うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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頑張ればできるけどいつも頑張れというのは酷い

「ううむ、なんだかんだ日が変わる前には終わったね……」

「次の日の朝になることを若干覚悟してましたからね。そうならなくて良かった」

「うむ、大義である」

 

 

 ……この人なんか普段より尊大だな?

 あれかな、性転換という『普段の自分との変化』を受けて、微妙に気が大きくなってるとかそういうあれ?

 

 

「いえ、多分見た目に合わせた態度を取ろう、とか思ってるだけですよこれ」

「……なるほど」

 

 

 そんな風に疑問を(脳内で)溢せば、何やら訳知り顔で話し掛けてくる新聞部ちゃんである。

 

 ……でもまぁなるほど、確かに現状の成金さんは普段の彼とは比べられないくらいにファビュラス。

 ならばその見た目に合わせた態度を取ろう、みたいな意識の変化があってもおかしくはないか。

 まぁ、そんなことを言われた当人は、微妙に眉根を寄せていたわけなのだが。

 ……普段ならもうちょっと顔に出てるだろうから、そこら辺も頑張ってると言えなくもない、かも?

 

 

「……とりあえず、今日はもう終わりか?ならこの姿を戻して貰いたいのだが」

「おおっと、それに関しては生憎AUTOさんかTASさんに頼むしかないから、早くて明日の朝だね」

 

 

 そんな風にこちらの視線を受け止めていた成金さんだが、暫くしてはぁ……と重々しいため息を一つ吐いたのち、終わったんだから元に戻せよ(意訳)、みたいなことを告げてきた。

 まぁーうん、いい加減気も晴れたし元に戻すことは吝かじゃあないんだけど……生憎これ、私がやったわけじゃなくて他の人にやって貰ったものだからねぇー。

 なんで、戻そうと思ったらそのやってくれた人──今回ならAUTOさん、もしくは性別の変換技能を覚えているTASさんに任せるしかないのである。

 

 で、現在の時刻は大体深夜十二時前。

 ……うん、普通に二人とも寝てるはずなので、わざわざこのために起こすのは忍びない。

 なので、戻すのはどれだけ早くても明日の朝……二人のうちどちらか早めに起きてきた方に頼んでから、という話になるのであった。

 

 そう説明すると、彼女は「……確かに、妾の用事に二人を突き合わせ叩き起こすのは憚られるか」と述べ、渋々納得してくれたのであった。

 そうと決まればやることは一つ、とっとと帰ってとっととご飯を食べてとっとと風呂入って寝る!

 そんなわけで、月が照らす夜道を三人で帰宅し始めたのだけれど。

 

 

「……なんか足音しない?」

「言われてみれば、後ろの方に何やら気配を感じますね」

「む、まさかストーカーか?」

「いやいやそんなまさか」

 

 

 暗い夜道を三人で進む内、私達の足音に紛れるようにして別の足音が混ざっていることに気付く。

 こちらが止まれば音も止まり、こちらが進めば向こうも動き出す……。

 そんな感じなものだから、成金さんからストーカーなのでは?……みたいな言葉が出てきたわけなのだけれど。

 

 ストーカーも何も、ここにいる面々は本来男性である。

 また、現在の姿も私以外の二人は今日偶然変化したもので、付きまとわれるような理由にはなり辛いだろう。

 学校内で変化したのだから、そもそも人目についてないわけだし。

 

 まさか帰る途中でたまたま見掛けて付いてきてる、なんてこともないだろう。

 学校から寮までは徒歩十分も掛からないのだから、そもそもたまたま見掛けても追っ掛けられる前に普通に寮に付く。

 対して、件の足音は冷静に考えてみると学校を出てほぼすぐのタイミングで加わっていた。

 

 ……要するに、突発的犯行でもないと説明が付かないのである。

 

 

「……いや、ご自分のこと忘れてらっしゃいます?もしかして」

「はい?自分?」

「貴方、暫く女性のままだったでしょう。貴方目的のストーカーなら普通にあり得る話では?」

「…………」

「なんですその呆けた顔?」

「私がそういうのの対象になるとは思ってなかった……」

「ええ……」

 

 

 などとあれこれ言っていたら、呆れたような新聞部ちゃんから「貴方目当てでは?」との指摘が。

 

 ……そういえば今回結構長いことこの姿のままだから、どっかで一目惚れとかされててもおかしくはないのか……?

 いや、正直見目を引くのは他の不思議ガールズだろうから、私がそういう風に見られているというのは想像付かなかったわけだけど。

 そんな風に述べた私に、「そもそもストーカーされるのが女性のみ、というのも大抵おかしな認識では?」などという成金さんのツッコミも飛んできたのであった。

 

 ……いやほら、男の方の私とか余計にそういうのとは無縁というか。

 仮にあったとしても「かわいい女の子を周囲に侍らせやがってぇ」っていう同性からの僻みになるというか。

 そこまで言うなら変わってもいいぞ、但し一日に何回死にかけるかわからんが……みたいに言い返したら逃げられたし。

 

 

「……などと言ってるうちに気配が消えましたね」

「え、マジで?」

「なんだったのだ一体……」

 

 

 そんな感じで話しているうちに、後ろの方から漂っていた何者かの気配は霧散していた。

 ……いやまぁ、私は気配とかよくわからんので、新聞部ちゃんが言うのが正しいなら……って話だけど。

 

 ともかく、謎の気配に首を捻りつつ、その日の私達は素直に寮に戻ったのであった……。

 

 

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