はてさて、どうにか落っこちて行く向こうの俺に追い付いた私達。
彼は現在気絶しており、さっきまでの悪鬼のような表情は既に影も形もない。
変わりに穏やかに目蓋を閉じて眠っている。……眠ってるよね、死んでないよね??
思わず胸に耳を当て確認してしまう私である。
……うん、呼吸も浅いけどしてるし、脈もしっかりあるから大丈夫そうだ。
で、そこまでして捕まえた彼をどうしようか、という話になったのである。
「いや、その辺に転がしておけばいいのでは?」
「いやそれ起きた時に絶対後頭部痛くなるやつじゃん。だからなんか下に敷いてあげるのがいいんだけど……」
「生憎私は彼に顔を見せない方がいいからね。同じ理由でクッションに変身とかもなしだ」
「なるほど……」
さっきも少し言っていたが、どうやら向こうの俺とMODさんが顔を合わせるのはよろしくないらしい。
……流石の私もここまで言われれば気付くというもの。多分向こうの俺、向こうのMODさんに振られたんだな……。
でもまぁ、それも仕方のない話。
彼が私の予想通りであるならば、あっちにふらふらこっちにふらふらしていたのだろう。
そりゃまぁ、愛想だって尽かされるというもの。まさに自業自得というやつなのであった。
なのでまぁ、その辺に放置しておけというMODさんの主張もわかるのである。わかるんだけど……。
「……自分と同じ顔がそこらに転がされてるのが嫌すぎる……っ!」
「あーうん、それに関してはなんとも……」
多少小綺麗になっているとはいえ、目の前にあるのは正しく(男性時の)自分と同じ顔の人物。
……端的に言うと、そんなものが無造作にそこらに転がされているのは違和感とか忌避感がヤバいどころの話ではないのである。
なので、何かないかなー?……と暫く思考した結果、
「ええ……?」
「いやまぁ、私もどうかと思うよ?なんというかこう、ナルシシズム的なモノを感じなくもないというか……でもほら、まさか日本被れさんにやらせるわけにも行かないし……」
「ソレは当たり前デース!乙女の肌は安くナイデスから!」
ええまぁ、はい。
そのまま転がしておくと後頭部が痛むだろう、というのであれば何かを枕にする他あるまい。
とはいえ近くに枕になるような柔らかいモノはない。
そういうの一番手軽に用意できるMODさんが参加不可なのだから、用意できるものもそう多くはない。
……となると、今出せる選択肢など
無論、それに関してもMODさんは言うに及ばず、日本被れさんにもやらせるわけには行かなかったわけだが。
ええまぁ……何せこの俺、プレイボーイである可能性が大なのでね……(遠い目)
見知らぬ?女の子が自身に膝枕をしている、となれば必ず口説きに掛かるだろう。
そっからまたフられるとかになったら、先までの比ではない暴走が待ち受けているかもしれない……。
その点、私の場合そういう問題はない。
敢えていうなら自分に膝枕をする、というある種陶酔しているかのような状況にどういう反応が返ってくるかわからない……というところが問題だが、それに関しては多分純粋に「気持ち悪っ」程度で終わるだろう。性別違おうが
そんなわけで、地上に降り立った私達は向こうの俺を囲うようにして、彼が目を覚ますのを待っていたのだった。
「……あれ?そういえばTASさんは?」
「彼女なら、もう一人の自分と対決しに向かったよ。……予想が間違ってないなら、多分もうすぐ戻ってくると思うけど」
「予想?」
そんな中、ふと脳裏を過ったのは先んじて移動していたはずのTASさんについて。
彼女は私達を先導するように飛んでいったはずだけど、いつの間にか周囲から居なくなってしまっていた。
そのことを不思議に思い、MODさんに行き先を尋ねてみたわけなんだけど……予想?一体何の予想?
質問に質問で、というわけではないけど別種の疑問点が生まれてしまったことに、思わず困惑する私である。
いや、というか今の言い方だと、対決と言っときつつ大したことにはならないと明言しているようでもあるんじゃ……?
その疑問が私の口から溢れる前に、頭上に指す黒い影。
どうやら彼女の言う通り、TASさんが決着を付けて戻ってきたらしい。……らしいのだが、地面にできてる影が二つ分なのはこれ如何に?
いやまぁ、降りてきた彼女
私が見る限り、二人とも大したダメージを負っていそうな感じには見えないのですが???
そんな私の疑問を感じ取ったのか、向こうのTASさん(なんかちょっと垢抜けた感じの見た目)は、何処と無く得意気な表情でこう告げたのだった。
「私の見立ては完璧。この勝負もろたで
「むぅ……」
……いや、なんで似非関西弁?
そんな私の疑問は、誰に届くでもなくスルーされたのであった……。