うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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負け犬は虚しく吠えることすら許されない

 初手の段階で戦意喪失しているような気もしないでもないが、だからといってこっち側が手加減する理由もなく。

 結果、まさに蹂躙としか言い様のない光景が生まれたものの、悪いのは花婿なので謝る気のないこちら側です。

 しゃーない、(収監に)切り換えていけ。

 

 

「貴様らっ、どうなっても知らんぞ……!」

「ん?」

 

 

 で、縄でぐるぐる巻きにされた花婿を背負って持ってかーえろ、ってみんなで肩まで持ち上げたのだけれど。

 そこで未だ元気だった花婿が、こちらに向けて話し掛けてきたわけなのです。

 

 ……ふむ、どうなっても知らんぞ、と来たか。

 

 

「その言いぐさだと、協力者がいたりするのかな?」

「なっ」

「なるほど、宝石についての情報の出所はそこ、ということか」

「?!」

「つまりあれデスね?『俺を倒してモ第二第三の刺客が~』とか言うヤツ!……あれ?それ私達が言うべき台詞デハ?」

「四天王的に?」

「そう四天王的に!……ああデモ、この状況でソレを言うのはSo bad、デスね!」

「……状況的によろしくない、けど四天王的にはやってみたくもある?」

「Oh,yes!複雑な乙女心、分かって貰えてサンキューデース!」

「な、何を言っている貴様ら!?」

 

 

 直訳するなら『ダメダメ』、スラングとしてなら『だからやってみたい』だったか?

 

 ……ともあれ、花婿の発言的にどうやら今回の事件を裏で計画した黒幕、というべき存在がいるようだということがわかる。

 同時に、その黒幕を頼りきったような発言が情けなさ過ぎる、というのも間違いあるまい。

 まぁ、今しがたの会話を聞いていればわかると思うが、日本被れさん的にはちょっと憧れるシチュエーションでもあったようだが。

 

 で、そんな俺達の反応を見て、声を荒げるのが花婿である。

 どうにも相手を信頼しきっているようだし、自分に手を出せばただじゃ済まないとかそういうことを主張したいのだろう。

 ……ただね?

 

 

「そんなの、単にTASさんを喜ばせるだけなんだよなぁ」

「んなっ」

「ファーストステージクリアー。ところでラスボスまで何ステージ?」

「げ、ゲーム気分なのか貴様!?正気か!?」

「正気でTAS道は進めない」<キリッ

「……は、はぁ?TAS?」

 

 

 おや、どうやらこいつはTASさんをよく知らない様子。

 

 でもまぁ、それもそうかと納得。

 TASさんってばどんな時でも堂々・姿を隠すなんてあり得ない……いや、ステルスしてる時はその限りじゃないけど、そういうことじゃなくて。

 

 敵対者に対して顔を見られないようにしない、というのが彼女の基本方針。

 それゆえ、裏世界において彼女の顔は『関わるべきではない』として広く知られてしまっているのである。

 ……まぁ、たまーに『そんなの知るか』とばかりに挑んでくるやつとか、はたまたこの間みたいにTASさんが機能不全な時に逆襲を狙うやつもいるけども。

 

 

「そういう元気のいい相手をこそ私は求めている。貴方もそういう存在になってね?」

「なん、なん……」

 

 

 この通り、TASさん的には『もっと来いよ』という心構えなので、まったく苦になっていないのだった。

 これには花婿も困惑。

 

 

「あー、そのことについてなんだけどね、TAS君」

「ん、何?……いや待って、それは良くない」

「いや待たない。実はとある人から電話を貰っていてね」

「あ~~~~~っ」

 

 

 で、続いてMODさんが発した言葉により引き起こされたTASさんの反応に、他の面々も困惑。

 いや、この世の終わりみたいな叫び声(※当社比)だけど、一体何が?

 

 そうして困惑する俺の前で、MODさんが自身の端末の画面をこちらに──花婿にも見えるように向けてくる。

 

 ざざっ、という音と共にそこに写し出されたのは、顔が見えない状態で椅子に座っている誰かの姿。

 膝の上で丸まる猫を撫でるその姿は、なるほど何処かのお金持ちを想像させるような仕草であり……、

 

 

「ま、まさか……」

『そのまさか、です。……やってくれましたね、まさかその方を引き寄せてしまうとは』

(……あ、これ黒幕だわ)

 

 

 不自然に甲高い声が聞こえてきたことに、相手がボイスチェンジャーを使っていることを即座に理解する。

 それから、花婿の反応的に先程彼が口にしていた黒幕がこの人物だ、とも理解。

 となれば、これから起こることは予測できる。ついでに、なんでTASさんが叫びだしたのかも。

 

 

『……私と貴方は無関係。いいですね?』

「そ、そんな!?では私は……」

『さて、無関係かつ赤の他人である貴方の行く末など知ったことではありませんが。……命があればいいですね?』

「う、嘘だ!嘘だそんなことぉー!!?」

(典型的な悪役ムーブ!ちょっと憧れマース!)

 

 

 典型的な切り捨てが発生したことにあーあ、と天を仰ぐ俺。

 あれだね、この花婿さん裏の世界的には新参者だったんだろうね。可哀想に……。

 それと日本被れさん、なんで目を輝かせてるので?

 

 そんな俺の反応を他所に、縛られた花婿は先程まで彼を護衛していた黒服達に引き渡される。

 どうやら、彼らは黒幕が派遣したモノ、ということになるらしい。切り捨てられたのでここからはこっちの指示に従うと。

 ……なんかここまでくると花婿が哀れだな?

 

 ともあれ、先に行って待ってるということなのか、花婿を担いだ黒服達はさっさと帰り道を歩いていってしまうのであった。

 ……え?裏切らないか見てなくていいのかって?仮に裏切ってもTASさん一人でお釣りが来るから大丈夫だよ()

 

 

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