妹の寮視察?から早数日。
相も変わらず帰ってくる様子のないTASさん達と、それゆえに戻ってこない俺を確認するため毎日足繁く通ってくる妹が新しい日常になりそうな今日この期。
とりあえず気付かれてないようだけど、これもいつまで続くものやら……と、微妙に気が気でない私である。
「……そんなにストレス掛かってんなら、いっそバラした方がいいんじゃねぇのか?」
「そんなことしたら次の日には私の死骸がそこらに転がることになりますが?」
「いや、妹のことなんだと思ってるんだよお前……」
「知らんのか、年の離れた妹なんて兄にとっては地雷以外の何物でもないわ」
「ええ……?」
せめて同性ならまだマシなんだけどね?
下手に異性だとジェネレーションギャップに加えてジェンダーギャップまで加わるので、些細なことで死亡フラグが立つ相手にしかならんのだ。
……この辺血が繋がってなくても当てはまるモノだと思うんだけど、その辺理解してない人が多いよね。
なんて、一部の人に喧嘩を売りそうなことを脳裏に思い浮かべつつ、改めて手元の作業に意識を戻す私である。
……ええ、実は妹とは別件で、普通にお仕事中なんですよね、具体的に言うと試験作成の準備中、というか。
「中間テストのお時間です。点数低いと特別指導なのでその辺御理解下さい」
「……誰に向けて話し掛けてんだお前?」
さぁ?とりあえずTASさん辺りは聞いてるんじゃないかな()
……一応そこでダラダラしている貴方、もといROUTEさん相手にも聞かせるつもりで話しているのだけれど、彼女相手に試験云々言ってもあんまり意味がないので期待はしてない。
「それは何故?」
「彼女もTASさんと同じような人だからですね。……まぁこの寮に居る人、基本的にはTASさんの同類ばかりなのですが」
「なるほど。CHEATちゃんに限らず特別な人ばかり、と。……これも兄の趣味なのですか?」
「どっちかというと校長さんの趣味かなって……」
「……あまり信じたくない話ですね。兄のような趣味の人間がこの世に二人も居るなどと」
「君はお兄さんのことなんだと思ってるの???」
「変態では?
「……くっ!否定できない!」
正確には引きずられていただけだとしても、それを苦に離れるでもなく一緒にいたわけなのだから、確かに同類扱いされてもおかしくはない!
個人的には否定したくてたまらないけど、便宜上別人のふりしてる私としてはその辺熱く否定するわけにもいかないので地味に詰んでる!
……そんなわけなので、私に変わってその辺否定して欲しいとばかりにROUTEさんに目配せをしたわけなのだけれど。
「……ノーコメント」
「そんな馬鹿な!?」
「いや、俺が否定すんのは無駄だろう、既に俺が同じカテゴリに入れられてるのは間違いねぇんだから」
「……それも確かに」
「おい???」
そういえばさっき、妹からの疑問にそうだよ、と頷いたばかりだったわ。
そりゃその状態で否定したところで意味など無いわ、などと納得してたら滅茶苦茶ROUTEさんに睨まれた。
隣に妹が居なかったら普通に叩かれてそうな顔である。妹様々だな!()
「では代わりに私がデコピンでもしておきましょうか?」
「ナンデ!?」
「ここ数日触れあって実感しましたが、貴方と兄はよく似ているようですので。──調子に乗っている、というくらいは判別できますから、ね?」
「 」
(……墓穴なのかどうか反応に困るな)
で、そうやって隙を晒した結果、こうして妹に後ろから刺されるのを繰り返してるわけなのですが。
……いやこれ、本当に気付いてないのかな?
実は最初からわかってて私の反応を間近で見て楽しんでるだけなんじゃないかな???
なんてことを思うものの、その辺を明確にしてしまうとそれこそ私の死が確定するので言及できずにいる私である。
……いやだってねぇ?物理的に死ぬのならともかく、そっちのパターンだと精神的に死ぬ方じゃないですか。
単に変態、とかなんとか言われながら張り倒されるのならともかく、にっこり笑いながら変態、とか言われた日には尊厳やら何やら全部破損してゴミ箱にポイだよ、二度と俺として復帰できないよ。もう女として生きていくしかないよ。
……みたいな、情けないやら悔しいやら、なんとも言えない状況に追い込まれるのが目に見えてるので触りにくいのである。
仮に予想が間違っていたとしても、そういうことを確認した時点で色々気付かれる程度には、妹の察する能力は悪くないわけだし。
「ところで、何やら唸っていたようですが今は何を?」
「ああええと、寮長がいませんので代わりに中間試験の問題の作成を。うちの面々は特殊ですので、全員に課す問題というのが中々難しいんですよね」
「なるほど……兄よりしっかりしているかもしれませんね、貴方は」
「いえいえ、貴方のお兄さんもしっかりしていらっしゃいますよ??」
(……これは遊ばれてると勘違いしてもおかしくねぇなぁ)
そんな妹が横から口を出してくるのを努めて冷静に受け止めながら、私は問題作成の手を進めるのであった……。