うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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改めて確認してみよう

「そういえばさっきは曖昧なまま終わったけど、新聞部君って何か能力とかないの?」

「それは新聞関係以外で、ということであってますか?」

「うん」

 

 

 はてさて、改めて土いじりに従事し始めたところで、一緒になって土を弄っている新聞部君に改めて質問。

 さっきは有耶無耶になったが、そういえば彼が特別な部分というものを俺は知らないな?……と再認識したためである。

 ほら、俺の受け持ちになってる生徒って特殊な生徒、って前提だったし。

 

 一応、いつぞやかのデーモンコア(仮)対処試験の際、『風聞の流布』が能力である……みたいなことを述べてもいたが、そこら辺の子細もよくわからんし。

 とりあえず響きの部分でろくな能力じゃないな、とは認知したけども。

 

 

「ははは、酷いですね。単に相手のあることないこと周囲に広める、というだけなのに」

やっぱりろくな能力じゃねーじゃねぇか

「はははは」

 

 

 笑ってごまかしてんじゃねぇよ、まったく……。

 

 とはいえ、字面通りの能力だとするとパンチが足りない、というのも事実である。

 仮に周囲に風聞が浸透しやすくなる……みたいな効果があるとしても、それだけだと正直ここの面々に選ばれるには足りてない感があるというか?

 

 

「……やけに引っ張りますね」

「いやだって、ねぇ?正直な話それって『自分の言葉を周囲に信じ込ませる』能力、ってことじゃん?」

「ええまぁ、そのように解釈することもできますね」

「それTASさんで十分」

その人持ち出すと誰も勝てなくありませんか???

 

 

 いやまぁ、わかりやすさ重視でTASさんを例にあげたけど、自身の言葉を周囲に信じさせる、というだけなら別に能力は必要ないのだ。

 最悪DMさん辺りなら自然と周囲に話を信じさせられるだろうし、話し方さえ覚えればAUTOさんにだってできることだろう。

 社会的信用を話の信頼度と捉えるなら、そういう人間(何かしらの権威)に変身して話をする……みたいな形でMODさんにだって真似できるかもしれない。

 

 つまり、彼だけの個性と言い張るには少々微妙なのである。

 ……え?日本被れさんが俺と不死被りしてる?いや俺別に不死じゃないんで……TASさんのおかげで死ににくいだけなんで……。

 

 ともかく、他の面々と比べた時に『明確に彼だけの個性だと言える』ようなものを持ち合わせているように見えない、というのが今回の疑問点。

 隠しキャラゆえTASさんと同系統なROUTEさんや、本来バグみたいなもんであるスタンドさんを除くと、彼だけがその程度の差異で許される理由が見えてこない……みたいな感じの話なのである。

 

 

「随分ぼこぼこに言ってくれますね……」

「いやいや、ぼこぼこになんかしてないしてない。真意はその逆、()()()()()()()()?……って話だから」

「─────」

 

 

 そんな俺の言葉を聞いて、小さく苦笑を浮かべる新聞部君だが……続けて俺が放った言葉に、その顔のまま不自然に固まっていたのであった。

 

 ……うん、あれやこれやと話をしてたけど、言いたいことの本質はそこなんだよね。

 

 ──君、何か隠してない?

 言葉にすれば、とても単純なその一文。

 されどそれこそが、この場において彼に尋ねたかったこと。

 もっと雑に言い換えると、あからさまに手を抜いてませんか?……みたいな疑問である。

 

 

「……心外ですね、私はいつでも全力ですよ?」

「んーそうは思えんのだよねー。確かに精魂尽き果てた、みたいな顔で風呂に浮かんでたこともあるけど、本当に疲れてたなら仰向けになる余裕もないんじゃないかなーって」

「…………」

 

 

 思い起こすのは、風呂場での一幕。

 大掃除に駆り出され彼は風呂場で浮いていたが──その時彼は仰向けに浮いていた。

 

 それが何かおかしいのか?……と思われそうだが、これに関しては風呂に入る際の一連の動作──普通に風呂に入る時の動き、というものを想像すればよい。

 

 そう、普通なら風呂に入る時というのは()()()()()()()()()もののはず。

 間違って倒れたりしないよう、足元を確認できるように分の入るのが普通のはず。

 疲れているので足元が覚束ないのだとしても、そういう時だからこそ余計に足元を確認できるような入り方をするはず。

 

 そしてそういう入り方をする場合、そこから力が抜けるとまず間違いなく()()()()()()()()()()()()()()のである。

 つまり、うつ伏せになるのが普通のはず、というわけだ。

 

 ゆえに、あの時の彼はわざわざ仰向けになったということ。

 疲労感から溺れないようにと注意したのだと言っても、それは逆にあの時()()()()()()()()()()()()()()()()()と主張しているに等しいのである。

 

 

「つまり、あの時の君は疲労困憊を演出していた、ってこと。……あくまで深読みするなら、だけどね。でもまぁ、それが深読みと言えないような動きをしてたこと、あったよね」

 

 

 その理由と言うのが、いつぞやか俺が保険医と知り合うきっかけとなった一連の流れ。

 あの時彼は廊下を走っていたが──特に疲れた様子は見せていなかった。

 俺が思わず脇に避ける程度には速度が出ていたにも関わらず、である。

 

 

「……その程度で?」

「その程度で。確かに俺は虚弱体質だけど、どのくらいの速度でぶつかられたらヤバイかくらいは認知してるからね」

 

 

 裏を返すと、あの時の彼は結構な速度を出していた、というわけだが。

 風聞の流布しか能力がないのだとすれば、あれは自前の身体スペックということになる。

 それはつまり、以前大掃除で死にかけていたのはブラフか、もしくは──。

 

 

「……はぁ。言い逃れしても別の反論を出してきそうですし、いい加減認めます。……あれは能力で補強してたんですよ」

「なるほど?」

 

 

 何かしらの方法で、身体能力を補填していたということ。

 後者であることを認めた新聞部君は、ゆっくりと自身の能力について語り始めたのであった。

 

 

(……ところで、今回私達空気でしたね?)

(ずっとお二人で話していましたものね……)

(……それについては済まんかったと思っている)

 

 

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