「なるほど。精神の移動はタイムパラドックスに引っ掛からない。なら、
「そういうこと!それに、意識だけの移動の仕方とか、そっちは知らないでしょ?」
「どうかなー……?」
「おおっと?……ま、まぁ仮に知ってたとしても、それがそっちの世界を乱す要因にはなってないんでしょ?なら、私達の移動に相乗りする分には問題ないと思うわよ」
確かに、自発的移動ではなく他者による移動に巻き込まれる、という形なら問題はないかもしれない。
そもそも『向こうの世界の人間が』次元移動をポンポンするのが問題なのだから、明らかに別世界の存在である彼女達なら特に問題はない、かも?
「まぁ、その場合私達は貴方達を送り届けた時点で解散、ってことになっちゃうけどね」
「おっと、それは何故?」
「貴方達の世界、余所者には厳しいんでしょ?そこから世界が揺らぐから、みたいな感じで」
「あー……」
そういえばサンタとかよくない、みたいな感じでお帰り願ってたっけ……。
一応、密かにやってきてずっと滞在している、みたいな人もいたけど、最終的には帰っていったはず。
となれば必然、部長さん達も向こうに長居するのはよくないだろう。
なんなら、あちらの結界?に阻まれて追い返される可能性もあるような。
「ん。TASなら問題ないかもだけど、流石に彼女にそのレベルのパワーはない」
「ダミ子君の能力?を突破できるほどじゃない、ということだね」
「んー、今まで実感してなかった彼女の有り難みがこうして裏目に回るとは……」
「いやまぁ、私達がついていったところで戦力的には無意味だからいいんだけどね?」
知らなかったでしょうけど、私達日常作品世界の人間なのよ、と肩を竦める部長さんである。はは、面白い冗談だ。
まぁそれはそれとして。
とにかく、元の世界に帰る目処が付いたのなら、後は帰るだけ。
……なんだけど、そこで申し訳なさそうに手を挙げたのがTASさんであった。
「お姉さんには悪いお知らせなんだけど」
「はい?私?」
「暫くお姉さんのままでいてね」
「
そうして告げられたのは、何故か暫くこの姿のままでいろ、とのお達し。
いやなんでさ、と思わず聞き返したものの、返ってきたのは「既に向こうにお兄さんがいるから」という、一回聞いただけでは意味のわからない言葉なのであった。
「……あー、もしかして『一つの世界に同じ人間は二人存在できない』的な?」
「はい!?」
「そう、それ」
「えー!?」
今更!?
……いや、本当に今更だろう。
というか、そんなこと言ったらTASさんだってそうじゃん、と主張する私だけど……。
「お姉さんが今すぐ私と同じことができるレベルまで成長すればいける。そうじゃないならID被りが回避できないからダメ」
「ID被り!?」
逆に聞くんだけど今の私ID違うの!?何気に自己同一性の危機ってやつじゃねそれ?!
……なんて慌てふためく私に、TASさんは「その辺はさっきの話と同じ。あくまで体のIDの話だから精神の方は無関係」と返してきたのであった。
そっかー、なら問題ないかー。
「ソレで納得するんデスか……?」
「いやまぁ、そこら辺の詳しいことはよくわからんので、『TASさんが言うならヨシ!』ってしとかないとこんがらがるというか……」
「えぇ……」
……可哀想なモノを見る目で日本被れさんに見られたけどヨシ!
まぁともかく、暫くの間私は私のままで過ごすしかない、というのは確定らしい。
となると、こっちの俺と対峙した時私戦力にならなくない?いやまぁ、元の姿なら戦力になるとか、そんな甘ったれたというか自信過剰なことを言うつもりはないけど。
「そう。お姉さんは現状邪魔。だから向こうに戻ったら、できる限りうちから遠く離れた場所に逃げて」
「は、はぁ……」
やだ、露骨に戦力外通告されてる……。
いやまぁ、仕方ないんだけどね?実際私がいて何の役に立つんだ、と言われたらちょっと困るし。
そもそも向こうに着いたら、始まるのは恐らくTASさん同士による怪獣大決戦だろう。
そこに挟まる余地がある人物なんてほとんどおらず、そうしてあぶれたメンバーで残ったこっちの俺を確保すれば無駄がない。
……つまり、私がいてもプラスにならない。
逆に向こうのTASさんが私を標的に攻撃を飛ばしてくる、とかしてきたら庇う要員が必要になる可能性だってあるだろう。
考えれば考えるほど、即刻戦場を出た方がよいとなる辺り、私の戦略的価値の低さよ……と悲しくなってくるというか。
まぁ、今更その辺りでくよくよするつもりもないけどね!守られる男子サイコー!いやその発言はサイテー!
「……先生ってヤッパリ独特デスよね」
「はっはっはっー生徒の言葉の刃が痛い!」
日本被れさんって結構ズバズバ言ってくるよね!
そんな感じで精神のオーバーキルによって地面に伏したりしつつ、私達は帰る準備を進めて行くのでありました。