うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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そりゃまぁそうなるよねとしか

「いい加減外に出たいのですが」

「思ったより妹が頻繁にやって来るのでダメです」

「えー」

 

 

 はてさて、男子寮の側で強制ひきこもり状態になっている二人だが、どうにもそろそろ限界……といった感じの状態に陥っていた。

 幸い授業に関しては校長から『こっちに任せる』と全面的にその内容を委ねられていることもあり、実際には居ないのだけれど居る扱いにすることでごまかせているけれど。

 

 

「裏を返せば、そうせねばならぬほどに相手の追求が強いということでもあるわけだが」

「何か隠していませんか?……って滅茶苦茶聞いてくるんだよねぇ」

 

 

 成金さんの言葉に、思わず唸る私である。

 ……二人のことは現在、妹にはひきこもりの生徒ということで紹介しており、出てこない二人に対してカウンセリングのようなことも行っている……という扱いで、私はこの場まで来ているわけなのだけれど。

 同時に、どうにも進展が見られなければ本職に任せようとも思っている……みたいなことを話していたりするのだった。

 

 ……はい、全部二人を妹に会わせないために付いたその場しのぎの嘘のせいですね()

 

 

「いやでも仕方なかったんよ……確かに男子寮部分に足を踏み入れるのは宜しくない、って感じで最初のうちはごまかせてたんだけど、それもホント初日くらいのもの。次の日辺りからは『挨拶の一つくらいはしておきたいのですが?』って感じにぐいぐい来るようになって……」

「そのまま放っておくとこっちの制止を無視してそのままやって来そうだった、でしょう?何度も聞いてますから流石に覚えますよ」

「うん……」

「で、それを止めさせるために妾達はひきこもり、と咄嗟の嘘を付いたと。……センシティブな方向に誘導することで相手を止めるのは常套手段だが、それによって雁字搦めになることには思考が追い付かなかったのだな」

「それと、それによる私達への風評被害も、ですね」

「ううー……」

 

 

 人のことゴシップ野郎とか言ってた割に、ですね?

 ……などとこちらを揶揄してくる新聞部ちゃんに対し、無様に唸るしかない私である。

 事実なんだから素直に受けとるしかない、というやつだ。

 

 

「……それにしても、そんなにダメなのか?妹君に異性と言うのは」

「今でもわりとこちらの心を折りに来るのに、異性なら余計のこと叩き折りに来るので……」

「はた迷惑にもほどがありますねぇ」

 

 

 とはいえその罵倒もそこまで強いものではない。

 何度も何度も「君達を妹に会わせるわけにはいかない」と、その理由も含めて説明し続けたのが功を奏した形と言うべきか。

 

 ……うん、俺は長男だし実際言われても仕方ない感じだったからなんとかなったけど、そうじゃない相手なら普通に心が折られてもおかしくないからね……。

 何せ近所のヤバいおっさん相手に同じ様に毒舌を詰んだ結果、殴り返されるとかもなくそのまま相手のプライドを叩き折ってたくらいだし。

 

 単なる小学生だった時ですらそうなのだ、いつの間にやらTASさんに教えを受けていたらしい今の妹ともなれば、例え暴力に訴えたところで勝てる確率はほぼゼロになっていることだろう。

 

 

「まぁ、なんでそこまでして相手の心を叩き折りに行くのかは、正直よくわかってないんだけど」

「……もしかしてそういう性癖だったり?」

「人の妹を変態扱いするのは止めて欲しいんだけど?」

「おっと、これは失礼しました」

(……多少誇張して述べているところもあるのかもしれんな、この過保護な様子だと)

(もしくは本当に性癖、なのかもしれませんねぇ)

 

 

 ……二人の眼差しがどことなく生暖かい気がするんだけど、なんなんだろうね?

 

 まぁともかく。

 異性相手に強く発揮される妹の毒舌。

 それがもし()()()()()()()()()()()()()()()に向けられたらどうなることか。

 ……今のところ彼女の人生の中で、そういう不可思議な状態になっている相手との遭遇はないはず。

 ゆえに、その珍しい遭遇が彼女の反応をどういう方向に持っていくのか、というのが全く予想ができない。

 

 ゆえに、私としては妹と二人を会わせたくない、という結論に到達するのであった。

 ……え?私とダミ子さん?本当なら会わせたくなかったけど何か?

 

 

「まぁ別にそれだけに限らずとも、そもそもここに居る特殊な事情を持つ面々はみんな会わせたくなかったけど。ほんっとうに会わせたくなかったんだけど!」

「なんと力強い発言」

「どれほど嫌だったのか、という話だな」

 

 

 そりゃあね!なんか日に日につやつやが増してるような気がする妹の姿を見てると、()()()()()()()()()()()()()()()、ってなるのが普通だよねっていうかね!!

 でもその辺詳しく話すのはちょっと憚られるので、こうして二人にはひきこもり続けて貰うしかないわけでね!!

 

 

『なるほど、そんなに会わせたくなかったのですね』

「そうだよ会わせたくなか……ねぇ今の寮内放送だよね???」

『ええ。失礼かと思いましたが、懐に盗聴器を仕掛けさせて頂きましたの』

何やってるのこの人!?

『気になることは確かめずにいられない質ですので。──ところで、聞こえる音声的にそちらにいらっしゃるのは女性のようですが、紹介して頂いても?』

「   」

(……いざとなれば恥も外聞もかなぐり捨てて逃げた方がいいですかねぇ)

 

 

 ……なんて会話がほぼ全て聞かれてた、って事実が押し寄せて来たんですけどどうすればいいですか?

 諦めろ?私に死ねと!?

 

 

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