さて、垢抜けた方(具体的にはソシャゲとかで新キャラ実装みたいになった時に、原案から書き直されたみたいな感じ)のTASさんの告げた、「私の見立てに問題はない」的な発言。
それに一体何のことやら?……と首を傾げた私なのだけど、
いや、なんでこっちを見てそんな顔を……もしかして私、何かやらかした?
そんな風に尋ねてみるものの、彼女は「私の口から言うより体験した方が早い」とかなんとか述べたのち黙り込んでしまう。
……いや、どういうこっちゃ?
なんて言っている内に、膝から伝わる感触が変化する。
どうやらそこに乗っけていた向こうの俺が身動ぎしたようで、見れば閉じていた目蓋を開こうとしている最中であった。
あれだけボロボロになったにも関わらず、無事に目が覚めたことにほっとした私は、なんとはなしに彼の顔を眺め続け……。
「──螟ゥ菴ソ?」
「へぇあ?」
──え、もしかしてまだ言語野バグってるんです?
思わず首を捻った私に対し、何事かを口走った向こうの俺は何やら驚いたような顔をするばかりで。
「はいお兄さん一先ず帰るよー」
「縺ゅ▲縺。繧?▲縺セ、豁「繧√※豁「繧√※縺イ縺」縺ア繧九↑!?」
「ええ……?」
そんな彼は、ひょいっと伸ばされた(向こうの)TASさんの手によって私の膝の上から引き摺り落とされ。
そのまま地面にぶつかって潰れた蛙のような声をあげたのち、彼女に足を引っ張られながら地面を引き摺られて行ったのであった。
……いやあの、何のことやらさっぱりと言うか、そもそも何も解決してないというか???
そんな私の疑問を察知してか、向こうのTASさんは突然ピタッ、と立ち止まるとこちらに振り返り。
「──また来る。それじゃ」
と言い残して、今度こそ寮の敷地内から出ていってしまったのだった。
いや、なんなのあの人……(困惑)
「……ええと、つまりどういうこと???」
「今回のは単なるフラグ立て」
「はい?」
「向こうが立てたかったフラグは二つ。こっちの世界の座標の入手と、私達との顔合わせ」
「はい???」
まるで春一番のように、あっという間に吹き抜けて行った向こうのTASさん達。
当初の予想では、こっちで何か大それたことをするつもりなんじゃないか、なんて思われていたんだけど……うん、結局私達と向こうの俺がドッグファイト擬きしたくらいだよね、今回の話って。
そんな風に困惑していた私に、解説をしてくれたのはいつも通りTASさんである。
彼女の言うところによれば、今回は『大それたこと』をするための前準備に過ぎないのだという。
「……TASさんなのに?」
「TASなのに。……革新的な短縮手段が見付からないうちは、地道に最短を積み上げるしかないのが悲しいところ」
「あー……」
わざわざ本番と準備とで行動が別々になっている、というのはなんだか(TASさんにしては)回りくどいな、と思った私はその辺りを尋ねてみたのだけれど、その辺はTASさんも聞かれることをわかっていたのかあっさり肯定されてしまった。
……どうやら、バグとか見付かってない時のTASみたいなことをしている、という理解でいいらしい。
ゆえに、いつものTASさんらしく本番と準備を一纏めにする、みたいなことができてないのだとか。
いやまぁ、いつものと言ってもあっちのTASさんはこっちのTASさんと別人なわけだが。
「でも大体同スペック。だから私が無理だと思うのなら向こうも無理、それは逆も同じ」
「なるほど。ということは、TASさんは向こうのTASさんの目的もなんとなくわかってると?」
「……どこも大変だなって思った」
「はい?」
なお、TASさん本人は向こうのTASさんの目的について口を噤んだ。
何やらその辺を口にするのは変なフラグが立ちかねないのでよくないとかなんとか。
……それだと結局向こうがまたやってくるのを待たなきゃいけないのでは?……とか思わなくもなかったのだが、現状それが一番いいと言われてしまうとなんとも。
「そういえば、貴方様はいつまでその姿でいらっしゃるおつもりで?」
「え?あー……なんかこう、向こうの俺のこと見てたら戻る気が地味に失せてきたというか……」
「…………」
「え、何その沈黙?どういう感情???」
なんか『この人はまったく……』みたいな目で見られてるんだけど?
騒ぎを聞き付けてやってきたばかりのAUTOさんに、そんな風な視線を向けられる理由がまったくわからないんだけど???
そんな風に疑問を溢すも、AUTOさんは後から庭に出てきた面々と顔を合わせ、深々とため息を吐き出すばかり。
困った私が同行メンバーの方に視線を向けると、
「……ということなんだよ」
「ハァ、なるホド。……先生って色々アレデスよね」
「アレって何!?」
そっちもそっちで、AUTOさん達と変わらないような視線を向けてきていたのだった。
……私をそんな目で見るんじゃねぇ!?
そう叫んでみるも、向けられる眼差しは変わるどころかさらに残念なモノを見る目に変化していったのであった……。