うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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間違った鍛練は誰かに指摘して貰いましょう

「なるほど。自分の能力がまさかAUTOだとは思ってなかったから、そこからさらに能力を発展させるための鍛練の一つだった、ってのはまぁ、わかったよ。……で?具体的にはあれ、どういう鍛練だったの?」

「ええと……元々は、少しやり方が違ったのですが……」

 

 

 聞くところによれば、彼女のあれは既にやり方が変わったモノなのだという。

 どういうことかと言えば、『体が付いていかないようなこと』こそ、今自分が挑むべきモノだと思っていた、というか。

 

 

「なるほど。今までもそうだったから、新しいことも同じように、ってこと」

「そうですわね。単純にやって『できないこと』がなくなった以上、次にやるべきなのは複雑にやって『できないこと』だと思いましたので」

 

 

 要するに、前提を増やそうとした、ということになるらしい。

 例えば、純粋にテニスをやっても最早負けることがなくなったため、敢えてアクロバティックな動きをすることを前提にし、新しく条件を増やした……みたいな。

 テニスの例で言うなら、『側転やバク転をしないとスマッシュを撃ってはいけない』、というような自分ルールを加えた、という感じ。

 

 無論、最初のうちは全然上手く行かないし相手からふざけているのかと怒られるし、散々だったらしいのだが……。

 

 

「それも始めて数日のこと。一週間も経てば、そういった無駄な行動を含めてもなお最善の行動ができるようになった、というわけなのです」

「えー……」

 

 

 その苦戦も短期間のこと、暫く経てばすっかりその行為にも慣れきってしまった、のだという。

 ……ここでの問題は、彼女がAUTOとしての能力を発展させたわけではなく、結局のところAUTOの能力の延長線上でしかなかった、ということになるのだろうか。

 

 

「っていうと?」

「そもそもの話、バク転や側転などの無駄な動作を交えている以上、『ルールに則った行動をすると(正道を歩ませる)』という点でずれているでしょう?」

「あー、場合によっては反則行為、みたいになりそうだね」

 

 

 CHEATちゃんの言う通り、こういったパフォーマンスはやり過ぎると反則になる、というスポーツも存在する。

 そこを考えると、当初彼女が思っていた『ルールに則った行動に補正が掛かる』というモノとは、どうにも乖離してしまっているように感じられる。

 ……それを彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と勘違いしていたわけで。

 

 

「この場合、正確に言うのなら恐らくは『パフォーマンスを含むテニス』の最適解ができるようになった、ということになるのでしょうね」

「そう、そういうこと。貴女のそれは、どこまでもお手本・最適解。だから、あれに関してはどうしようもなかった」

 

 

 認識を間違えていても、能力の方がわりと大概だったため、その認識を正す機会を奪っていた……みたいな感じか。

 それゆえ、彼女はその間違った努力を、今の今まで繰り返していた、というわけである。

 

 

「……あの太鼓の演奏に拘ったのは、長く練習しているにも関わらず、絶対に成功できないため。私はそれを、自身の中のルール付けが上手く行っていないから、だと思っていましたが……」

「正解は、貴女の意思に関係なく。単純に、ルールが増えすぎて処理落ちした」

「ですわよねぇ……」

 

 

 彼女の言葉に、はぁ、と肩を落とすAUTOさん。

 彼女のそれは、なにかしらの事象に対し、そのお手本となるようなものを再現するもの。

 

 その前提を知らなかった彼女は、『できないこと』こそやるべきことだと思っていたが……そうではない。

 そもそもの話、彼女には『できないこと』はない。前提が無茶苦茶なモノでなければ、どんなことでも『できる』人間である。

 今までできないことがあったのも、それは彼女の身体能力などが、それらの行為を完遂するのに見合っていなかったため。

 そして、今の彼女の能力は、おおよそできないことなどなにもないレベルにまで高められている。……じゃなければ、いつぞやかの『#♂∧∀∇』語が話せるようになる、みたいなことも起こり得ない。

 

 だから、今の彼女に、どうしてもできないことがあるとすれば──それは、前提条件を間違っているか、そもそも前提を加えすぎているか、そのどちらかしかないのである。

 

 

「……ええとつまり、太鼓の演奏にダンスを加えたら、一部の譜面で処理が過多になった……ってこと?」

「あの曲、連打が特に多いですからね。衆目を集めつつダンスを間違えず、などというのは欲張りに過ぎたというわけです」

「……見られてるのも条件だったんだ……」

 

 

 思わず唖然とするCHEATさんだが、実際このあと聴衆をゼロにして挑んだら普通に成功した、とのことで。

 恐らく、『アーケードなので見られるのも条件のうちだったのだろう』と話すAUTOさんの姿に、彼女は唖然を通り越してもうどうにでもなーれ、みたいな表情を浮かべていたのだった。

 

 

「……ところで、貴女はいつからここに?」

「昨日……もとい前話……もとい貴女達が喫茶店に入った時には。看板に偽りあり、って言われたらアレだし」

「わりと最初の方……」

 

 

 なお、聴衆が来ないように乱数調整してたのは、お察しの通りTASさんである。……向こうは五秒で片付けて来たってさ!怖っ!

 

 

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