うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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仲良くなるにはなにがいる?

「…………」<パラパラ

(……き、気付いてくれない……!)

 

 

 ……なにやってるんだろう、あの子達。

 買い物から帰って来た俺が目にしたのは、窓際で本を捲るTASさんと、その前でなにやら携帯ゲーム機を構えたまま固まっているCHEATちゃんの二人。

 他の面々はどうやらまだ来てないらしく、部屋の中には二人以外の人影はない。

 

 ……ってことは、CHEATちゃんが遊ぼうとゲーム機を引っ張り出したはいいものの、TASさんが本を読んでいるため邪魔をするのもなー、みたいな感じで固まってしまった、という感じだろうか?

 で、目の前でアピールして自分に気付かせようとするほど図々しくもない彼女は、TASさんが本を読むのを止めるのをじっ……と待っている、と。

 

 可哀想な話だが、TASさんが本を読んでいる場合、無理矢理本を没収しない限りは読みたいところを読み終わるまで絶対に本を手放さないので、彼女の行動は全くの無駄である。

 ……なにをやってるんだCHEAT!派手モードのお前はもっと図々しかったぞ!

 

 

「いやそんな図々しくないからね?……ってあ」

「……お帰りお兄さん。今日のおにぎりは?」

「シャケとイクラと高菜です」

「──パーフェクトだ」

「……あのー?私をスルーしないで欲しいなー?」

「ん、居たんだ貴女」

「居たよ!?ずっと目の前に居たよ!?スルーされてただけだよ?!」

「ん、嘘。知ってた」

──キェアーッ!ショウブジャキサマーッ!!

「ん。その前に腹拵え」

 

 

 まぁ、声をあげてもこんな感じなのですが。

 ……しゃーない、わりとこうするのが最適、って思ってる節があるし、TASさん。

 そんなことを空笑い混じりに考えながら、TASさんに高菜おにぎりを渡す俺である。

 

 

「ほい、シャケとイクラ、どっちがいい?」

「……あれ?」

「どうした?」

「……いや、てっきり一番高いのを選ぶのかと思ってたんだけど……」

 

 

 そのまま、流れでCHEATちゃんにおにぎりを選ばせたのだが……何故か彼女は首を傾げている。

 どうやら、TASさんが三つのおにぎりの中で一番安い高菜を選んだことに、ちょっとばかり違和感を覚えたらしい。

 いやまぁ、正確には選んだってよりは、端から彼女がそれを選択することを知っていて、俺が自然に渡した……というのが正解なわけだが。

 

 ともあれ、彼女のイメージからすると、この三つのおにぎりの内高菜を選ぶような人には見えない、と思っているらしいことは間違いなく。

 

 

「……特に意味はない。辛いのが好き、というだけの話」

「へー。……じゃあ今度激辛でも食べに……」

「それは勝負?それともただのお誘い?」

「えっ」

 

 

 なので、次にTASさんが述べた言葉に、CHEATちゃんは思わず地雷を踏みに行ってしまうのだった。

 ……うん、ピリ辛好きと激辛好きはわかりあえないよね……。

 

 

 

・A・

 

 

 

「……怖かったんだけど」

「あーうん、野球と政治と食べ物の好みの話はしない方がいい、ってこれを機会に覚えとくといいよ」

「……?前二つはどこからでてきたわけ?」

「そういう教えみたいなもんがあんの」

「へー……」

 

 

 勝ち負けとか上下とか優劣とか、そういうものを内部に含む話題というのは荒れやすい、っていう教訓みたいなものだから、なんでそれ?って言われても説明なんてできんよ俺。

 

 ……まぁともかく。

 勝負だというのなら無理もするが、そうでないなら遠慮する……。

 さっきのTASさんの態度はつまりそういうことであり、ゆえにCHEATちゃんが地雷を踏んだ、ということになるのであった。

 

 

「えっと、つまりさっきの高菜は、本当に高菜が好き、ってだけのことだってこと……?」

「そういうこと。辛いのが好きじゃなくて高菜が好きなの。……ごまかしたのは、好みが渋いって言われたくなかったから、とかかなぶへっ!?」

「お兄さん余計なこと言い過ぎ。いいからさっさとこっち来る」

「へいへーい……」

(……自然に座椅子になった……!?)

 

 

 まぁ、その辺りのことを説明していたら、TASさんから座布団が飛んできたわけだが。

 

 へいへい、と雑に答えを返し、テレビの前へ。

 そのまま胡座をかいて座り、TASさんが定位置に付くのを見ていたのだが……いつまで経ってもCHEATちゃんがこっちに来ない。

 なにやってるんだろう、みたいな気分で首だけ振り返れば、彼女は驚愕したような表情のまま、静かに口を開くのだった。

 

 

「……そういえば、二人はいつから一緒に居るの?」

「いつから?……えーと、そうだなぁ」

 

 

 彼女の言葉に、思い起こすのはいつかのあの日。

 二人が出会って、一緒に暮らすようになった運命の日。

 それはそれはドラマチックで劇的でファンタスティックな一幕が繰り広げられたわけなのだけれど──、

 

 

「すまんな、既に回想キャンセルされてるんで、それはおまけモードからグラフィックビューアーを起動して、各人で確かめて見てくれ!」

「……いきなりなに言ってるのお兄さん。おまけモードの開き方から説明しないと失礼」

「一体なに言ってんだお前ら」

 

 

 うん、ご存知の通り一回キャンセルされているのでね、知りたかったら各々でおまけモードを確かめて見てほしい。

 ……というようなことを説明したところ、CHEATちゃんから返ってくる視線は『なに言ってんだこいつ』という、あからさまな侮蔑の視線なのであった。

 

 ……別に変なこと言ったつもりはないんだが、ねぇ?

 

 

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