はてさて、突然の来客を応接室に通した私(と、付いてきたCHEATちゃん)。
室内のソファーに腰を下ろした人物は、きょろきょろと部屋の中の調度品などを眺めていたけど……。
「──なるほど、及第点です」
「はい?」
唐突に納得したように言葉を吐き、それを聞いたCHEATちゃんは「何言ってるのこの人」みたいな顔をしていたのであった。
……まぁ、いきなり人の家を品定めするような発言しだしたんだから、そりゃ困惑するよねぇ。
人によっては「何言ってんだこいつ」ってキレだしてもおかしくないかも?
まぁ、私としてはキレるも何もないのですが。なんでかって?
「それにしても……兄はどこに?どうせ怠惰な毎日を送っているのだろうと顔を見にきたのですが、代わりにいたのは副寮長?らしき人物だけ。……隠し立てしている、というわけではありませんよね?」
「いえ、あの人でしたらTASさんに連れられて暫く留守にしておりまして」
「は?何言ってるもがっ」
「……なるほど、またですか。よくもまぁ飽きもせず……」
こちらを品定めするかのような視線を寄越してきた少女に、動揺をおくびにも出さないように細心の注意を払いつつ答える私。
……途中で余計なことを口走ろうとしたCHEATちゃんに関しては、口封じで対処。
なお、その場面を目撃していた少女はその光景を不思議に考えることもせず、今この場に居ない相手に思いを馳せていたのであった。
……はてさて、一連の会話の流れでなんとなく気付いた人間もいるかもしれないが、一応明言しておこう。
目の前のこの少女、何を隠そう私……もとい俺の実の妹である。
うちの面々の誰とも似付かぬ長い黒髪、および気の強そうなつり上がった瞳。
我が妹ながらまったく似てないな、となることうけあいの彼女は……その性格に関してもまったく
こうして語気は強いものの、基本的には面倒見のよいよくできた妹である。
「……兄さん、私のことそんな風に紹介していたんですね」
「ええまぁはい、自慢の妹だと仰っていましたよ?」
「……はぁ。そう思っているのなら、常日頃からわかりやすく示してくれればよいでしょうに」
(どういう気持ちでその言葉を吐いてんのお前、とでも言いたげな顔)
(ツッコんでくれるな、という顔)
なお、ここまでしっかりしている彼女だが、年齢的にはCHEATちゃんと同じくらい、もしくは一つ下に当たる。
そう考えると、CHEATちゃんとかもうちょっと落ち着きを得るべきでは?
……とか思ってたことを悟られたのか、机の下で彼女の蹴りが飛んできたが私は元気です()
「……?今、何か鈍い音がしませんでしたか?」
「気のせいじゃありませんか?ともかく、貴方様のお兄様は現在不在ですが……どうなさいます?」
「どうもこうもありません。私としては転入の手続きや住居の準備もありますので、今日のところはお暇させて頂きます。──本格的な挨拶はまた後日、ということですね」
「はぁ、本格的な挨拶は……後日???」
ともあれ、彼女が俺の顔を見にきただけならば、生憎タイミングが悪かったと追い返すより他ない。
その辺を匂わせるように言葉を返したんだけど……あれ、おかしいな?なんかこう、聞き捨てならない台詞が流れたような気がしたんだけど?
思わず困惑する私に、妹は一瞬怪訝そうな顔をしたのち、「ああ」と手を叩いて。
「安心して下さい、この寮に入るとかそういう話ではありませんので。単にこの近場に引っ越しますので、ついでに挨拶に伺っただけのことですので」
「はぁ……はぁ???」
「兄から聞いていませんか?家族一同この辺りに転居することになったのですが」
「(私自身)何も聞いておりませんが???」
「……あー、それに関しては謝っておきます。多分、押さえられてますね」
「はい?」
とんでもない爆弾発言を、こちらに放り込んでくれやがったのでした。
……ええと何?妹だけじゃなく、うちの両親までこっちにやってくると?田舎くんだりから???
思わず困惑する私に、妹はああ、と再度ため息を吐いたのち、知らなかったのも無理はないと溢した。
恐らく
「誰って……よくご存じなのでは?今回も兄を引き連れ、何処かへと行脚している厄介な
「……TASさんかー」
「ええ。多分『そうした方が面白い』とかなんとか言って、こっちが送った便りを全て彼女が隠している……なんてパターンに決まっています」
「あー……」
ありうる、すっごいありうる。
トラブルは起こしてこそ、寧ろ幾らでも大挙してやってこい……みたいなノリの彼女のことだ、うちの家族がここに越してくる、なんてイベントぎりっぎりまで秘匿しててもおかしくはない。
問題があるとすれば、そうして秘匿していたことを忘れて、もしくは伝えないままに何処かへ行ってしまったことの方……。
ともかく、ここで押さえておくべきことは一つ。
(また新しいイベントの始まりですね、わかります)
これが、ややこしい事態への序曲でしかないのだろう、というその一点だけだ。