「……ふむ。では監禁されていたなどということではなく、」
「え、ええそうデス。この地下庭園で野菜とかの様子を見ていたんデスよ私達。ネー?」
「ね、ねーですぅ。室内栽培ですので、こまめに様子を確認する必要があるんですぅ」
「なるほど、なるほど……」
……閉じられていた扉を見付けたのではなく、あくまでそこから出てきた日本被れさんと、中にいたダミ子さんを合わせて見付けたというだけだったからこそ、まだなんとかごまかせる……。
みたいな感じで、妹への説明をする二人を眺めている私である。
……その辺の指示はDMさん経由の念話によるものだが、ともあれギリギリにもほどがあるというか……。
これ、ちゃんと説明してなかったら『地下に女の子囲ってた』とかなんとか言われかねないからねマジで。
そんな事実はこれっぽっちも存在しないのだけれど、生憎それを弁明する
……いやまぁ、二人にやらせるのも大概なんだけども。
ともかく、なんとかぎりぎり首の皮一枚で繋がった
そんなわけで、さっさと下に降りていってしまった妹を追い掛け、地下空間へと足を踏み入れた私なのだけれど。
「……ふむ、よい土ですね。これは確かに庭園としてよく整備されている」
(……いや、どういう立場の見方なのそれ?)
彼女は地下空間を順に見て回っており、そこの設備を確認しては小さく頷いている。
……頷いているのはいいのだけれど、正直何目線なのかよくわからんというか。
いや、お前さんあくまで私の妹なのであって、特に何かの専門家とかじゃなかったよね?
とはいえその辺りを私がツッコむことはできない。
なんでそんなことを知ってるのか、と彼女に聞き返されたら困るどころの話ではないからだ。
……いやまぁまだごまかせるとは思うけど、同時にごまかしを積み重ねる度にバレた時の落差が酷いことになりそうな気が、ひしひしとしているというか……。
え、CHEATちゃんが『今さらそこ気にするの?』みたいな顔してるって?
ともかく、このまま妹に好きにさせてる方が問題なのは確か。
なので、付かず離れず彼女について移動するのだけれど……。
「……これは……なるほど、そういう……」
(いやだからそれはどういう目線の台詞なんだ……?)
……やっぱり、彼女の発言がどうにも引っかかる。
何かを理解したように呟かれる彼女の言葉は、しかしてそこに意味がないとも思い辛い。
基本的には平凡なただのうちの妹のはずなのだが……何かこちらの知らないうちに、特殊な能力にでも目覚めていたり……?
(……流石にそれは思考が飛躍しすぎじゃない?)
(とは言うけど、じゃああれが形だけ──意味ありげに頷いているだけだと思う?)
(そう言われると弱いけど……)
「……?お二方、どうされましたか?」
「ぬぉわ!?」
念話ついでに視線をちょっと逸らしていたのが悪いということなのか、いつの間にやら目の前に戻ってきていた妹の姿にビビる私である。
なお目の前で唐突に飛び跳ねた相手を見て妹はしばしキョトンとしていたが、
「……ふふ。面白い驚き方。まるでうちの兄みたいですね」
「は、ははは……そ、そうですかー」
そんな感じの、なんとも反応に困る言葉を投げ掛けてくれやがったのでしたとさ。
……うん、内容的に気付かれてないんだろうけど、心臓に悪いので止めてほしいというか()
「……これで一通り、内部の見学は終わりでしょうか?流石に男子寮の方まで足を運ぶわけにもいかないでしょうし」
「ソウデスネー」
「……あの、差し支えなければお答えいただきたいのですけれど、副寮長さんは何かストレスの掛かるようなお仕事でもされていらっしゃるのです?先程からずっとこんな調子ですけど」
「……あーうん。そんなこともなくもないかなー」
「なるほど。……まぁ兄だけではなく、
……なんか、多方面に失礼なこと喋ってないこの子?
そんな疑惑が鎌首をもたげている今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は妹のわざとなのかそうじゃないのかいまいち反応に困る観察眼?的なものによって、精神的にも肉体的にも疲労感マックスの状態でございます。
このままだと真剣に過労死ならぬ不安死しそうなんだがこれ如何に?
いやだって、ねぇ?
隠し立てしておいた十二支達を見付けては「いい趣味ですね」と反応に困ることを言い。
部屋に引きこもってた同人ちゃんと偶然出会ったかと思えば「いい趣味ですね」と言って彼女を轟沈させ。
挙げ句の果てには、日課のランニングをこなして帰ってきたギャル子さんに「よいご趣味で」などと宣って宇宙猫にさせたりしていたのだもの。……困惑しか振り撒かない神か何か?
あとついでに神といえば、物陰から隠れるようにして窺ってたスタンドさんの視線に気付いたのか、何度か振り返って彼女を焦らせたりしてたし。
……もうさっさと帰ってくれ、と思ったね。
「今日はありがとうございました。これなら、時々顔を見に寄っても問題はなさそうです」
「はぁ、それは良かったで
「ええ。寮には入りませんが、我が愚兄の様子は押さえておくべき、と母からも申し付けられておりまして。生憎男子寮側は隠れ場所がないかどうか、確認することができませんでしたが……どうせ兄のことです。隠れるとなれば緊急時、リラックスできるような場所では何も隠す必要もないとばかりに堂々としているでしょうからあまり気にする必要もないでしょうし」
「 」
(……なるほど、なんだかやけに色々気にするなと思ってたけど、端からそれが目的だったのか)
何を目的にしているのかよくわからなかったけど、と念話でぼやいてくるCHEATを横目に、私はそもそも妹にこうして見て回らせること自体が間違いだったのだと、遅蒔きに気付いて言葉を失っていたのだった。
「……どうでもいいですけど、貴方兄に似ていますね、そうして驚いた顔とか」
「 」
くすくす笑う妹。
……追撃を置いていくのは止めて貰えませんかね?それどっちの意味?気付いているの気付いてないの?
まさか直接尋ねるわけにもいかず、去っていく彼女の背を無言で見送るしかない私なのでありました……。