフューラーは再誕す……ん?」
「フュの言葉が聞こえた時点で走って行ったよ」
「なんと」
「あ、今出てこようとしてた霊体を殴り飛ばした」
「なんと」
いたところに、唐突に襲い来る揺れ。
思わず動揺する俺達に、倒れ伏していた首領が語ったのは、彼等の悲願の成就……だったのだけれど。
そんなもの成就されてたまるか、と泡を食った同人ちゃんが再びの火事場力でその悲願とやらに突撃し、それを未然に阻止したことをTASさん経由で伝えられた首領はポカンとした顔を浮かべていたのだった。