「はぁ、なるほど……貴方の妹さん、ですか」
「ええ。多分うちに入り浸ると思うので、適当に躱して頂ければと」
「今の私の姿はややこしいですからねぇ」
とりあえず何ともならないことに思考を割くのも勿体ない、ということで一先ず現在やれることをやっておこう、と部屋を出た私達。
最初に向かったのは食堂、そこで今日の夕食の準備をしていたDMさんに事情を話し、暫く来客に注意して欲しいとお願いしておいた。
何せ彼女、見た目だけならTASさん本人もしくはその姉、みたいなノリなので……。
そりゃもう、妹に見付かったらあれこれめんどくさいことになるのは目に見えている。
「なので、こうして前以て注意しておく必要があったんですね」
「……ねぇ、それわざと言ってたりする?」
「え?」
「……わざとじゃない方が質悪いんだけどなぁ」
なお、何故かCHEATちゃんに渋い顔をされる羽目になったのだが……あれ、私何かやっちゃいましたか?
少なくとも、現状取るべき行動としては間違いなかったと思うんだけど……。
そう聞き返すも、彼女は『わかんないならいいよ、もう』と投げやりな態度しか返してこないのであった。
そんな奇っ怪な動きをする彼女に首を捻りつつ、次の場所へ。
向かったのは成金さんと新聞部ちゃんの部屋。
二人は相部屋なので、こうして伝えることがある場合は一度で済むので楽でいいですね。
「そんなわけなので、二人とも宜しく」
「いや待たれよ。伝えたつもりになって去っていくのは良くないぞ?」
「え?伝わってない?」
「少なくとも近くにDMさんもいらっしゃいませんので……」
なんと。
基本的に周囲の人物が人の思考を読むのがデフォであったので、今しがたのやり取りで全て伝わっているものだと思ったのだが……生憎そうでもないらしい。
少なくとも、この二人に関してはそういうのはできない、というように思っていて間違いないようだ。
「じゃあまぁ改めて。うちの妹が暫く入り浸ると思うので、可能な限り回避して下さい」
「……それは何故?」
「酷いことになるのが目に見えてるからです」
「わぁ、見事なまでに死んだ瞳」
ええまぁ、はい。
この二人は現在私と同じく
その結果、妹とは会わせるべきではない地雷のような存在になっているのだ。
……いやまぁ、うちの妹は元の二人を知らんので、仮に出会っても『元からこうですよ?』って顔をしておけばある程度はごまかせるとは思うのだが……。
「今の二人の部屋の立地が……ねぇ?」
「……ああなるほど。入り口付近に案内板がある以上、見た目女子でしかない妾達がこちらに居ることに違和感を持たれる恐れがある、ということか」
「まぁ、この寮の中では唯一の男子だった面々が軒並み女子になってるから、単に部屋が足りないアンド男子が居ないのでこっちも使ってる、って感じにごまかせなくもないけどね」
「まぁその場合、嘘に嘘を塗り固める形になるわけですからあまりいい状況とは言えませんけどね」
そう、何より二人の部屋の立地がよろしくない。
入り口付近にある案内板や食堂の手前の分かれ道などなど、至るところに『建物の半分は男子寮扱い』ということを示す証拠が散らばっているのである。
結果、今の二人は『男子寮の中に何故か居る女子』みたいな、それこそ創作でしか見ることのないような状況に陥っているのだ。
……まぁ実態は『女子寮に何故か居る男子』の方が近いのだが、その辺は置いといて。
ともかく、現状二人の置かれた環境に違和感があることは事実。
流石にそこから真実にたどり着くことはないだろうが、最悪『うちの兄は男子寮に女子を密かに囲っている』とかいう、根も葉もない噂をでっち上げて
それゆえ、咄嗟の言い訳として『現在寮内に男性は居ない』という嘘を共有しておこう、という話になったのであった。
……まぁ新聞部ちゃんの言う通り、嘘に嘘を塗り固めた形になるため、余計にボロが出やすい状態になってしまったとも考えられるのだが。
あと、そこをごまかせても『結局、うちの兄が女子生徒達に囲まれていることに変わりはありませんよね?』とか言われたら一貫の終わりである()
「…………」<ジーッ
「……ええと、どうかしたCHEATちゃん?私の顔を穴が空きそうなくらいに見つめてるけど」
「べっつにー。丁寧丁寧に重ねていくんだなー、って思っただけ」
「???」
なお、ここでもCHEATちゃんの渋い顔が披露されることとなった。
わけわからん、とばかりに二人の方を見るものの、両者共によくわからん、と首を左右に振るばかりである。
……まぁ、気にしても仕方ないし、本人も気にしなくていいと言ってたし、とりあえず他にやるべきことを優先しよう。
そう考えた私は、二人にくれぐれも宜しくとだけ伝え、彼らの部屋を後にしたのであった……。