「……ええと、とりあえず最終的に向こうの俺はMODさんとよりを戻し、向こうの小国の王になるのがトゥルールートってことでオーケー?」
「その認識で間違いないかと。……本来そこに至るにはあれこれと解決すべきフラグがあるのですが、それをこちらで代替することでスキップするつもりらしいですわね。あれです、プレイ途中に他のソフトを指したあとリセットを駆使してバグを仕込む、みたいな話というか」
「なんでもありRTAルートじゃねぇか!?」
ってか、余所の世界を別のソフト扱いしてんじゃねぇよ!?
思わずそんなツッコミが口を付いて出てきたわけだが……うん、さっきよりは理解できたとはいえやっぱり意味不明だぞこの話?
「というかあれだよね?フられて傷心気味の相手にさらに追い討ち掛ける予定ってのが既に狂ってるよね?」
「大丈夫。今の向こうのお兄さんはドン底、ゆえにそこからさらに落とすとアンダーフローして最高の状態になる」
「なんにも大丈夫じゃねぇ!?」
最悪も最悪だよ!
なんならその最悪を更新した別世界の自分を目の前で見なきゃいけない私の気分も最悪だよ!
いやまぁやらなきゃやらないで妹が壊れた()ままらしいからやらなきゃいけないんだけども!!
「あ、流石にあれはデフォじゃないんですね」
「それはそう。誇張されてはいるからまったくないってわけじゃないみたいだけど」
「全部嘘であって欲しかったなぁ」
まぁ、人間色んな思いを糾えて生きるのがデフォなので、ちょっとばかり変な思考が混ざっていてもそれを咎める意味はないしする必要もないわけだが。
……とはいえそれで暴走していたことをいつまでも覚えていられるとそれはそれで悲しいことになるだろうから、この話が終わったら見なかったことにしようと決心する私である。
ともあれ、こうなっては仕方ない。
そのうちやってくるだろうもう一人の俺に即刻お断りの三文字を叩き付け、さっさとこのハチャメチャなトラブルを解決するより他あるまい。
「ってわけで、向こうの俺が襲来するタイミングを聞いておきたいんだけど。どうせ単にお断りするだけじゃ話は終わらないんだろうし、だったら精々劇的に拒否の文面を叩き付けてやるぞいっていうか」
「お姉さんも大概ノリがいい。一応言っておくけど今から一時間後」
「そっか一時間後か。……一時間後かー……」
……いや、思ったより早いな?
まぁこっちができることなんて精々心構えをしておくことくらいのものだが、それにしたってもうちょっと余裕を持たせて欲しいものというか……。
いや、この話を長々続けてもあれなので、さっさと終わってくれる分には早い方がいいんだけどさ?
……ってなわけで、どういう感じでお断りするのか脳内シミュレートする私。
こっぴどくフられた
「……冷静に考えると、やっぱりこれ私に対しての反射ダメージも大きくない?下手するとこっちも血反吐吐かないこれ???」
「大丈夫、お姉さんの方がメンタル面では耐性が高い」
「暗にデスマッチみたいなことになるって言ってやがる……」
反動ダメージで倒れる前に相手を倒せ、みたいなこと言ってやがる……。
なんで自分同士で血で血を洗う()ような争いをせねばならぬのか。
そんな疑問を抱きつつ、どういう言葉を使えばもう一人の自分に最大のダメージを与えられるのか、脳内で案を出し続ける私なのでありました。
……なお一時間後、再び対峙した私達は半ば痛み分けみたいな形で終わったことをここに記しておきます()
「その節は世話になったね」
「あ、はい。こちらこそどうも……」
そんなことがあった後日。
ふらり、と寮の前に現れた人物を応接室まで招き入れた俺は、その人物──女王になったMODさんが頭を下げる姿に、どう反応していいやら困惑していたのであった。
べこべこにメンタルを折られた彼は、どうやらTASさん達の想定通りにそこから立ち直り、見事MODさんの説得を成功させたらしい。
結果、彼は現在向こうの小国で忙しく走り回っているとかなんとか……。
並行世界とはいえ、自分と同じ人間が王様をやっているという事実になんとも微妙な気分になってくるが……あの分だとTASさん達も付いていっているのだろう、なら上手くやるはず……多分。
「そうだね、私達はきっとあの国を再興できるはずさ。……こっちはそのつもりはないみたいだけど」
「まぁ、前周のことを思うとそっちの方がいいかなーとは」
なお、こっちの世界では起こらないルートであることもあってか、こっちのTASさんは興味深げに向こうのTASさんからの報告書?を読み漁っていたり。
……目の前の彼女が向こうに戻ったら、ダミ子さんにきのこを注入()して異世界との境界の強化に当たるとかなんとか言っていたため、少なくとも今周においては余所の世界と関わることがなくなるはずだからこそのはしゃぎよう、とでもいうか。
まぁ、相手がサンタさん辺りだとその辺無視されかねないのが懸念と言えば懸念だが……。
「その時はその時でなんとかするよ、っていうか?」
「はは、豪気というかなんというか。……そういうところは彼にも見習って欲しいモノだねぇ」
「まぁ、大丈夫だと思いますよ?その辺思いっきりぶっ叩いたので」
「そっか、それはありがたい」
そんな感じで取りとめのない話を交わしたあと、向こうのTASさんに連れられて戻っていくMODさんを見送ったのち。
久方ぶりに男性の姿に戻った俺は、その自由を有り難がるように大きく背伸びをしたのであった──。