「ネウロピテの涙……聞いたことがある」
「なにっ、知っているのかTASさん!?」
「ルーツ不明・出所不明の巨大宝石の一つ。持ち主に幸運をもたらすという逸話を持つ、こういう時によく見るタイプのやつ」
「うわぁ、本当によくあるタイプのやつだ」
「因みに名前の由来も不明。ネウロピテってなんなんだろうね?」
「いや、TASさんにわからんのなら誰にもわからんよ……」
響き的にはギリシャとか?
……ともかく、ガラスケースの中に納められた一粒……というには存外大きな宝石を前に、TASさんが簡易的な説明を行ってくれる。
その説明によれば、どうやらこの宝石は経歴のよくわからないタイプに当たり、されどその特筆すべき大きさゆえに代々有り難がられてきたものなのだとか。
それで、素人目的にはダイヤモンドっぽい見た目だが……なるほど、ダイヤで間違いないらしい。
どれくらいの重さなのかはわからないが、一般的に見かけるダイヤと比べると遥かに大きい……ということもすぐにわかる。
聞けば、大体百カラット前後くらいの大きさになるのだそうだ。
「……百カラットって、具体的にどれくらいの大きさになるん?」
「そうだね、およそ二十グラム……と聞くと随分軽く思えるかもしれないけど、過去売りに出された同様の大きさのダイヤモンド達は、どれも数十億ほどの価格で取引されていたというのは間違いないね」
「ほう、数十億とな」
……なるほど、宝石の相場はよくわからんが、話を聞くに結構な高級品に当たるらしい。
ガラスケースの中の宝石は蛍光灯の明かりを受け、どこか誇らしげに輝いているのであった。
その姿を見ながらうんうんと頷いていると、何処からか視線を感じる。
視線を感じる方に目線を向けてみれば、MODさんが信じられないものを見るような目でこっちを見ている姿があったのだった。
……ええと、そんな目で見られるようなこと、何かしましたかね俺……?
「いや寧ろ
「ああ、なるほど。……とは言っても、数十億ってTASさんが秒で稼いじゃうくらいの金額だから、数値的に高いのはわかるけどあんまり緊張はしないというか……」
「ん。風が吹けば秒で出る金額」
「……うん、TAS君を基準に持ち出すのは止めよう、マジで」
なるほど、高級品を前に恐れ戦かないことを訝しんでいたと。
……とはいえ、今更物の金額程度で驚愕できるかと言われると、正直無理があるかなーというか。
ほら、TASさんと言えば収集癖もセットと言うのがお約束だろう。
そうなると必然、部屋に置いてあるものが意外なほどの高級品で溢れ返っている、なんてこともしょっちゅうあるわけで。
読書部の部室ですらあれこれと溢れていたのだ、自室だからと遠慮もどっか行ってるTASさんの部屋なんか、それの数倍……いや数百倍ヤバいに決まっているのだ。
流石に最近は出入りしてないけども、
……そりゃまぁ、一々戦いてたら何もできずに終わるわ、というか?
なんならTASさん、掃除失敗してこのツボ落としたら面白いかも、みたいなノリでトラップ仕掛けてたこともあるし。
「……参考までに聞いておきたいんだけど、そのツボって……」
「ああうん、国宝級とかなんとかで値段が付けられないようなやつを、それだと気付かせないように設置してたりするんだよTASさん。……物に対する注意力を鍛えるため、とかなんとか言って頻繁に」
「……因みに、落として壊したことは?」
「──壊してもTASさんなら直せるから安心だよね!」
「遠回しに答えを言うの止めないかい???」
……まぁ、俺の失敗回数が二桁を越えた時点で、「私の訓練にはなるけどお兄さんには無意味」とばかりにぱったりと止んだのだが、トラップ敷設。
そういうわけなので、高いものを無駄にすることに掛けては右に出るものはいないのが俺、と主張させて貰うことにしよう()
「いや、それハ決して威張ることデハないデスよね?」
「……ハイ、ソウデスネ」
なんて冗談は、唐突に自分が生徒会長──まともな感性の持ち主に分類されるはず、ということを思い出したかのように真顔となった日本被れさんの冷静なツッコミにより、思いっきり駄々滑りすることになったのでしたとさ。
……はい、今後気を付けま……え、今後じゃなく今気を付けろ?
ハイ、仰ル通リデス……。