「」
「……すっかり固まってしまいましたわね」
「まぁ、唐突に自分が核ミサイルのスイッチ持たされてた、みたいな話を聞かされればねぇ」
さっきまでの話を聞いて、すっかりフリーズしてしまったCHEATちゃん。
完全に行動を停止してしまっているが、それだけさっきまでの話が衝撃的だった、ということなのだろう。
いやまぁ、さっきの偶々云々は、それこそ猿が無秩序にピアノを弾いて有名曲になる……くらいの低確率でしか引けない可能性らしいので、そこまで気にする必要性のあるモノでもないとのことだが。
「でも、他所の世界にアクセスできるようになるのは色々便利」<ニュッ
「軽率に二人に増えるの止めない?」
「というか、それって本当に増えてましたのね……残像とかではなく……」
「そっちもできる。やれることは多い方がいい」<シュババババ
「無駄に多芸だね君……」
なお、TASさんに関してはいつも通りである()
……いや、軽率に増えたりしてるんじゃないよ!君が簡単に増えたら、そっちの方が世界の危機だよ!
「……?以前にも多数決を押し返した時には増えてたけど」
「あれは見た目別の人達だったじゃん!TASだって言ってもTASらしいこと全然してなかったじゃん!」
「……言われてみれば。じゃあ、四人同時TASの記録とか更新すればいい?」
「そもそもの話、四人でRTAするだけでわりと意味不明な記録を叩き出せるんじゃないかな……」
「なるほど。じゃあそっちも予定に入れておく」
「入れておくんだ……」
後日、配管工なレースゲームでショートカット有りの最短記録×四、みたいなことをしてTASさんが話題をかっ浚うのだが、それはまた別の話である。
「私はCHEATを捨てるべきなのかもしれない……」
「それを捨てるだなんてとんでもない」
別の日。
TASさんが出掛けたのを見計らって話し掛けてきたCHEATちゃんはというと、自身のアイデンティティを投げ捨てるかのような相談を、これまた唐突に俺に対して持ち掛けて来るのだった。
……いやまぁ、多分以前のTASさんの話を真に受けて、思い詰めた結果だろうとは思うのだが。
「真に受けたって……あれ冗談だったの!?」
「いんや、ホントの話。あのあとTASさんが変な言葉を夜空に投げ掛けたら、『じゃあ侵略止めるわ』って信号が宇宙から返ってきたし」
「なんかサラッと地球の平和を守ってる!?」
余裕があるならちゃんと墜落させたかった、というのはその時のTASさんの言だが……多分あれは冗談ではなく本気だった。
なので、シューティングゲームじゃないんだぞ……というツッコミを呑み込んだ俺は、誉められて然るべきだと思う。
TASさんってわりと短気だから、そんなこと言ったらムキになって墜落させに掛かってただろうし。
……なお、後日滅茶苦茶モブ顔の見覚えのない人に、『あの時はどうも』って感謝をされてしまったため、この選択に間違いはなかったと間接的に示されたりもしたけど俺は元気です()
精神的ダメージ多すぎて、命が幾つあっても足りそうにねぇ!
「ほらぁ!?そういうのいっぱいあるんじゃん!どう考えても居るだけで被害倍増じゃん!!やっぱり捨てた方がいいってこんな力!!!」
「でも、TASさん曰く『別に私が居なくても、多分そのうちやって来ただろう脅威』らしいから、そういうのに対処するにはいいんでないの?」
「そ、それは……」
確かに、CHEATちゃんの言う通り過ぎた力が余計な事態を引き寄せている、という可能性は否定できない。
だがもし、仮にその力を捨てたとしても。結局その脅威がやって来るモノであるのなら、今それを捨てるのは対処法を一つ潰すことにも等しい、ということになるわけで。
……その辺り、能力持ちの悲哀が見えるなぁ、というか。
いやまぁ、TASさんは端から見たら、かなり好き勝手にしてるようにしか見えんけども。
ともあれ、その好き勝手で守られている世界がある、というのも事実。……半ばマッチポンプにしか見えずとも、ここで能力を捨てるのは悪手である、ということは変わるまい。
「いやでも……」
「まぁ別に?CHEATちゃんが自信がない、ってんならそれでもいいんじゃない?」
「……は?」
「自分の力で世界を護れるって自負より、自分のせいで世界が滅ぶかもって恐怖の方が強いんなら、別に捨てたって誰もなにも言わないと思うよ?別に君に世界の命運を託したつもりもないだろうし」
「…………」
いやまぁ、なんで世界が云々の話になってるんだ、というのが正直なところなのだが。
この物語はあくまでもコンピューター用語に纏わる女の子達が、キャッキャウフフ(死語)する緩ーい話のはずなわけだし。……え、誰目線でって?誰目線だろうね……。
ともかく。
裏ではなにかえげつないことが起きているかもしれなくても、少なくともこの部屋の中ではみんなでゲームして遊ぶ、くらいが関の山。
ゆえに、世界の命運なんて投げ捨てても、別に誰も文句は言うまい。……無論、
「……上等だぁ、これからコードを打ちまくって、アイツにも負けないCHEATERになってやるぜぇーーっ!!!!」
「おお、その意気その意気」
自分が許せるのか、という煽りはよく効いたのか、こちらに捨て台詞めいたモノを投げ付けながら、部屋を飛び出して行くCHEATちゃん。……どこに行くつもりなのかはわからないが、まぁあの様子なら大丈夫だろう。
「……煽った?」
「うん、煽った煽った。乱数を回してくれる相手は多い方が良いでしょ?」
「……お兄さんも大概悪い人」
「いやまぁ、ああでも言わんといつまでもジメジメしてただろうからねぇ」
変に悩むより、時には突っ切った方がいいこともあるだろう。
特に、あの子みたいに
……なんてことを嘯きながら、今日は彼女の好きなモノでも作ってやろうかな、なんてことを思う俺なのであった。
で、これはオチになるのだが。
「……そういえば、どうやったら能力って捨てられんの?」
「セレクトボタン」
「いや、今やってるゲームの話じゃないんだわ」
そもそもの話、能力って捨てられるモノなのか?……ということを、伝説の星の戦士のゲームをやりながら疑問に思ったCHEATちゃんが、TASさんから暗に『そんなもの、うちにはないよ』されたことにより、私の悩みってバカみたいじゃん、とキレることになった……ということを記しておく。
捨てられないんなら、上手く付き合わなきゃね、みたいなやつである。