「未明の無とは、概念的ないし物理的に見えなくなった未来視のこと。とはいえ物理的な未明は寧ろTASちゃん達だけの特例だから、基本的には『概念的に視えない』ということになるわね」
「ん。だからこそ他の人にはわかりにくい」
「そうね。それを認知するにはまず未来視能力を持ってないといけない、ってことになるわけだから」
何やら仲良さげに未来視トークをしている部長さんとTASさんである。
他の面々?半ば置いてけぼりですが何か?
とはいえそれによって問題の脅威度の共有ができてない、ということは部長さん自身も理解しており、ゆえにこそそこをわかりやすく説明しようとしているわけなのだが……。
「そうねぇ……例えば、今私達は商店街にいるとするわね」
「……んん?」
「それで、例えば文房具。例えば食料品……みたいな感じで、何かしらのお使いを頼まれているのだとする」
「はぁ」
「普通なら、看板とか内装とか見れば、そこに何が売ってるのかわかるわよね?でも現在、それらのお店には看板がない・もしくは見たことも聞いたこともないような言語による名前しか記されておらず、かつ店の中も曇りガラスなどで見通せなくなっている……」
「なるほど、その状況じゃ目的のモノを買うのは難しいな」
そこで例えに出されたのは、商店街に買い物をしに来たというシチュエーション。
基本的にそういう場所の店は専門店であり、適当に入っても目的のモノを買うのは難しい。
本来であれば、それらは店の看板や内装などが入るべき店の指標となるわけだが、この仮定の中ではそれらの情報が失われている……。
つまり、この『情報が失われている』というのが『未明の無』の持つ問題点なのだろう。
「と、言うと?」
「『未明の無』に対しての未来視は無効化されるわけだけど、それって多分単に視えないだけじゃなくて
「……思ったよりよっぽど大事になってきたような?」
先の例において、その店が持つ情報は外から窺い知ることができなかった。
だがしかし、未来視においてそれはおかしな話となる。
特定のタイミングしか視えないタイプならともかく、大抵の場合未来視というのは細かく視る時間を変えられるモノだろう。
それを先の店の話に当てはめると、そういう店の情報を隠す前のタイミングにピントを合わせればいい、という話になるのだ。
もっとわかりやすく言えば、今の建物より前に建っていたモノを知りたいのなら、過去の記録を漁ればいい……みたいな。
「未来視が過去視を含むかどうか、というのはまた別種の話だけれど……まぁ、遥か未来を覗いた結果なら、近い未来にピントを合わせ直せばいいでしょうというのは着目点として間違ってないわね。──そう、『未明の無』はどこまでも視えない場所。そこには未来がないのよ」
ゆえに、先程の話を未来視に当てはめた時、出てくる答えは『そこには何もない』となる。
……一応、未来視だけを弾く力場とかが発生している可能性もあるが、ともあれ『未明の無』が未来視を否定する場所である、というのは間違いない。
「ただまぁ、それだけだと問題ではないのよね。『未明の無』っていうのは自然現象みたいなものだから、何もしなくても湧いてきたりするから」
「……湧くのかい?」
「ええ、湧くの。まぁ、石油が出るよりは珍しいと思うけどね」
だがしかし、それだけだと問題とは言い辛い。
いわゆる特異点──あらゆる干渉を弾くもの、という存在と方向性としては同じであり、それがあることそのものが問題であるとは言えまい。
ゆえにこれは、そんな場所が
そしてさっきまでの話をそこに加えると……。
「こっちのTASさんが『未明の無』を意図的に発生させてる?」
「そういうこと。そしてそれが何の問題なのかと言うと、
未来が見えない場所──
そしてそれをこっちのTASさんが行っているということになるのであった。
……それだけだと問題点がわかり辛いので、その辺をはっきりさせると。
「積極的に彼女が世界を滅ぼそうとしている、ということになるわね」
「……大事過ぎでは?」
「最初から私はそう言ってるわよ?このままだとこっちのTASさんが誰も勝てない大魔王になるって」
「聞き間違いならいいけど多分そこまでは言ってなかったよね君!?」
思わずとばかりに大声を出したMODさん。
そんな彼女を見て、部長さんは「あれ、そうだったかしら?」と首を傾げていたのだった。
……うん、俺も流石に大魔王云々は聞いたことないかなー?