「ええと、つまりアレデスか?こっちのTASさんは、こっちの先生のために世界を滅ぼそうとしてイル……と?」
「そういうことになる……」
珍しく消沈した様子で肩を落とすTASさんの姿に、思わず顔を見合わせてしまう私達。
……いや、その場合やらかしてるのはこっちの俺なのであって、TASさんがそこまで落ち込む必要はないのでは……?
「それに関してはノー、と言っておく。不甲斐ない話だけど、こっちの私は失敗した。失敗した結果、こっちのお兄さんの暴走を許してる」
「はい?」
「……えーと、付かぬことを聞くんだけどねTAS君?」
「何?」
「私の記憶違いじゃなければ、
「……はい?」
「ん。多分そこの認識がミスってる」
「そうかー……」
「いやお二人ダケで納得スルの止めマセンか???」
いやホント、日本被れさんの言う通り。
何が何やらわからないが、TASさんとMODさんの間では今のやり取りで答えがわかったらしい。
こっちは全くわからないので説明を求めたのだが、「お兄さんのプライドにも関わるから私からは言えない」とか言われたらどうしようもない。
一体何をどうしたと言うのだ、こっちのプレイボーイな俺……。
「…………」
「MODさん?どうシマシタか渋い顔をシテ?」
「……いや、何でもないよ」
「???」
「えーと、ともかく目的地は定まったってことでいいのよね?」
「ん。こっちの私が自分だけの目的として行き先を決めたのなら判別できないけど、こっちのお兄さんに従ってるのなら行き先は固定。──私達の元いた世界にいるはず」
「なるほど。ということは、彼らが壊したいと思っている場所も、」
「同じく、私達の世界。……多分、羨ましいんだと思う」
「プレイボーイなのに!?」
「……その辺に関してはノーコメント。会えばわかる」
改めて、私達が向かわなければならない場所を確認。
どうにもこっちの俺は何やら私達の世界が羨ましいとかで、その嫉妬が暴走してこっちのTASさんを使い世界を滅ぼし始めたとかなんとか。
……正直今までの話を聞いてるだけだと何処に羨ましがる要素があるのかさっぱりだが、少なくともTASさんとMODさんからしてみれば「わかる」となるようなモノではあるらしい。
個人的には「何言ってるんだこいつ」なのだが、まぁこの二人が納得するのだから間違いないのだろう。
というわけで、私達は早急に元の世界に戻り、彼らの陰謀を挫かねばならないのだけれど……。
「自発的に次元間移動するのはよくない、って縛りがねぇ……」
「あっちが破ってルのデスから、こっちだって構わナイのデハ?」
「仮にそれが許されるのだとしても、終わったあとやり方を忘れないといけないからねぇ」
「ムゥ、難儀デスねぇ」
そこで問題として立ちはだかるのが、最初から言っていた「自発的次元移動の厳禁」というルール。
これは、『今後再利用が可能な形で次元移動するのを禁ずる』というのが正確なルール。
偶然飛ばされたのならともかく、自発的に移動するというのはやり方を覚えるということ。
言い方を変えると
……いやまぁ、仮にやり方が刻まれたとしてそれを実際に利用できる人間がどれだけ居るのか、という話なのだが……。
この辺はTASさん曰く『それが発明されるより遥かに前にやり方が判明していること自体が問題』とのことであった。
あれだ、歴史の辻褄合わせに巻き込まれる可能性大、みたいな?
結果として今ある世界を丸ごとぶっ飛ばしかねない、ある意味こっちのTASさん達の所業よりエグい事態に発展する恐れがあるそうなので、少なくともTASさんがやるのは確実に厳禁である。
で、現状彼女抜きに次元移動を行えそうな人間が居ないため、結果的に手詰まりとなっているわけで……。
「なるほど。つまりはこういうことね、TASちゃんが真似できない・かつ他の人にも再現出来かねる方法なら問題なさげ、と」
「まぁ、そうかもしれませんけど……言うは易しの典型例では?」
「なぁに、その辺はこの頼れるお姉さんにお任せなさい!」
「はい?」
そこまで話して、部長さんは胸を張りながら自身ありげにそう声をあげた。
我に秘策あり、みたいな態度だが……いや、確かにTASさんと同じ未来視能力者ではあるのでしょうけど、聞いた感じTASさんほど万能ってわけじゃないですよね?
そんな風に声を掛けた私に、彼女は不思議そうに首を傾げ。
「いや、未来視は関係ないわよ?」
「はい?」
「いやいや、そもそもそれ以外にも、今の私にはおかしなところがあるって最初に説明したでしょ?まぁ、これに関しては私だけ、って話じゃないけど」
「部長さんだけじゃない……?って、あ」
変なことを言い出す部長さんを訝しげに見たのち、そういえばそうだった、と目を見開く私。
「……ああなるほど。今の俺達は憑依しているようなものだから、戻る時の流れにみんなを同乗させようってことか」
「そういうこと!流石我が相棒、まさにツーカーね!」
そういえばこの人達、こっちの彼女達の上に私の見知った彼女達が覆い被さってる状態なんだった、と声をあげた私なのであった。