大漁の動物達が、移動用の車両に乗せられて去っていくのを見送ること暫し。
最後まで残っていた件のライオンと、俺の手を甘がみして血を噴出させた狼の二匹がいよいよここから去る……というのを最後に見送って終わり、だと思っていたのだけれど。
『……てこでも動きませんね』
『こっちに攻撃してこないだけまだマシ、なのかもしれない』
『うーん……』
「……ねぇ、なんで二人は俺のことを眺めてるの?なんでこの子ら引き剥がしてくれないの?」
何故か俺のそばを離れようとしない二匹を前に、二人は難しい顔をしていたのだった。
……いや、それどういう感情の顔色……?
というか、狼にしろライオンにしろ元の場所に早急に戻さないとヤバい類いの生き物だと思うのだが、こんな悠長にしてていいのだろうか?
……え?他の動物は早急に送り届けてたのを今お前も見てただろうって?
まぁ、象とかサイとかカバとかキリンとかだけに留まらず、クジラやイルカ・シャチに鷹にオウムにダチョウに……って感じで、他の動物達も節操なくとにかく集めたって感じの状態だったことを思えば、それらが早々に元の場所に送り返されていったのは確かな話なんだけども。
「だからこそ、君達が最後まで残ってるのがよくわからないんだよなぁ」
『がう?』
『ウォンッ』
こっちの言葉を理解しているのか、不思議そうに首を傾げる二匹である。……さては滅茶苦茶賢いなこいつら?
それだけ賢いのだから、自分達の本来居るべき場所に早々に帰るべき、ってのもわかってくれるはずなのだが……なんか知らんが座ったままで動こうとしないんだよなぁ。
狼の方は、流石に甘がみは止めてくれたけど、代わりに全く移動する気配がなくなっちゃったし。
ライオンの方は完全にリラックスしていて、お前どこのイエネコだよみたいな状態になってるし。
「イエネコ……なるほどイエネコ。その手があった」
「んん?」
『これから一つ、無理難題を投げるけど──受けるつもりはある?』
『事と次第によりますが……ええと、恐らく結構な無茶になりますよ?』
『安心して。都合の悪い部分は基本アイツらのせいにしておくし、バレるようなへまはしないから』
『私がこうして見てるんですがそれは……いえまぁ、貴方に本気で暴れられたら困るのはこっちなので、そこら辺融通は効かせますけど』
……なんだろう、会話の内容はまったく理解できないけど、何やら不穏な話をしているような気配が。
思わず傍らの動物二匹に視線を向けてみるも、よくわかってないとばかりに首を傾げられるだけ。
味方のいない状況に放り出された俺は、事の成り行きに身を任せる他ないのであった……。
「ひ、酷い目にあったっす……まさか次の組織が世界を海の底に沈めようとするトチ狂った思想持ちだとは……なんすか人工降雨装置って……あれどっちかと言うと全自動海ひっくり返し機っすよ……」
「聞いてるだけで頭が痛くなってくるような話をするのやめない???」
「お、その声は先生?足の方はもう大丈夫……、…………???」
はてさて、同人ちゃんとの再会である。
……まぁ、時間にすると数十分程度しか経過してないので、別に感動とかは発生してないんだけども。
とはいえ、その数十分が濃ゆい展開だったのは彼女の一人言からも察せられるわけで。
……ツッコミの言葉的に、海の水を丸ごと浚って空から振り撒く、みたいな機械が用意されていたのだろうか?そりゃまぁ正気を疑うわ。
で、そうして文句を告げていた同人ちゃんはと言うと、俺の顔を見て一瞬『道連れが戻ってきた!』みたいな感じで喜色を浮かべたのだけれど。
そのまま視線が俺の下の方にスライドし、そこにあるものを視認したことで固まってしまった。
理解しがたいものを見た、と言いたいのが表情からよーく伝わってくる彼女の現状。
ではそれを成したのはなんなのか、ということになるのだけれど。
『に゛ゃ゛う゛』
「……ええと、その『なんとかごまかすために高めの声を出してみたものの、声帯の機能的にそんな声は出ないので唸り声寸前のものしかでなかった』みたいなお声は……」
「ねこです」
『に゛ゃ゛う゛っ゛』
「よろしくお願いします」
「嘘つけぇっ!!っす!!!」
現在俺は足を挫いており、そのままでは移動することはできない。
それゆえ移動を補助する何かが欲しい、ということになるのだけれど……それを買って出たというか、そのために雇われたというか……。
まぁともかく、そんな感じで俺の足役を務めることになったのが、現在俺が股がるこの
……猫にしてはでかすぎる?
いやいや、どっからどう見ても猫でしょこのフォルム、この顔。
ちょっと鳴き声が怖いけど、それ以外は実に猫らしい姿をして……。
「いや確かに見た目はイエネコっすけど!!大きさ!声もっすけど大きさが明らかにおかしい!!」
「何を言う、見てみろよこのちゃ○ちゅー○への食い付き!これが猫でなかったらなんだというのか!!」
「それ確かな大型の猫科にも普通に効くやつぅ!!!」
認められないとばかりに叫ぶ同人ちゃんに、俺はひっそり冷や汗を掻きつつも表面上は問題ないとばかりに首を振るのであった。