『ワンっ』
「おおっとすまんすまん、そういえばお前の紹介もあったなー、よしよし」
「……って、今度は犬?なんだこっちは普通の犬っぽいっす……って、んんん……???」
はてさて、巨大猫()に同人ちゃんがツッコミを入れる中、私も忘れちゃダメよとばかりに声をあげた動物が一匹。
こっちは普通の柴犬っぽい見た目の犬であり、自身へと注目を集めるために一度吠えたあとは、何やら誇らしげに胸を張りながら尻尾をぶんぶんと振り回している。
……うん、ここだけ見ると完全に犬だなこいつ。
だがしかし、同人ちゃんはその立ち居姿に微妙な違和感を感じ取ったようで。
てくてくと件の犬に近付いたあと、徐にその顔を両手でガシッ、と掴んだのであった。
『ヴォゥッ!!』
「はぎゃあっ!?」
『……わん』
……当然、野生動物にそんなことすれば怒られるのは当たり前の話。
件のお犬様()は突然自身に触ってきた同人ちゃんに本気の威嚇を飛ばし。
その後、思わず『しまった』とでも言いたげな感じで固まったのち、申し訳程度に小さく鳴いたのであった。
「……これも たんなるいぬじゃ ないでしょう ! っす!!」
「その申し訳程度の語尾もいらなくない?」
「だからこれはキャラ付けとかじゃないんっすよ!……ってそんなことはどうでもよくてっす!!」
ち、ごまかされなかったか。
とはいえこれに関して俺から言うことは何もない。ないったらない。
見た目が柴犬なのだから、例え纏う空気が野生のそれだとしても問題はないのだ。多分。
「問題っすよ!?っていうか普通に野生産だったとしても、病気やら何やらで大変なはずっすよね!?」
「やだ、同人ちゃんが正論で攻め立ててくる……」
「正論言われるような隙がある方が悪いんっすよー!!」
なんだろう、連続の組織壊滅作戦で心労が溜まってるのかな?()
とはいえ彼女が何を言おうと最早意味はない。
彼らの同道はもっと上の指示によって確約されているのだから……!
「もっと上?……ってはっ、まさかっす……!」
「そのまさか。狂犬病のワクチンとその他人獣共通感染症などなど、問題になりそうな話については既に検査済み。貴方は何も心配することはない」<キリッ
「げぇーっ!!?TASさん!?……っす!」
「君も頑なに自分を曲げないね?」
それはそんなに必要な属性なのかね?
……そこら辺はともかく、同人ちゃんの懸念全てに答えながら現れたのは我らがTASさん。
都合二人に別れたうち、技とスピードとテクニック担当の方である。
……え?じゃあもう片方はどうなのかって?そりゃ勿論パワーと反応速度と経験担当ですよ?
「なお別れた方の得意分野が苦手になったわけではない」<ドヤッ
「いやマジでどういう原理なんっすかこの人、なんか普段の三割増しくらいなパワーを発揮する癖に速度ほとんど変わってなかったんっすけど???」
「下がってたよ?一パーセントくらい」
「変換効率おかしくないっすか!?」
そこら辺はTASさんなので仕方ない、ってことで……。
「お、兄ちゃんお帰り……なにそのでっかい猫!?」
『に゛ゃ゛う゛』
「声も滅茶苦茶野太い!?」
はてさて、結局休みの日を一日丸ごと使ってTASさんの行動に付き合った俺達。
それゆえ帰るのは次の日になってしまったのだけれど……うん、翌日で済んでるだけマシだよなこれ。
そんな感想が思い浮かぶ最大の理由、日本まで連れ帰ることになった巨大猫の背に揺られながら、俺は寮の前で黄昏ていたのだった。
いやだって、ねぇ?
成り行きで連れ帰ってきたものの、この巨大猫の中身が中身である。
一応、TASさんが何やら仕込んでいるとかで、周囲に危害を加えることはない(これに関してはお犬様も同じ)らしいけど、とはいえそれとこれとは話が別。
こんな巨大猫が住宅街を歩いていれば、それはそれは目立つに決まっているのである。
見ろよ俺の背後、物珍しさゆえに見物人ぞろぞろだよ、このまま寮の庭に入るのは憚られ過ぎるんだよマジで。
「気にするとこそこなんっすか?」
「いやまぁ、猪君と気が合うかなぁ、みたいな心配もなくはないよ?それから寝床の準備とかも必要だし、飯とかどんぐらい食うんだろうなぁって気が気じゃないし」
「気にするべきとこ絶対そこじゃないんっすよねぇ!!」
『わふっ?』
『に゛ゃ゛ん゛?』
『ぶひー』
おおっと、噂をすれば影というやつか。
入り口でわちゃわちゃしていたせいか、物音を聞き付けて寝床から猪君が出て来ていた。
彼側は気質が穏やかなので問題はないだろうが、新入り二匹の方はどうだろうか?
『に゛ゃ゛ん゛♪』
『わふっ♪』
『ぶひー♪』
「……秒で打ち解けたね」
「なんだ、よかったー」
「ツッコミ所しかないんっすけど私をどうしたいんっすか一体???」
なんだよ同人ちゃん、血腥い野生の理に準拠すべきとか、そういうこと言っちゃうわけ?
流石はかつて邪神を信奉してたことだけはあるな!
……そこを突っつくのは流石に限度越えっすよね?
とガチギレした同人ちゃんにボコられる羽目になりましたが問題はないです、多分。