「はぁ、
彼の口から端的に自身を表す単語として明かされた『覡』という言葉。
……しかして、いまいち馴染みのない単語に俺は小さく首を捻っていたのであった。
「……ふむ、なるほど。そういう家系の方でしたか」
「その言いぐさだと、DMさんは『覡』ってのがなんなのか知ってる感じ?」
「知ってるも何も、私とは関わりが深いものですからね。……いえまぁ、この場合は『私』と言うよりも、『私のような存在』と関わりが深い、と言うべきなのでしょうが」
「???」
そんな中、得心したように声をあげる人が一人。
それはDMさんだったわけだが……うん、なんで唐突に煙に巻くようなこと言い始めたんですこの人?
困った俺が助けを求めるように視線をAUTOさんに向けると、彼女は小さく咳払いをしたのち、こちらに説明を投げ掛けてくれたのであった。
「貴方様は『
「いや、知らんな。……っていうか、なんか頭の方に文字が増えてない?」
「ええ、『
「え?えーと……」
「──正解は神職。神を祀り神に仕え、神の言葉を民衆に届けるための役職。いわゆる巫女とかそういうもののことですね」
「へ、神職?……ってあ、
そういえば『巫女』の女じゃない方の単語、確か『ふ』って読むはずだね。
つまり巫女の男版が『覡』ってことか、なるほどなるほど。
「……話が繋がらんのだが?」
「確かに、これだけだと先程の『能力の強化』云々の話とは繋がり辛いですわね。……まぁ、なんとなくどういうことなのかは見えていますけど」
「マジでか」
俺にはさっぱりなのだが、AUTOさんは新聞部君の能力について当たりが既に付いている様子。
神がどうちゃらって話がどう繋がれば身体強化に繋がるのか?……思わず俺が首を捻りながら唸っていると。
「簡単な話です。任意コード実行ですわ」
「なんと!?」
「いやいきなり
ついで放たれたAUTOさんの言葉に、俺と新聞部君は揃って驚愕する羽目になったのであった。
……いや、俺が驚くのはわかるけど、なんで君まで驚いてるんです……?
「『神の言葉を民に教える』という概念がひっくり返って、『自身の言葉が神のそれになる』……みたいな能力だと?」
「それほどの強制力ではないのですけどね。まぁ、方向性としてはそんな感じです」
うーむ、聞いてるだけだとチート臭い能力だ……。
改めて本人が語ったところによると、新聞部君の能力は『言霊』ということになるらしい。
神に仕えるものが何故そんな技能を?……というのは、『神からの言葉を民に伝える』という動作の根本部分が風化した結果だとか。
「本来神様に話を聞かないといけないのですけど、そこを向こうが配慮して手間暇を省いてくれている……と言えるのかもしれませんね」
「うーんやけにフレンドリーな神様だ……」
で、さっきの任意コード云々の話に繋がるのだけれど。
どうにも彼、以前TASさん達が使っていた天候変化をデフォルトで行えたりするらしい。
本来あれは神様でないと行えない現実操作だが、覡としての彼はその辺りをスルーできるとかなんとか。
……まぁ、先程本人も述べた通り、強制力としては強くなく仮に天候を変化させたとしても、一時間も経たないうちに元の天気に戻ってしまうらしいのだが。
ついでにいうとそのレベルの変更を行う場合、フィードバックとして自身にも少なくないダメージが返ってくるとかなんとか。
「そういう意味ではちょっとだけ身体能力を強化するとか、周囲に風聞を広めるとか、そういうちょっとした干渉に留めておくのがベストな能力……ということになるのかも知れませんね」
「なるほどねぇ……っていうか、やっぱり風聞の方もそっちの能力由来だったんだな」
「複数能力持ち、なんてほとんどいませんからね」
そんなわけで、新聞部君の能力について理解が深まったわけだが……ふむ?
ってことはつまり、彼はCHEATちゃんの対になる類いの存在、ということに……?
「……はい?」
「いやほら、CHEATちゃんはチートコード、新聞部君もとい巫女君の方は言霊。形式は違えどやってることは同じだろう?」
「いやその纏め方は雑すぎ……いや待ってください人のことなんて呼びましたか今!?」
「え?いやほら、覡だとわかり辛いし。じゃあ巫女って方がわかりやすいじゃん?」
「実家での嫌な思い出思い出すので止めて貰えませんか!?」
「はい?嫌な思い出?」
「おおっと突然私の手から写真がー」<ニュッ
「いや下から出てくんの止めなよTASさん……って、ん?」
それはどうやら写真のようで、ヒラリと地面に落ちたそれに写っていたのは、大層美人な巫女さんの姿……って、なんか見覚えが……あっ。
「なんでこんなもの持ってるんです貴方!?」
「他人の弱点を集めておくのはいざという時とても有用。その辺り、貴方の方がよく知ってるはず」<ドヤッ
「ぐぬっ」
……これ、女装させられた巫女君やん。
確かに、これは突っつかれたくないわな……そう理解した俺は、密かに彼の呼び方を『読書部君』に戻したのであった……。