「グラフィックビューアーですの?でしたらここをこうしてこう……」
「なんでできんの!?」
「はっはっはっ。やり方覚えればできる辺り、なんというかまさにグリッチってやつなんだろうねぇ」
数十分後。
こちらを煙に巻くために適当なことを言ったんだ、と憤りはしないものの釈然としない表情を浮かべたまま、いつも通り大で乱闘するゲームで吹っ飛ばされていたCHEATちゃん。
そこにやって来た他二人に目敏く気付いた彼女は、さっきの俺達の話を彼女達にも聞かせ──見事、自身一人だけが知らないことがあった、という事実に気が付いたのだった。
まぁ、彼女が知らない理由は、さっきみたいに『グラフィックビューアー』が話題に上がった時に『なにそれ』って聞かなかったから、というだけの簡単な話なのだが。
なお、これに関しては特になんのパワーも持っていない俺でも開けるので、どうにも汎用的な技術に当たるらしい。かがくのちからってすごーい。
「そう。遥か未来、ARが高度に発展した世界の常識を引っ張ってきた」
「思ったよりも結構無茶苦茶な話だった」
「ただ一つ、問題がある」
「んん?」
聞けば、これはいつかの未来に人類が作り上げる、いわゆる拡張現実のシステムを引っ張ってきたもの、ということになるらしい。
過去から未来にアクセスしている、ということになる辺り、まさにバグっぽさ満載だが……どうにもちょっとした問題があるようで。
「私は、色んなモノを
「できるんだけど?」
「……現行の世界にとって異物であると、それを使用することによって
「ええと、つまりこのグラフィックビューアーを使いすぎると、これが当たり前の世界に近付くと?」
「それのなにが問題なのさ?」
彼女が言うには、このグラフィックビューアー(機能的には空間投影できる画像ソフト、みたいな感じで見た目はともかく内容に特別さは感じられない)を使い続けると、これがあることが当たり前の世界に近付いていくのだという。
……大雑把に言ってしまえば、このグラフィックビューアーに使われている技術が前倒しで開発されるようになる、という感じだろうか?
ただまぁ、それを聞いただけだとなにが問題なのかよくわからない。技術の発展が進んだからといって、不利益を被る理由があるのだろうか?
「大いにある。少人数が使っている内は所詮は蝶の羽ばたき、歴史の流れによって自然に修正される。不思議な現象、噂話、都市伝説。そういったオカルトとして処理され、それが出来た日というのはずれたりしない」
「……ふむ?」
「だけど、大人数が使い始めたら話は別。それはまやかしや幻ではなく、今そこにある現実となる。……端的に言うと、過去改変になる」
「なんか壮大な話になってきた!?」
ところがどっこい、実は不利益になる要素が一つあるのだとか。
それが、『開発された日の大幅すぎる前倒し』である。
例えば、二・三人が特定の技術を使っていたとしても、それがいつからあるのか・そもそも完成したモノなのか、というのは実は未明領域なのである。
その特定の人物達以外が使っていないのなら、それを世に証明するのは難しいがために。……誤用の方の悪魔の証明、というやつだ。
ゆえに、例えば未来や平行世界から技術を取り寄せて、少数の人間が使っていたとしても。
それは本筋に影響をもたらさない、一種のオカルトとして処理される。……彼らが権利などを主張しない限り、あくまでも作った人や作られた年代に変化はないのだ。
どっこい、それが大人数だと話が変わってくる。
見間違いや見当違いなどの逃げ道を塞いでしまうそれは、すなわち
そうするとどうなるだろう。その技術を前提とした他の技術や、そこから更に発展していく技術。
それからそれから、その技術を生むために消費された様々な素材や人材、その技術のためにこれから消費されていくモノ達。
──それら全てが、バレたその瞬間に一気にフィードバックされるのである。例えば開発に二十年掛かる技術なら、今から二十年前にはもう開発が始まっていた、というように。
「……つまり、いきなりエネルギー資源が枯渇したり、かと思えばいきなり新しいエネルギー資源が当たり前に存在していたり。……そういう、急速な辻褄合わせによって世界が狂う、ということですのね?」
「そういうこと」
「危なっ!!?たかだか画像ソフトごときで世界滅亡の危機とか危なっ!!?」
「……まぁ、そういう時は乱数が滅茶苦茶動くから、問題ないように調整するのも楽なんだけど」
「……こいつ野放しにしてちゃダメなんじゃ?」
わりと気軽に影響を与えれる、と聞けば危険人物扱いもやむ無し。
そんな感じで口の悪くなっているCHEATちゃんから、ジト目で見られていたTASさんはというと。
「……てへ」
珍しく小さく笑みを見せながら、ちょっぴり気不味げに舌を出していたのだった。……CHEATちゃん?やっこさんキレてたよ()。