さて、花婿が物のように運ばれていくのを見送った俺達は、改めてMODさんのスマホの向こうに座す黒幕と相対し直す。
『……改めて、此度はご迷惑をお掛けしました、と』
「おや、無関係なんじゃなかったのかい?」
『ええ、ですのでこれは単なる独り言です。──新参者が勝手に動く、というのは往々にしてよくあることですが……今回に関しては手綱の付け忘れ、ということになります』
「……ふむ?」
画面の向こうの黒幕は、依然として悠然としているように見える。
……見えるんだけど、よーく見ると微かに震えているような気がする。
確かMODさんはまだまだ(この周回では)無名に近いとかって話だったので、相手がそんな姿を見せているのは恐らく……。
『……単なる使い走りかと思っていたのですが。まさか
「おやおや、随分と甘くみられていたみたいだね、私は。……まぁ、君達から見ればこちらも新参者だった、ということなのだろうけど」
『否定はしません。お互いルーキーの仕業だった、ということですね』
「……?何の話?」
『貴方にしてみれば誰も彼もルーキーのようなものでしょう、ということです』
みんなの視線が、自然とTASさんの方へと向かう。
向けられた本人は、何のこととばかりに首を傾げていたけれど……うん、TASさんの名前は周回が始まるより前から売れていたもの。
となれば、それを警戒するものだっていてもおかしくないわけである。
まぁ、さっきも言ってた通り、TASさん本人的にはそうやって警戒するより、無謀でもいいから突っ込んで来てくれた方が嬉しいのだろうけど。
『──ご冗談を。勇気と無謀は違う、などという言葉を私に言わせる気ですか、フィクサー』
「…………え、もしかして俺に言ってる?」
『他に誰が?
「oh……」
……なんか、いつの間にか俺まで警戒されてる件について。
いや、真面目な話俺を警戒する必要性ゼロじゃない?だっけ吹けば飛ぶような十把一絡げ系一般人だよ俺?
「?普通の一般人は空を走れたりしないよ?」
「いやそれはTASさんのスパルタの結果であって……あいや待って画面の向こうの人、無言ですすすって遠ざからないで!それすごく傷付くから!?」
いや確かに彼女についていく過程で、あれこれできるようになったけどね?
でもそれは彼女に振り回された結果否応なしに身に付いたスキルであって、そんなの他の人でも同じ様に振り回されれば身に付くもの……って何日本被れさん、俺ってば自己弁護に忙しいんだけど?
背中から伝わる感触的に、日本被れさんが俺の背中をつついている、というのは間違いあるまい。
個人的には忙しいのでそういうの止めて欲しいのだが、生憎と彼女の動きは止まることはなく。
仕方なく、背後に振り返ってみれば。
「いや、先生。一応ツッコんでおきマスと、そもそも付いてイク過程のどこかで脱落シマス、普通」
「……さて何の話だったかな?」
「スルーしたってごまかせマセンよ?!」
はっはっは。何を言い出すかと思えば。
TASさんの暴挙に付いていこうとするなら、必ず何処かで脱落するはずだって?
そんなことあるわけそうですねそのとおりです()
(瞬時に萎びた!?)
「まぁうん、ですよねーというか?だってほら、おれだってせいかくにはついていってるというより、ついていかされてるってかんじだし?ほかのひとならどうなるかなんてひをみるよりあきらか、そりゃまぁおれもおかしいってことのしょうさいがいのなにものでもないよねふへへへへ」
「お兄さんが壊れた。仕方ないから……ていっ」
「ぐふっ!?……はっ、俺は一体何を?」
『(ドン引き)』
おかしい、数分前から今さっきまでの記憶が全て吹っ飛んでいる……!
思わずTASさんの方を見てみれば、彼女から返ってきたのはてへぺろ的なごめんねの顔(※当社比)。
「……こ、こいつぅー!またやったなー!?」
「てへ。またまたやらせて貰った」
「んもー!俺じゃなかったらもっと怒られてるんだからねー!!?」
『(……どう反応すればいいんでしょう、これ)』
(笑えばいいんじゃないかな)
『(脳内に他人の声が!?)』
で、ええとなんだっけ?
確かMODさんのスマホの向こうで顔も見せずに座ってる黒幕との会話の最中、だったっけ?
じゃあ大詰めじゃん、と気を取り直して居住まいを正した俺は。
「ん。じゃあそのうちそっちに行くから歓迎よろしく」
『え』
「ん、二度は言わない」
『わたしなにかしましたかね???』
「何も。目についたから叩き潰しとこうと思っただけ」
『……理不尽っ!』
「あ、切れた」
サクッと『あ、君の組織潰すね?』と告げたTASさんにより、思わずガクッと姿勢を崩す羽目になったのでありましたとさ。
……うん、俺が構えた意味は……?