うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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正しい努力と重ね方

「で、結局間違ってたって、なにが間違ってたんだ?」

「……私の能力が、DJ AUTOに例えられるモノだというのはご存知ですわね?」

 

 

 テンションの乱高下の激しかったAUTOさんを連れ、近くの喫茶店に入った俺達。

 そこで一息入れた彼女は、先程の言葉でなにを悟ったのかを、俺達に向かってぽつぽつと話し始めたのだった。

 

 

「凄まじく端的に言ってしまいますと……処理落ち、ですわね」

「しょりおち」

「……今、そこまで俗な話にしなくとも、と思われましたわね?ああいえ否定なさらなくても結構です。実際自分でもどうかなー、とは思いましたが、子細に説明するとややこしくなるのが目に見えていましたので」

 

 

 などと言いながら、なにやら小難しいことをぶつぶつ呟く彼女。……辛うじて並列演譜だのなんだの言ってるのが聞こえたが、意味は不明である。

 ……ともかく、実際には色々起こった結果が彼女の「必ずミスする」状態、ということであり。

 それを簡潔に説明するのなら、一部分への処理が重なりすぎてエラーを起こした……という、機械の処理落ちに準えるのが一番わかりやすい、ということになるらしい。

 

 じゃあ、次に問題になってくるのは、なんで処理落ちが発生してしまうくらいに処理を重ねてしまったのか、ということになるのだけれど……。

 

 

「……どこまでできるのか、ってことの確認?」

「始まりは、そうですわね」

 

 

 自分に突然生えたこの能力が、一体どれくらいのことができるものなのか?……という、確認のために始めたのが切っ掛けだ、と彼女は気不味げに声をあげるのだった。

 

 

 

・∀・

 

 

 

 AUTO──自動と言うように、彼女のそれは努力や積み重ねと言うものを一切考慮しない、至って平均的で機械的な能力である。

 

 

「一応、私の基礎スペックが低ければ、例えお手本通りに動けたとしても、そのあと体を痛めたりすることはあるみたいですけど」

 

 

 ……とはAUTOさんの言。

 どうやら彼女がAUTOさんになった辺りで、その辺の失敗は一通り経験済みらしい。

 

 セオリー……お手本や定石があるようなスポーツやゲームをやると、例えそれが彼女の身体能力的に無理のある動きでも、それが最善である限りは必ずその動きを再現できる。

 実際には、それらを実際にやっている最中に、頭の中に最善の動きが浮かび上がり、次の瞬間体がその動きをトレースし始める、みたいな感じらしい。

 ただ、体がまだ出来ていないうちは、その動きに付いていくことで体がバキバキになることも茶飯事だった、とも言っていたが。

 ……モノによってはそのまま死んでたかもしれない、などと笑いながら言われても、こちらとしては話に乗り辛いわけなのだがどうしろと?

 

 

「は、ははは……そうやって笑い話にする、ってことは、今のアンタはそれを上手く乗りこなしてるってことだよな?」

「十全に、とは参りませんけどね。そもそもの話、だからこそ今回のミスに繋がるのですし」

「……ん?どゆこと?」

 

 

 空笑いするCHEATちゃんに対し、ため息を吐きながらAUTOさんが語ったところによると。

 

 この能力が目覚めたばかりの頃、彼女はそれを自動系の能力だとは思っておらず、『なんでもできる道を示す能力』だと思っていたのだそうだ。

 なんでもできるというわけではなく。あくまでもそこに至る道筋を教える能力。

 体が付いていかずに怪我をすることがある以上、言うほど万能でも全能でもないと気付いていた彼女は、次第に能力に見合う人間になろう、という風に志すようになっていく。

 

 

「幸い、言動などにも道を示してくれたものですから。その時の私は、これを『正道を歩ませようとする』ものだと思っていたのです」

「……ん、んんー。間違いでもないような、そうでもないような……」

 

 

 まぁ確かに、お手本を見せるモノなのだから、正道を教えてくれるモノだとも言えなくもないような、違うような……。

 どうにも納得しかねる言葉だが、一先ず脇に置いて。

 

 ともあれ、彼女が淑女として自身を磨き始めた、ということは事実。

 ──だからこそ、彼女はその概念に触れることとなる。

 

 

「守破離、という言葉をご存知ですか?」

「あー……武道とか華道とかで聞くやつ、だっけ?」

「そうです。──師の教えを守ることで基礎を覚え。師の教えを破ることで新たな可能性を見出だし。そして、師の教えから離れ、自身の新しい道を創造する。──そう、私は教えを破りたいと、そう思ったのです」

「……なるほど?」

 

 

 ある時、彼女は今まで能力を使ったあとにやってくるはずの痛みが、全くと言っていいほどなくなっていることに気が付いた。

 そう、彼女はその能力に見合う肉体を、手に入れることに成功していたのである。

 

 そうなってくると、問題となるのが『じゃあこれからどうするのか』ということ。……力に見合う体を作れたということは、現状最早鍛練の必要はなくなった、ということ。

 とはいえ、模範となることを誓って鍛えたこの体、今さら怠惰に沈めるも能わず。

 さてどうしたことか、と彼女が答えを探して歩く最中に出会ったのが、なにを隠そう『守破離』という考え方だったのである。

 

 

「これもまた、『そうすることを良しとする』もの。すなわち規範です。ならば、私が目指すモノも、次は『破ること』だと悟ったのです」

「……その結果が、あれ?」

「……言わないでくださいまし、今となっては黒歴史のようなものなのですから」

 

 

 ……まぁ、生真面目な人が自分の殻を破ろうとすると、変なことになるってのはある意味()()()、と言うべきか。

 ほんのり顔を赤くする彼女の姿に、俺とCHEATちゃんは顔を見合わせながら、小さく苦笑を浮かべることとなるのだった。

 

 

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