うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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とりあえずボッコボコにするけどいいよね?

 警報が鳴り始めてから、都合三分ほど。

 慌ただしい気配がここに近寄ってくるのを察知(具体的には足音が)した俺達は、ようやくかとばかりに下ろしていた腰を上げたのだった。

 尻の部分についた埃を払いつつ視線を前に向ければ、そこには息を切らした紳士が一人。

 

 ──この人物が、今回のもう一つのターゲット。

 花嫁を故意に害し、彼女の持つ涙を奪った最悪最低の花婿である。

 

 

「……お、お前達、ここで何をしている……」

「おっと最初から素をさらけ出していらっしゃる。これは遠慮が要らない、と判断されたからかな日本被れ(ワトスン)君」

「誰がワトスンデスか、誰が。……まぁ、体裁を整える余裕がナイ、と見るのは自由じゃないデショウか?」

「……っ、質問に答えろォッ!!」

 

 

 全速力で走って来たのか、ぜいぜいと息を切らす花婿。

 両脇に控えた護衛達(狭いので四人しか見えてないが、その後ろにも数人控えている)は流石に大丈夫そうだが、それでも汗を掻いているのが見える辺り結構な距離を走ってきたのは間違いなさそうだ。

 

 それに対してこちら、確かにたどり着くまでにさまざまなトラップの妨害にあったが、それらをくぐり抜けたのも今は昔。

 ……要するに息を整える余裕なんて幾らでもあったわけで、この時点でどっちが有利かは明白なのであった。

 いやまぁ、TASさんがこっちにいる時点で、明暗は既に決まったようなものというのも間違いじゃないんだけども。

 

 とはいえその辺りの事情について、向こう側が知るわけもなく。

 余裕綽々で会話する俺達に怒り心頭となった花婿は激昂し、それに合わせて周囲の護衛達も各々得物を構え始める。

 ……大体ハンドガンだが、中には機関銃を構えているヤツも見えた。

 

 

「答えろ、とは言うけどね。そもそも予告状は出していたと思うんだけど?」

「予告状……っ?……あの、ふざけた文面のヤツか?正気か貴様」

「おっと、人のことを言えた義理じゃないと思うけどね?」

 

 

 それでもこちらの態度は崩れない。

 代表して話すMODさんは流石の胆力で、怒気を漲らせる花婿にまったく怯むことなく会話を続けている。

 ……こうしてみると、MODさんって怪盗の才能もあるのかもしれないなぁ。

 

 それは置いといて、話題に上がった予告状について。

 どうやらMODさん、こうしてここにたどり着くよりも前に、目の前の花婿に対して予告状を送っていたらしい。

 まぁ、相手には悪戯か何かと思われ、真剣に取られていなかったようだが……ゆえにこそ、相手を嘲り頭に血を昇らせるきっかけにもなっているわけで、寧ろ相手のミスと言うべきな気がしてくるというか。

 

 ……ところで、花婿が冗談や悪戯だと思ってしまうような予告状の内容、だけれども。

 

 

「『今夜、貴方の罪によって流れた涙を頂戴しに参ります』──これ以上ないほど、警戒しなきゃいけない文面だと思うけどねぇ。()()()()()()()()()()んだし」

「……つまり、お前もその宝石の噂を知っていて狙っていた、ということか」

 

 

 本人が述べた通り、彼はその意味をいの一番に理解していないといけない類いのものだった。

 それを今、彼は再び耳にして──うん、なんか愉快な勘違いをした様子。

 まぁ、広く知られていないはずの宝石の情報を知っていて、かつそれをネタに予告状を書く人物……となると、彼の知っている知識の範囲では『自分と同じくこの宝石を狙っていた存在』、としかならないのはわからんでもないが。

 よもや取り返しに来るヤツが彼女(花嫁)以外にいた、とは思わないというか?

 

 とはいえ、その勘違いを肯定する理由もない。

 こっちとしては彼も含め、必要なものを全て確保してさっさと戻る以外の選択肢はない。

 ゆえに、俺達を代表して話をしていたMODさんは。

 

 

「──バカかい、君。書いてあること以上を読み取ろうとするのは、己の知性を必要以上に見積もった愚か者のすることだよ?」

……もういい!この大馬鹿者をさっさと殺せぇっ!!

 

 

 更なる挑発で、戦闘の火蓋を切って落とさせたのだった。

 

 同時、花婿の言葉を待ってました、とばかりに光る銃口。

 マズルフラッシュが薄暗い部屋の中を代わる代わる照らし、それに呼応するように鉄の玉がこちらへと絶え間なく発射される。

 無論、そんな状況に俺みたいな一般人が留め置かれたら、あっという間に蜂の巣になるしかないんだけど……。

 

 

「今日の私は中華気分。あちょー」<アチョー!

「……はっ!?

 

 

 そんな未来、TASさんが承認するはずもない。

 どこからか取り出した長めのタオルをひょい、と彼女が振るえば、それに触れた銃弾はまるで忘れ物でもしたかのように元いた場所へと返っていく。

 

 ──結果、数秒の銃撃は彼らの武装を破壊する、という形で答えを返したのだった。

 これには花婿も困惑顔。

 

 

「……は?」

「ウーン、飛び道具なら任せてくだサイ……なんて言うつもりデシタが。この結果を見せラレルと、なんトイウカ自信をなくしマース。──なので」

「はい?」

 

 

 その隙を逃さず、飛び込んで行くのは日本被れさん。

 自身の肉体の欠損を恐れぬ、明らかに人が出してはいけない速度での突貫。

 無論、そんなものに直撃した護衛は耐えられるわけもなく、無様になぎ倒されていく。

 

 そんな猟奇的な(折れてるのも出ている血も全部日本被れさんの)光景を真横にした花婿は、唖然とした表情のまま横に顔を向け。

 

 

「──楽しいドツキあい、やりマショ?」

「────!?」

 

 

 声にならない悲鳴を一つ、あげたのだった。

 ……夢に出そうだな、これ。

 

 

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