それでは、と言い残して寮を去っていく妹を見送り、その背が見えなくなったのを確認した私は、盛大にため息を吐き捨てたのであった。
無論、疲労とか困惑とか色々含めた結果、である。()
「……で、結局自分が兄です、って言い出さなかった理由は何?」
「そこら辺は
「……ん?妹さんの尊厳?姉ちゃんのじゃなくて?」
なんのこっちゃ、と首を捻るCHEATちゃんに対し、気にしないでとだけ溢す私である。……ヒントはあるので気付ける人は気付けるかもしれない()
まぁともかく、今現在気にすべきことは一つ。
これからこの街にうちの家族がやって来るということ、それからあの妹は多分うちに入り浸るだろう、というその二点。
前者はまぁ、親なら
生憎対処ミスると酷いことになる予感しかしない()
「何が問題なのかよくわかんないけど……それ、兄ちゃんが責められる系?ならいいじゃんって感じだけど」
「そういうんじゃないかなー」
「そっかー」
多分、「なんで性転換してるんですかキモいです無理」的なことを私が言われるだけならよくない?……的な台詞だったのだろうが、生憎……おっとこれ以上は言えねぇなぁ、妹の尊厳のため()
……正直この時点でもはや答えを言っているようなモノな気がするけど、本人が猫被ってるんだからそれを私が剥ぐのはよろしくないだろう。
そんなわけで、この一件に関しては明日の私に丸投げ。
次点で必要となる『TASさんへの連絡』について思考すべきだと具申する次第である。
「……?TASに言わなきゃいけないの?」
「うむ、少なくとも今すぐ帰るなんてこと言い出さないように、って意味で」
「……あ、そっちか」
折角今現在俺()は彼女と一緒に外出中、と誤認されているのである。
であるならば、そのまましばらく誤認して貰った方が都合がいいのだ、色んな意味で。
とはいえ、連絡しようと思ってできるのか、と言われるとそれはまた別問題。
TASさんってばスマホとか持ってないので、離れてると連絡手段が限られるのだ。
「……あれ?持ってないの?色々と便利だから、とかなんとか言って持ってるもんだと思ってたんだけど」
「『スマホにできることは全部私にもできる』とかなんとかドヤ顔で言うてはりましたが?」
「なんでスマホに張り合ってんのアイツ……」
写真と映像なら両手でフレーム作ればグラフィックビューアーに記録される。
光源が欲しいなら自分が発光すればいい、ふとした瞬間に知りたいことができても、未来視による間接検索によってある程度のことは容易く知れる……。
着の身着のまま、我が身一つで代替できる程度の機能しか持たないスマホなど重量分無駄……とはTASさんの言。
あとはまぁ、電波とはいえ『誰かと繋がっている』という事実が乱数に影響することもあるので、そういう意味でもあまり使いたくないとかなんとか。
暇潰しにしたって、彼女の場合椅子に座って物静かに本を読んでいる、というパターンの方が多いし。
「あ、でも最近流行りのネット小説を読みたいって時には、私のスマホを持っていくこともあるよ」
「……いや、それはそれでどうなん?」
どうなん、って言われても別に変なことするわけでもないのでお好きにどうぞ、としか?
……まぁそんな感じで、数少ない『スマホを使いたい』って気分の時にも、彼女が使うのは私のスマホ。
ゆえに、今の彼女は確実にスマホを持っていない、という話になるのであった。
「……あ、じゃあAUTOの方は?あっちはそういうこだわりないから普通に持ってるはず……」
「甘いなCHEATちゃん、AUTOさんはこの間スマホ版の太鼓ゲーをダウンロードしたことで廃人と化したから、今現在ゲームのやりすぎで充電切れてるよ」
「何やってるのあの人!?」
そこまで語って、次善の案としてCHEATちゃんが口に出したのが、実際にTASさんに同行しているであろう人物──AUTOさんへの連絡、という手段。
確かに、彼女は今時の女子校生(?)なので、普通にスマホを持ち合わせているのだけれど……生憎掛けても繋がらない可能性大である。
それは何故かと言えば、原則彼女はスマホを携帯ゲーム機扱いしているため。
電池が切れることを一種の区切りとして、それまでずーっと音ゲーしてたりするので意味がないのである。
なんでそんなことになったのか、というのは語るに長い理由があったりなかったりするのだけれど……。
ともかく、電池が切れても最悪充電の手段を持っているからそれでいいや、みたいな心境が働いていることは間違いない。
登録されてる連絡先が少ないのも理由かもしれない()
ほら、仮に電話できなくても念話使える相手ならそっちでいいでしょ、みたいな?
……問題があるとすれば、何処にいるのかもわからないような相手には流石のDMさんもコンタクト方法がない、ということだろうか?
こっちはここにいるのがわかっているため、向こうから連絡して来る分には問題ないんだけどね()
ともかく。
そんなわけなので、微妙に対処に困る案件が投げ込まれたなぁ、みたいな渋面を作る羽目になった私なのでしたとさ。